27 / 240
第十六章
747:幽霊騒ぎ その1
しおりを挟む
インデストでの暴動の翌日の七月二八日、今度は郊外の「オーシャンリゾート」で動きがあった。OP社社長ノブヤ・ヤマガタの訃報が発せられた少し後のことである。
市街の暴動が沈静化したことから、余裕がある今のうちに近所の問題を片付けようとロビーが提案した。
その結果、この日は「オーシャンリゾート」に詰めているメンバーのうち、十数名がある捜索活動を行うこととなった。
ここ数ヶ月、「オーシャンリゾート」周辺では、しばしば痩せた幽霊らしきものの目撃情報が相次いでいた。
実害がないことと電力不足問題等、他の問題への対応が優先されていたことから、こちらの問題については特段の対策が講じられることはなかった。
しかし、現在ECN社の関係者が「オーシャンリゾート」を拠点としていることで、「オーシャンリゾート」側が、ある懸念を明らかにした。
昨年五月に発生した爆破事件のように、要人を目標とした事件が再度発生するのではないか、と。
表向き現在滞在しているECN社の最上位者はロビー・タカミであり、昨年の事件に巻き込まれたハドリやオイゲンと比較すればその地位は著しく低い。
それでも現在のECN社の活動が活動であるだけに、必ずしもインデストの住人から快く思われていない可能性がある、と遠回しに「オーシャンリゾート」の関係者がロビーに伝えてきたのである。
「オーシャンリゾート」側は幽霊とされているものについて、何らかの事件を起こすために活動しているのではないか、と暗に指摘している。
前回の事件では当時のECN社の社長であるオイゲンが行方不明になっているから、「オーシャンリゾート」側が警戒するのも無理はない。
「オーシャンリゾート」側が知る由もなかったが、現在宿泊しているECN社の関係者には現社長と行方不明になったはずの前社長が含まれている。この事実を知ったなら、「オーシャンリゾート」の関係者は腰を抜かさんばかりに驚いたであろう。
現在の「オーシャンリゾート」には昨年五月の時点のように爆発物などは保管されていない。
だが施設内に危険物がないからといって、「オーシャンリゾート」が安全であるとは言い切れない。外から危険物を持ち込むこともできるし、要人を害するのであればナイフ一本でことが足りるかもしれないからだ。
「オーシャンリゾート」の関係者の調査によれば、幽霊については次のような情報が得られていた。
常に見かけられるのは一体で、すべて同じ個体であると推測されること。
小柄であり、子供か十代の者と推測されること。
主に夜半に姿を見せるが、昼間にも目撃例があること。
現れる場所は昨年の爆破事件が発生した場所とその周辺であること、及び「オーシャンリゾート」の建物内に侵入しないこと。
姿を現しても、すぐにいずこかへと姿を消してしまうこと。
ここ一週間ほどは目撃されたという情報がないこと。
調査を行った「オーシャンリゾート」の関係者は、「昨年爆破事件を起こした者かその関係者ではないか?」という疑いを持っていたようであった。
この話を聞いたロビーやミヤハラは、これ幸いと「オーシャンリゾート」の要望に乗ったのであった。
ロビーやミヤハラは幽霊について、ECN社の関係者に危害を加える可能性は低いだろうと考えていた。
理由はいくつかあるが、彼らは幽霊らしきものが子供と推測されるほど小柄という点に着目していた。
「オーシャンリゾート」の場所と夜間の目撃例が多いことから、存命中の人物であるならば子供である可能性は低い。
子供なら夜中に出歩いていれば親が捜索をどこかに依頼している可能性が高いからだ。だが、そのような捜索依頼があったという情報はない。
もし、正体が「爆破事件の関係者」ならば何の目的でこの場所に来ているのか?
情報からは何かを探しているか、調べているかのいずれかのように思われた。
探すのであれば、今までに何度も機会があったはずだった。
既に事件からは一年以上経過しており、何かを捜索するにはあまりにも時期が遅すぎた。
調査、ということであれば、その目的は何か?
夜間に隠れて行うのであれば、表沙汰にはしたくない性質のものである可能性が考えられた。
昨年の爆破事件と同様の事件を起こす可能性も考えられたが、昨年に比べると状況が悪すぎた。
昨年同様の事件が目的であれば、その対象はECN社の関係者である可能性が高い。
しかし、公式には「オーシャンリゾート」に滞在するECN社の関係者のトップはロビーであり、ターゲットとしてはやや地位が低い。それだけではなく、市街にははるかに影響力の大きいレイカ・メルツが滞在している。
狙うのであれば、レイカのほうが好都合のはずであった。
こうした推測から、「爆破事件の関係者」の可能性は捨てないものの、他の可能性を中心にロビーたちは幽霊らしきものの捜索に当たったのであった。
ミヤハラは捜索に参加しなかったが、ロビーの強い要望により、オイゲンは捜索に加わった。
オイゲンは、ロビーが指揮する少人数のチームに入った。
このチームのメンバーに対して、オイゲンは偽名の「ジンダイ」として紹介された。
そして、彼の参加は本社のトップシークレットとして他言無用とロビーの口からメンバーに伝えられたのであった。
市街の暴動が沈静化したことから、余裕がある今のうちに近所の問題を片付けようとロビーが提案した。
その結果、この日は「オーシャンリゾート」に詰めているメンバーのうち、十数名がある捜索活動を行うこととなった。
ここ数ヶ月、「オーシャンリゾート」周辺では、しばしば痩せた幽霊らしきものの目撃情報が相次いでいた。
実害がないことと電力不足問題等、他の問題への対応が優先されていたことから、こちらの問題については特段の対策が講じられることはなかった。
しかし、現在ECN社の関係者が「オーシャンリゾート」を拠点としていることで、「オーシャンリゾート」側が、ある懸念を明らかにした。
昨年五月に発生した爆破事件のように、要人を目標とした事件が再度発生するのではないか、と。
表向き現在滞在しているECN社の最上位者はロビー・タカミであり、昨年の事件に巻き込まれたハドリやオイゲンと比較すればその地位は著しく低い。
それでも現在のECN社の活動が活動であるだけに、必ずしもインデストの住人から快く思われていない可能性がある、と遠回しに「オーシャンリゾート」の関係者がロビーに伝えてきたのである。
「オーシャンリゾート」側は幽霊とされているものについて、何らかの事件を起こすために活動しているのではないか、と暗に指摘している。
前回の事件では当時のECN社の社長であるオイゲンが行方不明になっているから、「オーシャンリゾート」側が警戒するのも無理はない。
「オーシャンリゾート」側が知る由もなかったが、現在宿泊しているECN社の関係者には現社長と行方不明になったはずの前社長が含まれている。この事実を知ったなら、「オーシャンリゾート」の関係者は腰を抜かさんばかりに驚いたであろう。
現在の「オーシャンリゾート」には昨年五月の時点のように爆発物などは保管されていない。
だが施設内に危険物がないからといって、「オーシャンリゾート」が安全であるとは言い切れない。外から危険物を持ち込むこともできるし、要人を害するのであればナイフ一本でことが足りるかもしれないからだ。
「オーシャンリゾート」の関係者の調査によれば、幽霊については次のような情報が得られていた。
常に見かけられるのは一体で、すべて同じ個体であると推測されること。
小柄であり、子供か十代の者と推測されること。
主に夜半に姿を見せるが、昼間にも目撃例があること。
現れる場所は昨年の爆破事件が発生した場所とその周辺であること、及び「オーシャンリゾート」の建物内に侵入しないこと。
姿を現しても、すぐにいずこかへと姿を消してしまうこと。
ここ一週間ほどは目撃されたという情報がないこと。
調査を行った「オーシャンリゾート」の関係者は、「昨年爆破事件を起こした者かその関係者ではないか?」という疑いを持っていたようであった。
この話を聞いたロビーやミヤハラは、これ幸いと「オーシャンリゾート」の要望に乗ったのであった。
ロビーやミヤハラは幽霊について、ECN社の関係者に危害を加える可能性は低いだろうと考えていた。
理由はいくつかあるが、彼らは幽霊らしきものが子供と推測されるほど小柄という点に着目していた。
「オーシャンリゾート」の場所と夜間の目撃例が多いことから、存命中の人物であるならば子供である可能性は低い。
子供なら夜中に出歩いていれば親が捜索をどこかに依頼している可能性が高いからだ。だが、そのような捜索依頼があったという情報はない。
もし、正体が「爆破事件の関係者」ならば何の目的でこの場所に来ているのか?
情報からは何かを探しているか、調べているかのいずれかのように思われた。
探すのであれば、今までに何度も機会があったはずだった。
既に事件からは一年以上経過しており、何かを捜索するにはあまりにも時期が遅すぎた。
調査、ということであれば、その目的は何か?
夜間に隠れて行うのであれば、表沙汰にはしたくない性質のものである可能性が考えられた。
昨年の爆破事件と同様の事件を起こす可能性も考えられたが、昨年に比べると状況が悪すぎた。
昨年同様の事件が目的であれば、その対象はECN社の関係者である可能性が高い。
しかし、公式には「オーシャンリゾート」に滞在するECN社の関係者のトップはロビーであり、ターゲットとしてはやや地位が低い。それだけではなく、市街にははるかに影響力の大きいレイカ・メルツが滞在している。
狙うのであれば、レイカのほうが好都合のはずであった。
こうした推測から、「爆破事件の関係者」の可能性は捨てないものの、他の可能性を中心にロビーたちは幽霊らしきものの捜索に当たったのであった。
ミヤハラは捜索に参加しなかったが、ロビーの強い要望により、オイゲンは捜索に加わった。
オイゲンは、ロビーが指揮する少人数のチームに入った。
このチームのメンバーに対して、オイゲンは偽名の「ジンダイ」として紹介された。
そして、彼の参加は本社のトップシークレットとして他言無用とロビーの口からメンバーに伝えられたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる