君の手の温もりが…

海花

文字の大きさ
38 / 160

藤井さんの彼女2

しおりを挟む
エレベーターで下に着くとマンションの目の前に1台のスポーツカーが止まっている。
黒光りするそれが、車に興味のない葵の目にも高級車なのが分かった。
目の前の窓が開き莉央が乗るように声を掛ける。
後ろを見たがドアが無いので葵は助手席に乗り込み「…すみません…」と恐縮した。
ナビに住所を入力して車を走らせると
「今日はありがとうね。直斗、すぐ強がるから」
と、笑いながら莉央が言う。「あいつのことだから店で動けなくなるなんて、よっぽど痛かったんだと思うんだぁ」
「タクシーの中でもすごい痛そうでした…」
葵が言うと
「本当強がり」
困ったように笑う。「昔からそうなの。それで結局腰ダメにしたのにね」
「…バスケですか?」
一瞬莉央が葵に目を向ける。
「直斗が話したの?」
「あ、はい。さっき…学生時代バスケやってて腰痛めたって…」
莉央がびっくりしたように
「へぇ…」
と、声を上げる。「あいつがバスケの話するなんてびっくり」
「……………。」
葵が黙っていると
「直斗…高校の時バスケ部のエースでね。めちゃくちゃカッコよかったんだよー!3年の時インターハイ行ける位まで強くなってね…。元々ずっとバスケやってたみたいだし、でも何かもう…直斗ありきのチームでさ。腰痛いのにずっと黙ってて…」
莉央が何とも言えない表情で話を続ける。
「インターハイ懸かった試合で本当に動けなくなっちゃって…。結局負けちゃった。チームメイトは直斗を無言で責めるの!自分たちはおんぶにだっこだったくせに!!」
莉央が頬を膨らませて怒っている。
「それから直斗、バスケのこと話さなくなっちゃった…。もしかしたら歩夢も知らないんじゃないかな…」
「……そうなんだ…」
葵が独り言の様に呟いた。
莉央がチラっと葵を見る。

「あ!この辺かな?合ってる?」
莉央に言われて外を見ると少し先に自宅が見える。
「あ!すぐそこです」
莉央が葵の家の前で車を止めた。
葵が「ありがとうございました」と車を降りると莉央も運転席から降りてきてバッグの中から名刺を1枚取り出した。
「これ、私の名刺。もし…直斗のことで何かあったら連絡して。もちろんデートのお誘いでもいいからね!」
そう言うと葵を抱きしめ頬に軽くキスをした。
再び葵の顔が真っ赤になる。
「………葵……?」
突然名前を呼ばれ葵が振り返ると、コンビニ袋を持った俊輔が立っている。
「俊!なっ…何でこんなとこにいんの!?」
葵が慌てて思わず声をあげた。
「なんでって……自分ちの前だから……」
俊輔はそう言ってチラっと莉央の方を見た。
「あ……兄です、えっとこの人は…」
葵が紹介しようとすると
「こんばんは。葵くんの上司の友人です」
と莉央がにこやかに自己紹介する。
「葵くんの噂のお兄さん?直斗がすごく良いお兄さんなんだって話してた!」
そう言って俊輔の手を取り握手する。
「やだぁ!お兄さんも可愛い顔してる!!イケメン兄弟とか反則でしょー!」
今にも抱きつかんばかりの勢いに葵がハラハラする。
「お兄さんも今度一緒に遊ぼう!あ!名前聞いていい!?」
「……俊輔…です…」
「俊輔くんね!私は莉央だから覚えておいてね!」
俊輔が顔を赤くして呆気にとられている。
「じゃぁ、葵くん!またね!今日は本当ありがとう!」
そう言って車に戻っていく。
「俊輔くんもまたね!」
そう言い残し高級車が静かに走っていった。
「賑やかな人だね…」
俊輔がまだ呆然としたまま口にした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...