君の手の温もりが…

海花

文字の大きさ
65 / 160

許せない思い

しおりを挟む
「送ってくって!」
玄関先で俊輔が焦っている。
「大丈夫だから!夜買い物とか行く時だってあるし、そんな遠い訳でもないんだから」
結衣が苦笑いする。
「また……明日来るから…」
結衣が上目遣いで俊輔を見つめる。
俊輔は少し困ったように笑っている…。
「俊輔が……来るなって言うまで…毎日くるから」
「……分かった」
俊輔が結衣の頭を撫でる。
「…ありがとう……」

結衣は俊輔の家を出ると少し行って立ち止まった。

───俊輔……ずっと困ったように笑ってた……。
──そりゃそっか……。私……振られたんだもんな……なのに…毎日来るとか……。

結衣は溜息をついた。

──図々しい……とか思われたかな…。

スマホを見ると8時半過ぎている。
葵と話がしたくて俊輔が送ってくと言うのを断った。
しばらく待つと向こうから人が歩いてくるのが分かった。

─────葵……だ……。

「……久しぶり」
結衣が葵の前に立ちはだかる。
「…………」
葵が軽く睨みつけ、視線を逸らした。
「……葵……付き合ってる人いるんだってね?」
いきなりの言葉に再び葵が結衣を睨みつける。
「…………だったら…なんだよ……」
「あんた私に言ったよね!?俊輔を守るって」
葵の表情が明らかに変わる……。
「まあ……いいけど。あんたの「好きだ」とか「愛してる」とかなんて…そんなもんだったんだから……」
結衣の言葉に頭に血が上る……。
「…──お前に何が解る………」
「……何も?……解ってるのは…葵が俊輔を放り出したってことだけじゃない?」
葵の手が握られ微かに震える…。
「……違う…………」
「違わない。何があったか知らないけど…私なら好きな人の手を離したりしない」
結衣にも葵の怒りが伝わっている。
怖くない訳じゃない。
自分より遥かに背も高く力もある。
それでも……俊輔を放り出した葵が許せなかった。
「──俺が好きでいる方が俊を傷付けるんだよ!何も知らない癖に偉そうなこと言うな!!」
葵が怒りに任せて声を上げた。
「……あんた…小学生?誰かを好きになれば傷付くことも、傷付けることもあるに決まってんじゃん。葵がやってる事はこれ以上自分が傷つかない様に他の人に逃げただけでしょ」
結衣の冷静な言葉が葵を冷たく突き放す。
「俊輔は私が守るから。──葵には……」
結衣は精一杯葵を睨みつけた。
「葵には絶対俊輔を渡さない」
それだけ言うと結衣は葵に背中を向けて歩き出した…。
昔から母に「気ばっかり強い」とよく言われた。
手が驚く程震えている…。
感情が昂って涙が溢れる…。
別に葵にいちいち言う必要無いこと位分かっていた。
だけど……『自分はただの兄貴だから』と悲しげに笑った顔が頭から離れない…。
結衣は手で涙を拭くと家へと向かって歩いていった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...