君の手の温もりが…

海花

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薫 3

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藤井は酔っ払い相手に喧嘩してしまった事を心から後悔していた。
「……葵…………?」
「ダメです」
「……そんな冷たい言い方しなくても……」
「ダメです!」
「……キスくらいいいでしょ……」
「絶対ダメです!」
ソファーで藤井がキスしようとするのを葵が頑として拒絶している。
「キスしたって…怪我には影響ないよ……。しない方が悪くなりそう……」
藤井がため息をつく。
「そんな訳ないじゃないですか!……藤井さん…キスしたら絶対押し倒そうとするでしょ」
葵は口に両手を当てている。
「……しないよ」
「絶対します!」
藤井が再び大きなため息をつき
「こんな事なら葵に一服盛れば良かった…」
藤井が苦笑いした。
「……なんですか?一服盛るって……?」
首を傾げる葵に
「ん?……葵に睡眠剤でも飲ませて寝かせちゃえば良かったって」
葵が眉を顰める。相変わらず口は両手で守られている。
「冗談だよ。そんな事しないから」
藤井が笑うと
「そうじゃなくて!……そんな事……本当に出来るんですか!?」
突然葵が必死な顔で藤井の腕を掴んだ。
「………出来るよ。一時流行ったしね。なんで……そんな事聞くの?身に覚えでもあるの?」
藤井の顔から笑顔が消えた。
「いえ……俺じゃなくて……俊…兄貴が…」
「…………お兄さん…?」
「前に……そんな事言ってたから」
「……そんな事って……?」
藤井が軽くため息をつき優しく聞き返した。
──恋敵の相談されるってのも…ね……。
「友達の家で…突然耐えられないくらい眠くなって……ベットに運ばれたのも分からなかったって……」
藤井が眉間に皺を寄せ
「それは……確かにちょっとおかしいね。前言ってたお兄さんの持病とは関係ないの?稀にそういう持病がある人がいるみたいだけど……」
「関係ないと思います……。俊も初めてだって言ってたし……」
葵の顔がみるみる曇っていく。
想像していたことが少しづつ確信へと変わっていく。
「……なにか……それで…おかしな事があったりした?……例えば……物が無くなったとか……身に覚えの無い傷が出来たとか……」
「……首にアザが……」
「首に……?それはキスマークがあったってこと?」
「………………」
葵がコクリと頷く。
───わざわざ……証拠を残すような事するか……?
「んー……。ハッキリは分からないけど……その友達とは距離をおいた方が良いとは思うね」
葵が俯き
「そう言ったんですけど……。俊…そいつの事すごい信用してて……」
辛そうに呟いた。
藤井はしばらく葵を見つめていたが
「それでも心配ならちゃんと話した方がいい。中には質の悪い薬を使う奴もいるから……何かあってから後悔しても…遅いからね」
そう言って優しく微笑んだ。
「……分かりました。帰ったら俊と、もう一度ちゃんと話してみます」
葵は顔を上げると
「変な話しちゃってすみません」
無理に微笑んだ。その顔に不安が浮かんでいた。

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