20 / 160
もう一人の俊輔
しおりを挟む
俊輔は医務室のベットで天井を見つめていた。
眠っていたらしく、目が覚め、葵の姿を探したがどこにも見当たらなかった。
大きな発作を起こした後はいつも胸の中に黒いモヤのような塊のような不安が巣食う。
そしてそれは徐々に自己嫌悪へと変わっていく。
しかし今はただ不安で仕方なかった。
医務室のドアが『ガチャ』と音を立てて開くと荷物を持った葵が入ってきた。
俊輔が起き上がり
「どこ行ってたの?」
と尋ねてくる。
「荷物、取りに行ってたんだよ。じゃなきゃ帰れないだろ?」
葵が苦笑いする。
発作の後、俊輔は1人になるのを嫌がる。
それに普段では想像出来ないくらい甘えてくる。
多分――本人は意識していない。
そして……――明日には覚えていない――
俊輔がベットから手を伸ばす。
葵は優しく微笑むとその手を握った。
「ここで着替えていいって。着替えたら帰ろう」
「……うん…」
頷くと「結衣たちは?」
心配そうな顔を向けた。
「帰ったよ。発作の後……会うの嫌だろ?」
葵の言葉にコクリと頷く。
俊輔が座ったまま葵の身体に抱きつく…。
葵がまだ少し濡れている髪を撫でる。
俊輔の不安が……流れ込んでくるような気がする――。
まだ俊輔が水恐怖症からパニック障害と診断される前、葵と2人だけの時発作を起こした事があった。
葵は怖くてどうしていいか分からず
泣きながら、ただただ俊輔を抱きしめていた。
おそらく時間にすれば10分から15分程度に過ぎなかったが、俊輔が死んでしまうと本気で思った――。
そして――…発作が治まると俊輔は葵にしがみつき泣きだした。
いつもしっかりしていて……
優しくて強いと思っていた俊輔が
痛い程抱きつき、体を震わせて泣いている姿に、葵は自分がずっとそばにいて俊輔を守ると決めた。
そして…それから少しづつ……
それが俊輔に対しての愛情からなのだと気付いていった。
「ほら、着替えて帰ろう。一緒に」
葵が抱きしめると
「うん」
と、ようやく離れる――
着替えてからも俊輔は葵の手を離さなかった。
目が覚めた時いなかったの、マズかったかな…。と葵は苦笑いする。
手を繋いだまま医務室を出て、事務所にお礼を言いに行く。
俊輔は強く葵の手を握りしめたまま俯いている。
職員や他の客に興味深い目で見られたが葵は一切気にしなかった。
外でタクシーを待ってる間も、指をさしてくる者も、明らかに嫌な眼を向ける者もいた。
タクシーに乗り込むと俊輔が、うとうとし始める。
プールでの極度の緊張に、大きな発作で余程疲れていたのだろう……。
俊輔が安心したように葵の肩に頭を預ける。
手は相変わらず離さない。
葵はフッと笑うと
「――愛してる…」
そう呟いて髪に口づけた。
眠っていたらしく、目が覚め、葵の姿を探したがどこにも見当たらなかった。
大きな発作を起こした後はいつも胸の中に黒いモヤのような塊のような不安が巣食う。
そしてそれは徐々に自己嫌悪へと変わっていく。
しかし今はただ不安で仕方なかった。
医務室のドアが『ガチャ』と音を立てて開くと荷物を持った葵が入ってきた。
俊輔が起き上がり
「どこ行ってたの?」
と尋ねてくる。
「荷物、取りに行ってたんだよ。じゃなきゃ帰れないだろ?」
葵が苦笑いする。
発作の後、俊輔は1人になるのを嫌がる。
それに普段では想像出来ないくらい甘えてくる。
多分――本人は意識していない。
そして……――明日には覚えていない――
俊輔がベットから手を伸ばす。
葵は優しく微笑むとその手を握った。
「ここで着替えていいって。着替えたら帰ろう」
「……うん…」
頷くと「結衣たちは?」
心配そうな顔を向けた。
「帰ったよ。発作の後……会うの嫌だろ?」
葵の言葉にコクリと頷く。
俊輔が座ったまま葵の身体に抱きつく…。
葵がまだ少し濡れている髪を撫でる。
俊輔の不安が……流れ込んでくるような気がする――。
まだ俊輔が水恐怖症からパニック障害と診断される前、葵と2人だけの時発作を起こした事があった。
葵は怖くてどうしていいか分からず
泣きながら、ただただ俊輔を抱きしめていた。
おそらく時間にすれば10分から15分程度に過ぎなかったが、俊輔が死んでしまうと本気で思った――。
そして――…発作が治まると俊輔は葵にしがみつき泣きだした。
いつもしっかりしていて……
優しくて強いと思っていた俊輔が
痛い程抱きつき、体を震わせて泣いている姿に、葵は自分がずっとそばにいて俊輔を守ると決めた。
そして…それから少しづつ……
それが俊輔に対しての愛情からなのだと気付いていった。
「ほら、着替えて帰ろう。一緒に」
葵が抱きしめると
「うん」
と、ようやく離れる――
着替えてからも俊輔は葵の手を離さなかった。
目が覚めた時いなかったの、マズかったかな…。と葵は苦笑いする。
手を繋いだまま医務室を出て、事務所にお礼を言いに行く。
俊輔は強く葵の手を握りしめたまま俯いている。
職員や他の客に興味深い目で見られたが葵は一切気にしなかった。
外でタクシーを待ってる間も、指をさしてくる者も、明らかに嫌な眼を向ける者もいた。
タクシーに乗り込むと俊輔が、うとうとし始める。
プールでの極度の緊張に、大きな発作で余程疲れていたのだろう……。
俊輔が安心したように葵の肩に頭を預ける。
手は相変わらず離さない。
葵はフッと笑うと
「――愛してる…」
そう呟いて髪に口づけた。
0
あなたにおすすめの小説
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる