君の手の温もりが…

海花

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嵐 3

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「俊、ラインきてるぞ」
「あー……ちょっと待って……」
夕飯を作っていた俊輔がスイッチを切りスマホを取りに来る。
ラインを読み何かを返信すると、そのままスマホをソファーへ投げ出しキッチンへ戻って行った。
投げ出されたスマホの画面はラインが開かれたままだ。
薫が俊輔のスマホを手に取り
「弟?」
わざとらしく声を掛けた。
「そう」
俊輔は再びコンロのスイッチを入れ料理を始めている。
「なんだって?」
言いながら葵からのラインを読む。
──『ごめん、今日藤井さんちに泊まる』
──『了解』
薫がフッと笑う。
「……今日人んちに泊まるって。薫、飯食ってけよ、二人分作っちゃってるし」
俊輔は平静を装っているが、明らかに動揺しているのが判る。
「いいの?食ってく!食ってく!帰ってもどうせ一人だし」
薫が俊輔のスマホをソファーへ投げる。
一時間程前、俊輔に頼まれて注文していた予備校の問題集が来たからと、薫が俊輔の家を訪れていた。
今日は届けて少ししたら帰るつもりでいたが……
───好機は突然訪れた────
「彼女んち泊まるんだって?」
薫が興味津々といった顔でソファーから声を掛ける。
「…………まぁ…そうじゃない…?」
俊輔が素っ気なく答えるが、薫は気付かない様子で
「おお!ガチで?あの子モテそうだもんな」
話を続けたそうにソファーから身を乗り出しているのが俊輔の目の端に映る。
「相手はどんな子!?可愛い!?」
「……知らないよ。見たことないし……」
「なんだよー!つまんねぇなぁ…。お前んとこってもっと仲良いのかと思った。俊が発作起こした時に会っただけだけど……なんて言うか……ちょっと『恋人同士』かよって思うくらい仲良かったじゃん?」
薫の言葉に気持ちがざわつき…イライラしてくるのが分かる。
「……そんなこと……ないよ」
「そうかぁ?まぁ……所詮『兄弟』だもんな。そりゃぁ好きな奴が出来れば兄貴なんて捨てられるよな」
薫が冗談ぽく言って笑った。
俊輔は鼓動が早くなって来ているのが判って焦りだした。
──大丈夫だ……。薬も効いてる……。
「けどさぁ、いきなり泊まるってことは……良い雰囲気なのかもな……」
薫が立ち上がりキッチンへ向かう。
「今頃……やってたりして……」
───俊輔の耳元で葵の艶めかし声が蘇った…。
───『藤井……さん……』
手が震えだし、涙が込み上げ、呼吸が一気におかしくなる……。
───薬………………
部屋へ向かおうとする俊輔を薫が止めた。
「どこ行くの?」
過呼吸を起こしかけていて返事が出来ない俊輔の手を掴む。
「──俊…………」
俊輔の顔が歪み…目の前が暗くなる……。

───その呼び方をしないで…………

───苦しい…………………………

俊輔は床に膝をついて息を吸い続け始める。

────怖い──────

────苦しい──────


─────────葵……───────



薫は冷静にコンロのスイッチを止めた。
目の前で完全に発作を起こしている俊輔を観て微笑む。
思ったより簡単だった。
「……ストレスって……そう簡単には無くならないって知ってた?」
既に聞こえてはいないだろう俊輔に話しかける。
俊輔は苦しみながら息を吸い続け、震えは全身にまで及んでいる。
「発作を止めるの……勿体ないなぁ」
そう言うとしゃがんで俊輔の髪を撫でた。
薫は身体が熱くなって自分の『それ』が反応しているのが判った。
「……ヤバイ……俊、俺ドSかも……」
薫は俊輔に話し掛け一人で笑った。

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