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第六章
負傷者
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「ユーリ、こっちは準備できたよ」
「はーい、ちょっと待ってて」
私がリビングからユーリに声をかけると、彼女の部屋から元気な声が返ってきた。
この様子なら大丈夫そうだ。
ユーリも我が家にだいぶ慣れてきたのだと思う。
ユーリとオリヴィアが来てから、私が相談員として相談所に出勤するときのルールにも多少変更が加わった。
「ユーリが昼番で『ケルークス』に出勤する日は私も一緒に出勤する。それ以外の日は私は任意で出勤」というのが新しいルールだ。
今日は昼番でユーリが出勤するため、それに合わせて私も相談所に行くというワケ。
ちなみに「ケルークス」の従業員のシフトは次のような三交代制になっている。
昼番は午前八時から午後六時
夜番は午後四時から深夜二時
深夜番は深夜一時から翌朝午前十一時
最近の「ケルークス」は午後二時から午後八時くらいが最も客の多い時間帯で、あとはあまり客の入りに差がないそうなのだ。
深夜にも客が途切れないのは、夜行性の精霊が来店するというのが理由らしい。
「アーベル、行きましょ」
ユーリが部屋から出てきてリビングへ入ってきた。
私の左手を取ってユーリがリビングを出ようとする。
すると近くを通ったメラニーが意味ありげな視線を向けてきた。私は右手を軽く挙げて大丈夫と答えた。
「日本と違ってパートナー同士が同じ職場にいられるっていいよね」
相談所へ向かう途中、不意にユーリがそう口にした。
「そうだね。考えてみればうちはその組み合わせ多いよな」
当初、私はパートナー同士が同じ職場にいるのはどうかと思ったのだ。悪い意味で人間時代の慣習に毒されていたのだ。
ところが、うちには前例があった。
「ケルークス」の従業員同士だとピアとシンさんが該当する。
またユーリと私のような「ケルークス」の従業員と相談員、という組み合わせはブリスとエリシアがそうだ。
少し前に「ケルークス」の店内で「ユーリと一緒に職場にいるのは問題あるかな?」とつぶやいたら、エリシアが思いっきり変な顔をしていた。
それだけではなく、
「何で? 一緒じゃない方が不自然だと思うけどな、オイラは」
と言われてしまった。
そのときは彼女が昔の人間だから、だと思ったのだけど、変なのは私の方だった。
エリシアは人間としては一九世紀生まれだから、どうしても「かなり昔の人」だと思ってしまうのだ。イカンイカン。
「あと、アーベルと契約して初めて気づいたのだけど、カーリンたちとアーベルのココがいいとか、アーベルとこうしたいとか話すのがすっごく楽しい!」
「そ、そういうものなのか?」
お世辞のような気がしないでもない。
まあ、ユーリがストレートに好意を表明してくれたのはありがたいのだが、ちょっと気になる点があった。
「そうだけど、どうかした?」
ユーリが不思議そうな顔をして聞き返してきた。
「あ、ユーリ含めて六人もパートナーと契約している私がいうのも変だが、私はパートナーの誰も他の男の魂霊と共有したいとは思えないのだが……ユーリも魂霊だから私と同じような感覚なのかと思った」
私は独占欲が強いし、器も大きくないので私がユーリや他のパートナーの立場に立つのはイヤだなぁというのが本音だ。
「えへへへ……アーベルは私や皆を独占していいんだよ。というか独占して! それに、それとこれとは話が別!」
ユーリがピシャリと言い放って私に詰め寄ってきた。
そのあと「えへへへ」とニヤニヤ笑いながら悶えだしたので、正直対応に困ったのだが。
「えへへへへ……アーベルに独り占めされたい……あ、着くね。アーベル、なんか変じゃない?」
ちょっと不安になりながら相談所の方に向けて歩いていったが、建物が見えたところで不意にユーリが冷静さを取り戻した。
「……確かに。何か騒がしいような気がする。ユーリ、行こうか」
「うんっ!」
私とユーリは顔を見合わせてから、相談所の建物へと走った。
「お疲れ様です!」
「何かあったの?」
私とユーリが「ケルークス」の店内に駆け込むと、奥の方に十体ほどからなる人だかりならぬ精霊だかりができていた。
「アーベルとユーリか! ロウが怪我をしたんだ! 今はもう大丈夫だが」
私とユーリに気付いたフランシスが精霊だかりをかき分けてこちらにやってきた。
ロウがアイリスの前の椅子に座ってアイリスからチェックを受けているようだ。
「ああ、問題ないだろう。それにしても直接危害を加えられるとはな……」
精霊だかりから厨房担当のブリスが進み出てきた。
「ブリス! 必要なものがあるなら準備するわよ」
「いや、大丈夫だ。精霊に戻ってしまえば怪我など消えてしまうからな。通常営業に戻すぞい」
ブリスが厨房へと引き上げていった。ユーリもその後をパタパタとついて行った。
ロウというのは存在界に出張している精霊の一体で、種族としてはゴブリンになる。
ゴブリンといっても、存在界に行くときは人間の男性とほとんど変わらない姿だから、その姿を見た人間が化物だと判断して襲いかかった可能性はほぼ皆無だと思われる。
「アーベル、来たわね。お客さんを待たせているから私は上に行くわ。アーベルとフランシスはいつでも上に行けるよう準備しておいて」
アイリスはそう言い残して上の応接室へと向かっていった。
「そうか……ロウはお客さんをここへ案内している途中に襲われたのか」
「俺がここへ来たちょっと後にお客さんが大騒ぎして入ってきたから何事かと思った」
私とフランシスはロウから負傷したときの話を聞いていた。
「そうなんだ。ハイキング道から脇に逸れようとしたときに、後ろから何か硬い物で頭を殴られたんだ。クラクラしたけど、お客さんに引っ張ってもらって何とかここにはたどり着けたのさ。お客さんには悪いことしちゃったな」
ロウが申し訳なさそうな顔をしながら後頭部をさすっている。痛みはないはずだが、気になるのだろうか。
今のロウは精霊界に適応した姿、すなわち精霊形態をとっている。といっても存在界に適応した妖精形態でも外見にはあまり差がない。
顔に火傷のような傷跡があることを除けば、小柄で均整の取れた人間の男性だ。
もちろん、存在界で知られているように緑色の肌の小鬼の姿にもなれるのだが、今はこの姿になることは滅多にない。
「お客さんが無事だったのは不幸中の幸いだったな。襲われたのはどこだ?」
フランシスがノートパソコンを持ち出して、画面に相談所周辺の地図を表示させた。
被害が出た以上、対策が必要になる。その対策は相談所で取るべきだ。
「ああ、ここだ。今日のお客さんは午後から仕事に行くという女の人だったからね。歩きやすいルートにしたんだ。悪いことしちゃったな」
ロウが指差したのは、相談所から比較的近いハイキング道だった。
相談所のメンバーが相談客を案内する場合、最近は相談所のかなり手前でハイキング道から逸れることが多い。
だが、今回は相談客の状況を考えて相談所の近くまでハイキング道を通ったのだろう。それが裏目に出たようだ。
「今までだとこの時間にハイキング道に相談の邪魔をする連中が姿を見せたことはなかったはずだが……見張りの時間を広げる必要があるか?」
フランシスが難しい顔をしながらノートパソコンを操作している。
何年か前から相談を妨害しようとする人間たちが、周囲のハイキング道を管理するようになった。
二四時間三六五日ずっとという訳ではないが、休みの日の明るい時間や平日の夕方などには何人かで周囲を見張っているのが確認できる。
アイリスをはじめとした相談所の方も無策ではなく、精霊たちに相談所の周囲を見張らせて、相談客が安全に相談所にたどり着けるよう配慮しているのだが……
「平日の朝早くということで油断したと言われても仕方ない。せめて帰りは無事に送り届けないとね」
ロウは生真面目な性質で、周囲の見張りを開始した精霊たちと念話で連絡を取りだした。
それにしても穏やかな話ではない。
精霊界に戻ってしまえば負傷すら完治する精霊が相手とはいえ、直接危害を加えられたのだ。
「アーベル、フランシス。上に来て」
不意に私とフランシスを呼ぶアイリスの声が聞こえてきた。
二人同時、というのは珍しいが何か意図があるのかもしれない。
応接室にはアイリスと三〇代後半か四〇代くらいの小柄な女性の姿があった。
相談の後に仕事に向かうのだろうか? グレーのパンツスーツ姿だ。確かにこの格好だと歩きにくい茂みの中などを案内したくはない。
「相談員のフランシスとアーベルよ。二人とも存在界からこちらに移住してきた人間だわ。今後の相談に来る方の安全確保のためお話を聞かせて欲しいの」
アイリスが相談客にフランシスと私を紹介した。
本来なら移住のための相談をする場であるが、相談客の安全確保の話をするようだ。それならば、存在界の感覚を知っている私とフランシスが同時に呼ばれたのも理解できる。
「はい。私は移住を決めましたし、後は時期の問題だけなのでそれでいいです」
相談客は既に移住の意思を固めているようであった。
「ありがとう。悪いけど二人に襲われたときの状況を話してくれる?」
「はい。私はロウさんと朝の六時半に駅で待ち合わせて……」
今の季節なら六時半でも外は明るい。ハイキング道を歩いて迷うことはまずないだろう。
駅からハイキング道に入ってしばらくは特に変わったこともなかったそうだ。
異変を先に感じとったのはロウだったらしい。
「……ロウさんが仰るには、雨でも振っていない限り、今の季節ならこの時間帯でも少しは人通りがあるそうです。ですが、今日に限って誰とも会わないと不思議そうな顔をされていました」
後でロウから話を聞く必要がありそうだが、これは重大な情報ではないかと私は思った。
フランシスもそう思ったようで、持ってきたノートパソコンでメモを取っている。
「……しばらく歩いて、ようやく四人組の年配の方たちとすれ違って挨拶しました。私たちが襲われるまでに会ったのはこの四人だけです」
「襲われたのは四人組と会ってからどのくらい後だった?」
アイリスが尋ねた。私とフランシスはまだ発言を許されていないのだ。
「そうですね……五分くらい後でしょうか。少し歩いてロウさんが周囲に誰もいないのを確認した後、ハイキング道を逸れたんです。森の中に入ってハイキング道が見えなくなったあたりで後ろから三人組が走ってきました、この三人組にロウさんが木の棒で殴られて……」
そう言った直後、相談客の顔が青ざめた。
「はーい、ちょっと待ってて」
私がリビングからユーリに声をかけると、彼女の部屋から元気な声が返ってきた。
この様子なら大丈夫そうだ。
ユーリも我が家にだいぶ慣れてきたのだと思う。
ユーリとオリヴィアが来てから、私が相談員として相談所に出勤するときのルールにも多少変更が加わった。
「ユーリが昼番で『ケルークス』に出勤する日は私も一緒に出勤する。それ以外の日は私は任意で出勤」というのが新しいルールだ。
今日は昼番でユーリが出勤するため、それに合わせて私も相談所に行くというワケ。
ちなみに「ケルークス」の従業員のシフトは次のような三交代制になっている。
昼番は午前八時から午後六時
夜番は午後四時から深夜二時
深夜番は深夜一時から翌朝午前十一時
最近の「ケルークス」は午後二時から午後八時くらいが最も客の多い時間帯で、あとはあまり客の入りに差がないそうなのだ。
深夜にも客が途切れないのは、夜行性の精霊が来店するというのが理由らしい。
「アーベル、行きましょ」
ユーリが部屋から出てきてリビングへ入ってきた。
私の左手を取ってユーリがリビングを出ようとする。
すると近くを通ったメラニーが意味ありげな視線を向けてきた。私は右手を軽く挙げて大丈夫と答えた。
「日本と違ってパートナー同士が同じ職場にいられるっていいよね」
相談所へ向かう途中、不意にユーリがそう口にした。
「そうだね。考えてみればうちはその組み合わせ多いよな」
当初、私はパートナー同士が同じ職場にいるのはどうかと思ったのだ。悪い意味で人間時代の慣習に毒されていたのだ。
ところが、うちには前例があった。
「ケルークス」の従業員同士だとピアとシンさんが該当する。
またユーリと私のような「ケルークス」の従業員と相談員、という組み合わせはブリスとエリシアがそうだ。
少し前に「ケルークス」の店内で「ユーリと一緒に職場にいるのは問題あるかな?」とつぶやいたら、エリシアが思いっきり変な顔をしていた。
それだけではなく、
「何で? 一緒じゃない方が不自然だと思うけどな、オイラは」
と言われてしまった。
そのときは彼女が昔の人間だから、だと思ったのだけど、変なのは私の方だった。
エリシアは人間としては一九世紀生まれだから、どうしても「かなり昔の人」だと思ってしまうのだ。イカンイカン。
「あと、アーベルと契約して初めて気づいたのだけど、カーリンたちとアーベルのココがいいとか、アーベルとこうしたいとか話すのがすっごく楽しい!」
「そ、そういうものなのか?」
お世辞のような気がしないでもない。
まあ、ユーリがストレートに好意を表明してくれたのはありがたいのだが、ちょっと気になる点があった。
「そうだけど、どうかした?」
ユーリが不思議そうな顔をして聞き返してきた。
「あ、ユーリ含めて六人もパートナーと契約している私がいうのも変だが、私はパートナーの誰も他の男の魂霊と共有したいとは思えないのだが……ユーリも魂霊だから私と同じような感覚なのかと思った」
私は独占欲が強いし、器も大きくないので私がユーリや他のパートナーの立場に立つのはイヤだなぁというのが本音だ。
「えへへへ……アーベルは私や皆を独占していいんだよ。というか独占して! それに、それとこれとは話が別!」
ユーリがピシャリと言い放って私に詰め寄ってきた。
そのあと「えへへへ」とニヤニヤ笑いながら悶えだしたので、正直対応に困ったのだが。
「えへへへへ……アーベルに独り占めされたい……あ、着くね。アーベル、なんか変じゃない?」
ちょっと不安になりながら相談所の方に向けて歩いていったが、建物が見えたところで不意にユーリが冷静さを取り戻した。
「……確かに。何か騒がしいような気がする。ユーリ、行こうか」
「うんっ!」
私とユーリは顔を見合わせてから、相談所の建物へと走った。
「お疲れ様です!」
「何かあったの?」
私とユーリが「ケルークス」の店内に駆け込むと、奥の方に十体ほどからなる人だかりならぬ精霊だかりができていた。
「アーベルとユーリか! ロウが怪我をしたんだ! 今はもう大丈夫だが」
私とユーリに気付いたフランシスが精霊だかりをかき分けてこちらにやってきた。
ロウがアイリスの前の椅子に座ってアイリスからチェックを受けているようだ。
「ああ、問題ないだろう。それにしても直接危害を加えられるとはな……」
精霊だかりから厨房担当のブリスが進み出てきた。
「ブリス! 必要なものがあるなら準備するわよ」
「いや、大丈夫だ。精霊に戻ってしまえば怪我など消えてしまうからな。通常営業に戻すぞい」
ブリスが厨房へと引き上げていった。ユーリもその後をパタパタとついて行った。
ロウというのは存在界に出張している精霊の一体で、種族としてはゴブリンになる。
ゴブリンといっても、存在界に行くときは人間の男性とほとんど変わらない姿だから、その姿を見た人間が化物だと判断して襲いかかった可能性はほぼ皆無だと思われる。
「アーベル、来たわね。お客さんを待たせているから私は上に行くわ。アーベルとフランシスはいつでも上に行けるよう準備しておいて」
アイリスはそう言い残して上の応接室へと向かっていった。
「そうか……ロウはお客さんをここへ案内している途中に襲われたのか」
「俺がここへ来たちょっと後にお客さんが大騒ぎして入ってきたから何事かと思った」
私とフランシスはロウから負傷したときの話を聞いていた。
「そうなんだ。ハイキング道から脇に逸れようとしたときに、後ろから何か硬い物で頭を殴られたんだ。クラクラしたけど、お客さんに引っ張ってもらって何とかここにはたどり着けたのさ。お客さんには悪いことしちゃったな」
ロウが申し訳なさそうな顔をしながら後頭部をさすっている。痛みはないはずだが、気になるのだろうか。
今のロウは精霊界に適応した姿、すなわち精霊形態をとっている。といっても存在界に適応した妖精形態でも外見にはあまり差がない。
顔に火傷のような傷跡があることを除けば、小柄で均整の取れた人間の男性だ。
もちろん、存在界で知られているように緑色の肌の小鬼の姿にもなれるのだが、今はこの姿になることは滅多にない。
「お客さんが無事だったのは不幸中の幸いだったな。襲われたのはどこだ?」
フランシスがノートパソコンを持ち出して、画面に相談所周辺の地図を表示させた。
被害が出た以上、対策が必要になる。その対策は相談所で取るべきだ。
「ああ、ここだ。今日のお客さんは午後から仕事に行くという女の人だったからね。歩きやすいルートにしたんだ。悪いことしちゃったな」
ロウが指差したのは、相談所から比較的近いハイキング道だった。
相談所のメンバーが相談客を案内する場合、最近は相談所のかなり手前でハイキング道から逸れることが多い。
だが、今回は相談客の状況を考えて相談所の近くまでハイキング道を通ったのだろう。それが裏目に出たようだ。
「今までだとこの時間にハイキング道に相談の邪魔をする連中が姿を見せたことはなかったはずだが……見張りの時間を広げる必要があるか?」
フランシスが難しい顔をしながらノートパソコンを操作している。
何年か前から相談を妨害しようとする人間たちが、周囲のハイキング道を管理するようになった。
二四時間三六五日ずっとという訳ではないが、休みの日の明るい時間や平日の夕方などには何人かで周囲を見張っているのが確認できる。
アイリスをはじめとした相談所の方も無策ではなく、精霊たちに相談所の周囲を見張らせて、相談客が安全に相談所にたどり着けるよう配慮しているのだが……
「平日の朝早くということで油断したと言われても仕方ない。せめて帰りは無事に送り届けないとね」
ロウは生真面目な性質で、周囲の見張りを開始した精霊たちと念話で連絡を取りだした。
それにしても穏やかな話ではない。
精霊界に戻ってしまえば負傷すら完治する精霊が相手とはいえ、直接危害を加えられたのだ。
「アーベル、フランシス。上に来て」
不意に私とフランシスを呼ぶアイリスの声が聞こえてきた。
二人同時、というのは珍しいが何か意図があるのかもしれない。
応接室にはアイリスと三〇代後半か四〇代くらいの小柄な女性の姿があった。
相談の後に仕事に向かうのだろうか? グレーのパンツスーツ姿だ。確かにこの格好だと歩きにくい茂みの中などを案内したくはない。
「相談員のフランシスとアーベルよ。二人とも存在界からこちらに移住してきた人間だわ。今後の相談に来る方の安全確保のためお話を聞かせて欲しいの」
アイリスが相談客にフランシスと私を紹介した。
本来なら移住のための相談をする場であるが、相談客の安全確保の話をするようだ。それならば、存在界の感覚を知っている私とフランシスが同時に呼ばれたのも理解できる。
「はい。私は移住を決めましたし、後は時期の問題だけなのでそれでいいです」
相談客は既に移住の意思を固めているようであった。
「ありがとう。悪いけど二人に襲われたときの状況を話してくれる?」
「はい。私はロウさんと朝の六時半に駅で待ち合わせて……」
今の季節なら六時半でも外は明るい。ハイキング道を歩いて迷うことはまずないだろう。
駅からハイキング道に入ってしばらくは特に変わったこともなかったそうだ。
異変を先に感じとったのはロウだったらしい。
「……ロウさんが仰るには、雨でも振っていない限り、今の季節ならこの時間帯でも少しは人通りがあるそうです。ですが、今日に限って誰とも会わないと不思議そうな顔をされていました」
後でロウから話を聞く必要がありそうだが、これは重大な情報ではないかと私は思った。
フランシスもそう思ったようで、持ってきたノートパソコンでメモを取っている。
「……しばらく歩いて、ようやく四人組の年配の方たちとすれ違って挨拶しました。私たちが襲われるまでに会ったのはこの四人だけです」
「襲われたのは四人組と会ってからどのくらい後だった?」
アイリスが尋ねた。私とフランシスはまだ発言を許されていないのだ。
「そうですね……五分くらい後でしょうか。少し歩いてロウさんが周囲に誰もいないのを確認した後、ハイキング道を逸れたんです。森の中に入ってハイキング道が見えなくなったあたりで後ろから三人組が走ってきました、この三人組にロウさんが木の棒で殴られて……」
そう言った直後、相談客の顔が青ざめた。
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