神殺しの花嫁

海花

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初めてこの部屋で見たより大分薄暗い行灯の灯りが、嫌に部屋を妖艶に照らしている様に思えて、幸成は居心地悪そうに俯いた。

夕餉の後、今日も幸成と寝ると言ってきかない翡翠達に、今夜は大事な話があるからダメだと、騒ぐ子供達を寝床へ連れていった琥珀を思い出す。
三人を連れて出る間際「先に布団へ行ってろ」そう耳打ちしてニヤリと笑っていた。

幸成は寝所の隅に座り、敷かれている布団をチラリと視界に入れた。
何をするかは兄に犯されたせいで解っている。
冷静になってあの時の痛みと恥辱を思えば、決して僅かでは無い恐怖が湧き上がる。
しかし、ここに来た初めての夜の琥珀との閨事は身体を熱くするには充分だった。

幸成はもう一度視界の隅で布団を捉えた。
ここに一人でいるのが恥ずかしく、琥珀に早く来て欲しい様な、来て欲しく無いような……それすら分からない。

琥珀を傷付けないと決めた今、自分はただの“差し出された贄”でしかない。
しかし、ここに来てから子煩悩な愛情深い男の姿しか見ていない。
それでも気に入らなければ“贄”である自分には牙を剥き殺すのだろうか……。

「……まぁ……それも…いいかもしれないな……」

ぽつりと口にすると、静かに襖が開いた。




「…………お前……そんな隅で何やってんだ?」

呆れた様に笑う琥珀を、幸成の視線が一瞬向けられすぐに逸らされた。
その短い間にも戸惑い、怯えているのが分かり琥珀は苦笑いすると、布団の上にドカッと胡座をかいて座った。

「こっちへ来い」

その一言にも幸成はビクッと身体を震わせている。

「……それとも…生娘みてぇにオレが抱き上げて布団まで運んでやらねぇとダメか?」

馬鹿にしたように笑う琥珀をひと睨みすると、幸成は腰を上げ布団のすぐ脇まで足を運んだ。
その不貞腐れている様にも見える幸成の態度に、琥珀はくすくすと笑っている。

「突っ立ってねぇでここに座れよ」

揶揄う様に言った先が、着物がはだけた自分の腿の上で、幸成は顔を真っ赤に染めながら目を見開いた。

「──ここにって」

「裾を捲り上げて、オレを跨いで座るんだよ」

「そんな──見苦しい真似ッ……」

「──いいから言われた通りにしろ」

幸成の言葉を遮り、琥珀はそれでもニヤリと笑っている。
幸成は恥ずかしさから唇を噛み締めると、着物の裾をめくり言われた通りに琥珀に向き合う様に膝の上に座った。

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