君の手の温もりが…

海花

文字の大きさ
137 / 160

それぞれの夜

しおりを挟む


───あの人は…………意地悪だ…………

俊輔は結衣の手を握ったまま走り続けた。
目が合った瞬間わざわざ葵を呼び、見せつけるようにキスをした。

───『葵は自分のものだ』と知らしめる為に…………

人混みの中をどう走ったのか分からないまま、ただあの人と葵から少しでも離れたかった。
「俊輔!」
結衣に呼ばれ漸く足を止めた。
俊輔が慌てて振り返ると結衣が苦しそうに息をしていて、そこで初めてずっと走り続けていたのだと気付いた。
「———ごめん!……」
結衣が肩で息をしながら首を横に振る。何か言いたかったが、苦しくて声にならない。
「……本当にごめん…………」
俊輔が離そうとする手を結衣が強く握りしめ
「……大丈夫……だから…………」
結衣がどうにか声にして微笑んだ。俊輔の手が微かに震えているのにずっと気付いていた。
町中を少し抜けて人通りが少なくなった道路で二人は立っていた。
それでも疎らに通る人が立ち尽くす二人を怪訝そうに見ていく。
「一緒に……帰ろう」
そう言って結衣が俊輔をそっと抱きしめた……。


「楽しかったぁー!」
葵が満足気に戦利品を手に部屋に入って行く。
夕食も外で済ませ大好きな甘い物も、もちろん食べてきた。
「それは何より。また行こう」
藤井も微笑んでソファーへ腰を下ろした。
すると隣に座った葵が戦利品の中から大きなぬいぐるみを出しポンポンと叩いて膨らませるとソファーの端に置き満足気に笑って頷いている。
藤井がそれを不思議そうに
「……そういうの好きなの?」
覗き込んで見ている。
「まさか!…ここで横になる時に枕替わりになるかなって思って」
葵が嬉しそうにニッと笑った。
「…ベッドがあるのに……ここで横になることなんてある?」
訝しげに聞く藤井に
「……よく言いますよ…。すぐここで押し倒すクセに」
呆れたように葵がふざけて睨みつける。
「…………なるほどね。じゃあ……俺はこれから心置き無く、ここで葵を押し倒せる訳だ」
そう言ってニヤっと笑うと葵にキスをして押し倒した。
「──そういう訳じゃないけどっ!」
葵の抗議も虚しく藤井の唇が全てを塞いでいった。


「…………ん…………」
薄暗い部屋の中で甘い吐息が漏れる。
ベッドの下に無造作に脱ぎ捨てられた服が…二人の荒い呼吸が…余計に夢中にさせている。
何も考えず目の前の柔らかく温かい肌にただけ没頭する。
「…………俊輔…………」
甘い声と共に結衣の柔らかい腕が俊輔の背中にそっと絡みついていった…………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...