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赤い印
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「俊輔!俊輔!起きな」
名前を呼ばれて俊輔がうっすらと目を開ける。
「ほら!タクシー呼んだから」
目の前に心配そうに笑う薫が見える。
「ここ…」
俊輔が寝ぼけているのが分かり薫が起き上がるのを助ける。
「俺ん家!俊輔いきなり眠いって言い出して寝ちゃったんだろ?」
薫が呆れて笑う。
そうだ…。薫と話してたら急に眠くなってきて…、ベッドにどうやって寝たのかすら覚えてない。
時計を見ると7時を回っている。2時間近く眠っていたらしい。
「ごめん…」
そう言って目をこする。
まだ頭がぼーっとする。
「葵くん…だっけ?心配するから帰んなきゃだろ?電話めちゃくちゃ鳴ってたぞ」
笑いながらそう言った。
立ち上がろうとしてとして、よろけた俊輔を薫が支える。
「大丈夫かよ?」
「本当ごめん。こんな風になったことないんだけど…」
「気にするなよ。疲れてたんだろ」
薫が濃いめのコーヒーを入れておいてくれ、それを飲んでどうにか頭をすっきりさせる。
門の外には一台のタクシーが待っていた。
「え!?」と、驚く俊輔に
「よく使うタクシーだから気にするなよ」
そう言って無理矢理乗せる。
今日1日薫に迷惑掛けてばっかだな…。
俊輔がため息をつく。
車の揺れが心地よく、また眠気が襲ってくる。
「着きましたよ」
運転手に声をかけられてハッとする。
「すみません。いくらですか?」
慌てて財布を取り出すと
「もう頂いてますから」
と、運転手がにこやかに頭を下げた。
タクシーを降り、鍵を開け家に入る。
「次の時返さなきゃ…」
独り言を言いながらリビングへ向かうとカレーのいい匂いがしてくる。
「ただいま」
俊輔が入っていくと、Tシャツと短パン姿の葵がキッキンで料理をしている。
「バカ俊!お前電話くらい出ろよ!」
葵が顔を見るなり文句を言う。「じゃが芋買ってきてほしくて電話したのに出ないから、じゃが芋なしだからな!」
「葵がカレー作ったの!?」
俊輔が驚く。葵は掃除や洗濯は手伝ってくれても、まず料理はしない。
「お前…最近バイトと勉強で忙しそうだったから…」
葵が照れたのか、鍋に視線を移しボソッと言った。
「そっか。ありがとう」
俊輔が嬉しそうに微笑んだ。
「もう少しだからソファーで座ってろよ」
「そうする」
葵の気持ちに甘えてソファーに深く座りこむ。
バイト…少し減らしてもらおうかな…。
みんなに迷惑かけてんな…。
俊輔がソファーの背もたれに頭を預けると、再び睡魔が襲う。
少しだけ…眠ってもいいかな…。
そう思った時には眠りの淵に落ちていった。
葵は皿にご飯とカレーを盛り付け、サラダにドレッシングをかけた。
中々の出来栄えに満足しながら
「俊!メシ!」
ソファーに座る俊輔に葵が声を掛ける。
しかし返事も無ければ動く様子もない。
「俊!」
言いながら俊輔の前まで来ると寝息を立てて眠っている。
「…まったく…」
ため息をつくと、微妙な違和感に気付いた。
──妙に俊輔の胸元がはだけている。
いつもは外さないボタンまで外してあるのだ。
フと首元に目がいく── ┉
──首の付け根にハッキリと ─
赤いアザのようなものがあるのを見付けて葵の顔が赤くなった。
「──このバカ…」
『俊輔は自分のものだ』と主張する印を過去何度か見ている。
「俊!」
葵が俊輔の耳元で叫んだ。
俊輔はびっくりして飛び起きたはずみでソファーから落ちた。
「なんだよ!?」
「メシ!バカ俊!」
そう言ってとっととキッキンへ戻っていく。
テーブルにはカレーライスとサラダが並べられていた。
俊輔は席に着くと「いただきます」とカレーを食べ始める。
「美味い」
にこやかに言う俊輔を葵は黙って睨みつける。
「…何怒ってんだよ?」
俊輔が眉をひそめる。
葵は胸まで開いたシャツからちらちら見え隠れする『独占欲の証』に視線を移した。
特進コースの人が小学校の同級とかで毎日のように勉強をしに行ってると思ったら…。
葵は本気で腹が立ち
「お前さぁ!毎日何処で何やってんの!?」
声をあげた。
葵のいきなりの言葉に俊輔が目を丸くする。
葵には薫と勉強すると言ってあった筈だ。
「…何…いきなり……。だから…バイト先に小学校の時の同級生がいて…」
改めて説明しようとすると
「そんな嘘聞いてんじゃねぇよ!」
葵が声を荒らげた。「その同級生が女で、また誘われて、ふらふらやりに行ってんの!?」
「はぁ!?お前こそ何言ってんだよ…」
意味が分からないという風に俊輔が呆れる。
葵が立ち上がると鏡を持ってくる。
「首!見てみろよ」
葵の目が本気で怒っている。
俊輔はため息をついて鏡を受け取る。
何故こう、訳の分からないことで葵に怒られてばかりいるのか……。
俊輔が鏡を見ると首の付け根に赤いアザがあるのが見えた。
「なんだこれ…」
シャツの襟元を広げよく見る。「虫か何かに刺されたのかな…」
葵はその様子に拍子抜けした。
中学の頃、数回同じような跡をつけて帰ってきた時は、それをつっこむ度にしどろもどろになって顔を真っ赤にしていた。
俊輔の良い所でもあるが、嘘がとにかく下手だった。
「……本当に身に覚えないの?」
葵の声から怒りが消えている。
「ねーわ!だいたいその友達男だからな!」
俊輔は葵の怒りの元が勘違いだと分かって、ため息をつき少しホッとした。
改めて鏡を見る。
確かにキスマークにしか見えない。
ポリポリと掻いてみたが別に痛くも痒くもない。
どこかにぶつけた覚えもない。
俊輔は首を傾げて鏡を置いた。
身に覚えがないのだから考えたところで仕方がない……。
「ふぅーん……」
と、葵はまあ納得したように鼻を鳴らしてから「お前…明日どうすんの?プールなんだから、それ丸見えだぞ……?」
そう言って改めてカレーを食べ始める。
「どうすんの?って何が?」
俊輔の言葉に葵の手が止まる。
「何がって……、あいつらに勘違いされるぞ?」
「なんで?北村さんの目的はお前なんだから別に関係ないだろ」
そう言って俊輔は軽く笑った。
葵は初めて結衣に同情した。
こんな鈍感………中々いない……。
「ま、俺には関係ないからいいけど…」
そう言うと、何となく違和感の残る俊輔の首元に目をやりカレーを口へと運んだ。
名前を呼ばれて俊輔がうっすらと目を開ける。
「ほら!タクシー呼んだから」
目の前に心配そうに笑う薫が見える。
「ここ…」
俊輔が寝ぼけているのが分かり薫が起き上がるのを助ける。
「俺ん家!俊輔いきなり眠いって言い出して寝ちゃったんだろ?」
薫が呆れて笑う。
そうだ…。薫と話してたら急に眠くなってきて…、ベッドにどうやって寝たのかすら覚えてない。
時計を見ると7時を回っている。2時間近く眠っていたらしい。
「ごめん…」
そう言って目をこする。
まだ頭がぼーっとする。
「葵くん…だっけ?心配するから帰んなきゃだろ?電話めちゃくちゃ鳴ってたぞ」
笑いながらそう言った。
立ち上がろうとしてとして、よろけた俊輔を薫が支える。
「大丈夫かよ?」
「本当ごめん。こんな風になったことないんだけど…」
「気にするなよ。疲れてたんだろ」
薫が濃いめのコーヒーを入れておいてくれ、それを飲んでどうにか頭をすっきりさせる。
門の外には一台のタクシーが待っていた。
「え!?」と、驚く俊輔に
「よく使うタクシーだから気にするなよ」
そう言って無理矢理乗せる。
今日1日薫に迷惑掛けてばっかだな…。
俊輔がため息をつく。
車の揺れが心地よく、また眠気が襲ってくる。
「着きましたよ」
運転手に声をかけられてハッとする。
「すみません。いくらですか?」
慌てて財布を取り出すと
「もう頂いてますから」
と、運転手がにこやかに頭を下げた。
タクシーを降り、鍵を開け家に入る。
「次の時返さなきゃ…」
独り言を言いながらリビングへ向かうとカレーのいい匂いがしてくる。
「ただいま」
俊輔が入っていくと、Tシャツと短パン姿の葵がキッキンで料理をしている。
「バカ俊!お前電話くらい出ろよ!」
葵が顔を見るなり文句を言う。「じゃが芋買ってきてほしくて電話したのに出ないから、じゃが芋なしだからな!」
「葵がカレー作ったの!?」
俊輔が驚く。葵は掃除や洗濯は手伝ってくれても、まず料理はしない。
「お前…最近バイトと勉強で忙しそうだったから…」
葵が照れたのか、鍋に視線を移しボソッと言った。
「そっか。ありがとう」
俊輔が嬉しそうに微笑んだ。
「もう少しだからソファーで座ってろよ」
「そうする」
葵の気持ちに甘えてソファーに深く座りこむ。
バイト…少し減らしてもらおうかな…。
みんなに迷惑かけてんな…。
俊輔がソファーの背もたれに頭を預けると、再び睡魔が襲う。
少しだけ…眠ってもいいかな…。
そう思った時には眠りの淵に落ちていった。
葵は皿にご飯とカレーを盛り付け、サラダにドレッシングをかけた。
中々の出来栄えに満足しながら
「俊!メシ!」
ソファーに座る俊輔に葵が声を掛ける。
しかし返事も無ければ動く様子もない。
「俊!」
言いながら俊輔の前まで来ると寝息を立てて眠っている。
「…まったく…」
ため息をつくと、微妙な違和感に気付いた。
──妙に俊輔の胸元がはだけている。
いつもは外さないボタンまで外してあるのだ。
フと首元に目がいく── ┉
──首の付け根にハッキリと ─
赤いアザのようなものがあるのを見付けて葵の顔が赤くなった。
「──このバカ…」
『俊輔は自分のものだ』と主張する印を過去何度か見ている。
「俊!」
葵が俊輔の耳元で叫んだ。
俊輔はびっくりして飛び起きたはずみでソファーから落ちた。
「なんだよ!?」
「メシ!バカ俊!」
そう言ってとっととキッキンへ戻っていく。
テーブルにはカレーライスとサラダが並べられていた。
俊輔は席に着くと「いただきます」とカレーを食べ始める。
「美味い」
にこやかに言う俊輔を葵は黙って睨みつける。
「…何怒ってんだよ?」
俊輔が眉をひそめる。
葵は胸まで開いたシャツからちらちら見え隠れする『独占欲の証』に視線を移した。
特進コースの人が小学校の同級とかで毎日のように勉強をしに行ってると思ったら…。
葵は本気で腹が立ち
「お前さぁ!毎日何処で何やってんの!?」
声をあげた。
葵のいきなりの言葉に俊輔が目を丸くする。
葵には薫と勉強すると言ってあった筈だ。
「…何…いきなり……。だから…バイト先に小学校の時の同級生がいて…」
改めて説明しようとすると
「そんな嘘聞いてんじゃねぇよ!」
葵が声を荒らげた。「その同級生が女で、また誘われて、ふらふらやりに行ってんの!?」
「はぁ!?お前こそ何言ってんだよ…」
意味が分からないという風に俊輔が呆れる。
葵が立ち上がると鏡を持ってくる。
「首!見てみろよ」
葵の目が本気で怒っている。
俊輔はため息をついて鏡を受け取る。
何故こう、訳の分からないことで葵に怒られてばかりいるのか……。
俊輔が鏡を見ると首の付け根に赤いアザがあるのが見えた。
「なんだこれ…」
シャツの襟元を広げよく見る。「虫か何かに刺されたのかな…」
葵はその様子に拍子抜けした。
中学の頃、数回同じような跡をつけて帰ってきた時は、それをつっこむ度にしどろもどろになって顔を真っ赤にしていた。
俊輔の良い所でもあるが、嘘がとにかく下手だった。
「……本当に身に覚えないの?」
葵の声から怒りが消えている。
「ねーわ!だいたいその友達男だからな!」
俊輔は葵の怒りの元が勘違いだと分かって、ため息をつき少しホッとした。
改めて鏡を見る。
確かにキスマークにしか見えない。
ポリポリと掻いてみたが別に痛くも痒くもない。
どこかにぶつけた覚えもない。
俊輔は首を傾げて鏡を置いた。
身に覚えがないのだから考えたところで仕方がない……。
「ふぅーん……」
と、葵はまあ納得したように鼻を鳴らしてから「お前…明日どうすんの?プールなんだから、それ丸見えだぞ……?」
そう言って改めてカレーを食べ始める。
「どうすんの?って何が?」
俊輔の言葉に葵の手が止まる。
「何がって……、あいつらに勘違いされるぞ?」
「なんで?北村さんの目的はお前なんだから別に関係ないだろ」
そう言って俊輔は軽く笑った。
葵は初めて結衣に同情した。
こんな鈍感………中々いない……。
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