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しおりを挟む「一緒に死のうと思うほど、この人が大事なんだろ?だったら生きて、守ってやれよ」
「……知ったふうな口を聞くな……そんなこと今までずっとやってきた……この家の呪いを知ってからずっと…………」
“守る”と簡単に口にした哲太に、杉本の奥歯が鈍い音を立てた。
この十数年の間、誰よりも一番近くで苦しみ続ける秀行を見てきた。守りたいと思いながら、壊れてく秀行を止めることさえままならなかった。
愛しい者の中に映ることも無く、もがき苦しむ姿を見てきた杉本もまた、あの日から苦しみ続けてきたのだ。
「……やってきた……?やってきた、けど出来なかっただろ?」
感情の見えない淡々とした言葉に、杉本の身体が凍りつく。
「オレは、あんた等が何をしてきたのかなんか知らねぇ。けど、死ぬくれぇの覚悟があるなら、生きて守り抜けよ。この人が道を踏み外してるなら、何をしてもやめさせりゃいい。疎まれようが、恨まれようが……守るって決めたんなら、途中で手を離すようなマネしてんじゃねぇよ」
微塵の躊躇いもなく吐かれた言葉に、杉本の喉の奥が僅かに震えた。
『お前に何がわかる』
『何も知らないクセに』
次々に溢れ出す思いが、しかし音にすらならずに喉を詰まらせる。
残ると言った和志を怒鳴りつけたこの少年のように、もし、自分が秀行に想いをぶつけていたら、今とは違った未来が存在したのではないか……。
そんな想いが杉本を揺さぶるのだ。
───もし…………この先だけでも……変えられるなら…………
「…………理解っているのか……?俺と秀行が生きるということは、和志がこの籠から逃げる機会を潰すことになるんだぞ」
───もう一度…………秀行の笑顔が見られるなら…………
言葉と共に僅かに向けられた杉本の視線に、和志の身体が強ばった。
例えこの邸が無くなったとしても、杉本の言う通り“和志の役割”が変わる訳ではない。恐らくすぐに新しい鳥籠は用意され、何事も無かったかのように、変わらない日々が始まるのだ。
「そんな訳あるかよ。あんた等が生きていようが、今後一切和志には指一本触れさせねぇ。何をしてでも俺が和志を守る」
然もないことのように言い切った哲太に言葉を飲み込むと、杉本は小さな溜息にも似た息を吐いた。
「その汚い手を離せ。──秀行は俺が運ぶ」
そう言い、正面から哲太を見つめた杉本の表情は微かに笑っているようにも見えた。
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