君の手の温もりが…

海花

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コール

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タブレットの画面から大袈裟な喘ぎ後が響きわたる。
───何で……昔のホラーって必ずエロいシーンがあるんだろう……。ちょっと…気まずいんだけど……。
あんなに涼しかった部屋が今は少し暑く感じる。タブレットから聞こえるその声が妙に耳について、身体の奥が熱くなっていく様に思える。
画面の中の二人が長いキスをしているのを俊輔の目が捉えて離せなくなり、心臓がトクトクと音を立て始める。
───キス……したいな……。
「───俊……」
突然薫に呼ばれて振り返った。薫の指がタブレットの画面を消し俊輔だけを見つめる。
「俺が……好きだって言ったの覚えてる?」
自分を見つめる薫の瞳が熱をもつように潤んで見え、俊輔の鼓動が早くなった。
「もしもさ………少しでも…俺を好きだと思ってくれるなら……キスしてもいい?」
「──え…………」
薫の瞳が酷く愛おしく思えて、自分の頬に触れる手が熱い事に拒否出来なくなった。
「好きだよ……俊……」
───あ………………
薫の唇が優しく触れ、そして離れては再び触れる。何度かそれを繰り返しゆっくりと薫の舌が俊輔の舌を探しあてる。
俊輔もそれに応える様に絡めた。
───薫…………
熱く舌を絡める二人の横でタブレットが仕事を無くしたのに気付いたかの様に画面の明かりを消した。


「───……もしもし…………」
電話が通じて一呼吸置いてから葵は声をだした。知らない番号からの着信で躊躇っていたのを声からも窺わせる。
「葵!?」
電話の向こうから切羽詰まった若い女の声がして、聞き覚えのあるその声に
「…結衣……?」
一瞬迷ってから名前を呼んだ。
「葵!?今どこにいるの!?」
葵は突然の質問に言葉を詰まらせ、思わず藤井に視線を向ける。
「……なんでだよ……?」
「俊輔が……!望月くんちに泊まりに行っちゃって!…………別に…大したことないって言われれば…そうなんだけど……」
言っている途中で『それだけの事』で騒いで電話を掛けてきたのか……と思われるのでは無いかと、段々声が小さくなっていく。
「──なんで、お前止めないんだよ!?」
結衣は予想に反して葵の責めるような声が耳に届いた。
「止めたよ!何回も!でもっ…前からしてた約束だし、そんな心配する必要ないって…」
「あのバカっ!」
葵が吐き捨てるように言った。
「俺…電話して迎えいくから。あいつの家…結衣分かる!?」
葵は結衣から薫の家の場所を教わると、直ぐに俊輔に電話を掛けた。結衣の話では一時間くらい前までは俊輔からの連絡はあったらしい。
しかし葵のスマホからはコール音だけが聞こえてくる。二度、三度と掛けても俊輔が出る様子はない。
「すみません……。俺、帰ります」
不安そうな顔のまま自分を見つめる葵が、今にも泣き出しそうに藤井の目には映った。


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