君の手の温もりが…

海花

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黒い夢

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俊輔はガラスで被われた部屋のなかにいた。
辺りは真っ暗で誰もいない。
暗闇が恐くて葵を探すが見当たらない。
「…葵……」
名前を呼んだ途端口の中へ大量の水が流れ込んでくる。
気が付くと部屋は水で満たされている。
息が吸えずもがくが、もがけばもがくほど自分の中に水が流れ込んでくる。
耳からも…目からも…。
「──俊」
後ろから呼ばれて、もがきながら振り返る。
ガラスの向こうに葵が立っている。
苦しくて恐くて手を伸ばそうとすると
「お前…みっともないよ……」
葵が冷たく言い捨てる。
心臓が『ドクンッ』と大きく跳ねる。
「──俺のことが…好きなの?」
今度は耳元で聞こえる。
「──弟相手に想像してたててるとか…マジでキモイんだけど──…」
………違うっ……
声に出したいのに流れ込んでくる水のせいで声にならない…。
「何が違うの?」
目の前に葵の姿が現れ、伸ばされた俊輔の手を強く払い除けた。
「──二度と俺に触るな─」
見たこともない様な冷たい顔の葵が黒い水に溶けるように消えていく。

………………葵………

俊輔の瞳から涙が流れ黒い水に溶けていく。
胸が苦しくてもがいた。
息が吸えない…。
苦しくて…恐くて……。
でもそれよりも葵に嫌われたことが切なくて胸が苦しくなった。

俊輔の嗚咽が暗い部屋のなかに響いている。
涙が顔を伝う感触と、自分の声で目が覚めた。
………夢……
呼吸が少し乱れている。
俊輔は腕で両目を塞いだ。
それでも涙が溢れ出した。
階下から葵がしているゲームの音が微かに聞こえる。
俊輔は暗闇に少しでも触れなくて済むように、肌掛けにくるまり出来るだけ小さく体を丸めた。


朝の日差しがカーテンを通り抜けベットへ届く。
あの後結局一睡も出来ず朝をむかえた。
眠ったらまたあの夢を見るのではないかと恐かったからだ。
軽い動悸と手の震えはあるものの薬のお陰か、大きな発作には繋がらなくて済んでいた。
時計は5時になろうとしている。
俊輔は部屋を出て浴室へ向かった。
今日はバイトも入っている。
用意した着替えを置き脱衣所で服を脱ぎ浴室に入る。
空の浴槽に腰を下ろし少し震えの強くなった手を見つめる。
プールで溺れてから明らかに酷くなっている。
鏡に自分の情けない姿が映っている。
『お前…みっともないよ』
夢の中の葵の声が頭で直接聞こえる。
俊輔は意を決したようにシャワーを捻った。
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