君の手の温もりが…

海花

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同じ悩み

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「――そう…なんだ…」
俊輔が沈黙に気付き口を開いた。
「笑っちゃうだろ?この歳になって人混みが怖いんだから…」
薫が自嘲気味に笑った。
「そんなことないよ。俺だって…」
俊輔が言葉を途中で切った。
薫が俊輔を見つめる。
俊輔は軽くため息をつくと
「――実は俺も…水が怖いんだ…」
コーヒーに視線を落として話し出した。「子供の頃…風呂で溺れてから…たくさんの水があるって思うだけで怖くなる…。発作も何度も起こしたことあるし、その度に死んじゃうんじゃないかって怖くなる…。そのくせ人に頼まれると断れなくて、本当はプールなんて行きたくないのに」
語尾がかすかに強くなる――。
俊輔が本音を吐いているのが分かり薫の口角が微かに上がった。
「そうなんだ…。成瀬は優しいからな」
薫が困ったような笑顔を俊輔に向けた。
「俺なら絶対断る。ってか、そもそも誘われないけど」
薫が冗談ぽく言って笑うと、俊輔もつられて笑った。
「俺もこんな話したの薫くんが初めてだよ。なんか…少し気が楽になったかも」
そう言ってコーヒーを飲んだ。
「言おうと思ってたんだけど、薫でいいよ。『くん』はいらない。『薫くん』なんて小学生みたいじゃん」
薫も笑ってコーヒーを飲み干した。
「言われてみればそうかも…じゃあ、俺も俊輔でいいよ」
俊輔は初めて自分と同じ悩みを持った人が目の前にいるというだけで安心した。
このことを自分から誰かに話したのも初めてだったが、本当に少し気が楽になった気がした。
しばらくたわいのない話をしていると、俊輔が欠伸をする。
頭がぼーっとして会話の返事が遅くなっていく。
「俊輔!…大丈夫か?」
薫の問いに
「ごめん…何だかすごい眠くなってきちゃって…」
そう言いながら目をこする。
「疲れてんだよ。今日もここに来る前バイトだったんだろ?」
「そう…」
俊輔の目が閉じては開き、またゆっくり閉じていく。
「……ごめん…マジで眠い…」
「少し寝れば?」
薫が立ち上がる。「俊輔、ベッドで少し寝な」
俊輔が厚みのあるラグに倒れそうになるのを薫が支える。
「ほらこっち」
「……うん…」
薫は俊輔をどうにか立たせてベッドへ寝かせた。
「おやすみ」
薫が微笑み俊輔に呟く。
「お…や……み…」
俊輔が言葉にならない返事をかえした。
薫が俊輔の髪を撫でると、安心したように寝息を立て始める。
しばらく寝顔を見つめていた薫が立ち上がり部屋を出た。
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