君の手の温もりが…

海花

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初めてのキス

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身体を強ばらせる葵に藤井が笑って
「ここまでにしよう」
そう言う藤井の口を──
───今度は葵が塞いだ。
初めてのことで……歯が当たる……
「…困ったね…」
そう言い、葵を強く抱きしめキスをした。
今度は触れるだけじゃない…。
葵の口の中に藤井の舌が押し入ってくる。
「──ん―……」
葵が声にならない声を上げる。
藤井の舌が激しく絡み、唇を舐め優しく舌を吸う。
その舌が葵の首筋へとゆっくりおりていく。
「──…あ…んん──ぁっ……」
自分のものとは思えない声が口から漏れた。
身体が熱くなるのが解る。
その熱と恥ずかしさで顔が赤くなる。
首筋を舐めていた舌がふと肩に移り優しく歯を立てる
「…──ん!あっ」
思わず声が大きくなる。
その声を塞ぐようにまたキスをされる。
藤井の指が葵の背中をそっとなぞると、葵の身体はそれだけでビクッと波打った。

藤井は葵の目にうっすら涙があるのに気付いていた。
快感の為か…兄を思ってか…決め兼ねる。
このまま進んでいいのか──…。
藤井の中で葵は特別だった。
素直で美しく……生意気で……
そのくせ…とことん無垢で──……。
こんなことになるとは想定さえしていなかった。
葵にとっておそらく初めての経験だろう。
話を聞いていれば女性とのセックスすら経験がない。
完全に葵の身体は反応している。
このまま中途半端で終わらせるのも、自分の手でイかせてやるのも、どちらをとっても可哀想に思えた。

よろしくないな……。
いつもならもっと上手くかわせた筈だ…。
……──俺らしくない……。


……葵だから──………?


藤井はキスをやめ、優しく葵を抱きしめた。
「今日はこれで終わりにしよう」
耳元で優しく囁く。
中途半端で終わったとしても、本当に好きな人ができた時、後悔させたくなかった。
葵の様子から『兄に特別な想い』があるのは気付いていた。
しかしこの子が自分の様に全て割り切れるとも思えない。
兄に拒絶されて、一時自分に惹かれたとしても、それは兄の代わりで『一時の事』に過ぎない。
葵は顔を真っ赤にして俯いた。
「…──俺の……せいですか……?」
「そうじゃない。葵くんに後悔させたくない。僕は大人だから…自分の責任はとるし、とらなければいけない。でも君はまだ子供だ。いつか僕とこうなった事を悔やむ日が来るかもしれない。そうさせたくないんだ」
藤井が優しく抱きしめ、子供をあやす様に葵を諭す。
「僕のわがままだけど…いつか君が大人になった時、思い出したくもない思い出になりたくない。…──どうやら僕にとって、葵くんは特別らしい…」
藤井が困ったように微笑む。
「……俺は……確かに大人じゃないけど…自分のした事を人のせいにはしません。後悔するかは……分からないけど……。けど、それで藤井さんを責めたり、嫌いになったりはしません」
藤井は抱きしめたまま黙っている。
葵を自分のものにしたい衝動が湧き上がる。
「……困ったね」
藤井が優しく葵の顔を上げ「じゃあ…こうしよう…。まず座ってコーヒーを飲む。とりあえず落ち着いて話をしよう。それでもまだ……僕が必要だと言うなら……」
一旦言葉を切った。
「葵くんの部屋へ…、君のベットへ行こう」
言葉の意味が解り葵が唾を飲み込んだ。

藤井に促されイスに腰掛ける。
「何があったか話すかい?」
向かい側から藤井が優しく問いかける。
葵は黙っていた。
何を…どう話せばいいのかも分からなかった…。
ただ分かっているのは……くだらない嫉妬心で俊輔を傷付けたこと…。
……そしてその嫉妬心が自分では抑えられないこと……。

それと…――『弟』でしかない自分……。

葵が俯き唇を噛む。
「…無理に話す必要は無いよ」
そう言って藤井は冷めたコーヒーを口に入れた。
「……聞いてもいいですか?」
葵が口を開く。
「ん?なんだい?」
「さっき……藤井さんは…俺を『特別』だって言ってくれたけど…どうして、そう思ったんですか……?」
藤井は一瞬驚いたような顔をしたが、困ったような笑顔になると
「どうしてかな……確かに初めて葵くんを見た時、キレイな子だなと思ったし、仕事で関わるうちに素直で…良い子だとも思った。けど、それだけじゃない……。君と関わって一緒にゲームをして…気がついたら……惹かれてた…」
葵が真っ直ぐに藤井を見つめる。

…──こういうところにも……。

葵が俯きゆっくり口を開いた。
「…俺は…──子供の頃から俊が好きでした…。多分俊以外…好きになったことがないです。……だから…あいつの為なら何でもしてやりたいって思ってたし……ずっと傍で守ってやりたいって……」
絞り出すように話し続ける。
「……なのに…俺は…嫉妬して…わざとあいつを傷付けた…。昨日の発作も……」
葵が藤井を見つめ
「俊の為に…俊から離れたいんです。──もうこれ以上……傷付けなくて済むように──…」
葵の瞳が涙で潤んでいる。
「……それで…──僕かい?」
藤井の言葉に葵の顔が歪む。
「俺……藤井さんにすごく失礼なこと言ってますよね…」
「そんなことは気にしなくていい。さっきも言った筈だよ?お兄さんの代わりでも僕は構わない……」
藤井が黙ってコーヒーに視線を落とした。

この子は思ったより脆い…
俺に向いてさえくれれば守ってもやれる…
でももし…そうならなかったら……
この子は……壊れてしまわないだろうか…

しかし、藤井は自分で思っているより遥かに葵に惹かれてた。
「僕が代わりになれるといいけど…」
藤井は困ったように笑った。


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