君の手の温もりが…

海花

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お互いの思い

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葵は膝を抱えたまま俊輔の部屋の前に座っていた。
3、40分程すると部屋の中から聞こえる呼吸も落ち着き、今は怖くなる程の沈黙が重くのしかかっている。
泣いたせいで頭がぼーっとしている。
怒りに任せて俊輔をわざわざ傷付けた。
俊輔に誰か好きな人が出来ても自分がどうこう言える立場じゃないことくらい解ってるつもりだった。
中学の時、俊輔に彼女が出来た時も嫉妬しなかった訳じゃないが、『それはそれ』と割り切れた。
自分は俊輔にとって『弟』なんだと…。
しかし今回の『片山薫』は違っていた。
片山と一緒にいる俊輔を想像しただけで抑えられない程イラついた。

あの日──…片山の膝で眠る俊輔を見た日…
『お前はもう用無しだ』と言われた気がしたんだ……。

葵の頬をまた涙が伝った。
「俊……」
葵は膝に顔を埋めた。
「…──俺……もう…必要ないの──…?」


俊輔はドアの前で身体を丸めて横になっている。
目は開いているが何処を見ているのか、何を見ているのか、本当は何も見えていないのか、分からない様な意思のない瞳をしている。
表情も無く、まるで人形が転がっているように見えた。
辛うじて意思が見えるとしたら、涙だけが時々流ていることだけだろうか…。

俊輔の意識は夢の中を漂っていた。
自分はここが夢なのか現実なのか解っていない。
真っ暗な部屋の中にいる。
自分の部屋だと言われればそんな気もするし、違う気もする…。
目の前に小さな男の子が座っている。
見覚えのあるトレーナー…。
子供の頃流行ったアニメのキャラクターが描かれている。
確か…気に入ってよく着ていた…。

……あれは……俺だ……。

子供の頃の自分がいる。
だんだん周りが明るくなって風景が見えてくる……。
昔住んでいたアパートの一室…。
幼い自分がテレビの前で座っている。
見ていると時々ビクッとなって周りをキョロキョロ確認している。

───そうだ…父さんが帰ってくるまで1人でいつも心細かったんだ…。
だけど…父さんを困らせたくなくて…言えなかった…。
寂しい──…って……。

急に場面が変わる。

葵が隣にいる。
まだ保育園に行ってた頃の葵だ。
4人で暮らす為に今の家に引っ越した。
2人で昼寝をしている。
いつも手を繋いで寝ていた。
その手が温かくて、もう、1人じゃないと安心できた。

……そっか……。
──俺はこの頃からずっと葵が好きだったんだ……。
…葵が男でも…女でも…関係なかった…。
……一緒にいるだけで──…俺は……。

「俊ちゃん」
呼ばれて振り向くと、今寝ていたはずの葵が立っている。
「…葵……」
「何泣いてるの?」
言われて初めて泣いてるのに気付いた。
「お腹痛いの?」
小さな葵が心配するように覗き込む。
俊輔が首を横に振る。
「よしよし。いい子いい子」
葵の小さな手が俊輔の頭を撫でる。
俊輔は葵が消えてしまわないように、そっと手を伸ばし優しく抱きしめた。
「もう怖くないよ。葵、ずっと俊ちゃんと一緒にいるからね」
葵の小さな手が俊輔を抱きしめる。
「…──葵……。大好きだよ…──…」


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