神殺しの花嫁

海花

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気の早い雀がさえずるのを鬱陶しいそうに一瞥すると、黒曜は無意識に口の中で舌打ちをした。
自分が嫉妬から怒鳴りつけたのを、完全に見抜かれていた。

いつから琥珀への感情がそれに変わったのか、今となってはそれすら覚えていない。
恐らく最初は純粋に親の様に慕っていた筈だ。
それがいつの間にか、琥珀に抱かれる想像をし、自分だけを見て欲しいと思うようになっていた。

今まで一度たりとも叶うことは無かったのに、あの男はすんなりとそれを手にしたのだ。
しかも今までの様に一夜限りの愛慾だけのものじゃない。

───本気であんな糞餓鬼を手元に置くつもりかよ…………

「───クソッ……」

意図せず口を衝く。

── 「お前は俺の息子だ。それ以上でも以下でも無ぇ」──

何度となく言われた、釘を刺す様な言葉。
はっきりとそんな気は無いと告げている。

「……そんなこと……嫌ほど解ってんだよ……」

ずっと琥珀の背中を見てきた。
その全てを手に入れたいと思いながら、何ひとつ自分のモノにならない背中だけを見てきた。

自分が来る前の事も、琥珀の昔馴染みから聞いて知っている。

琥珀の犯した罪と、それによって課せられたしゅの話。

そしてその後に出会った……唯一愛した女の話……。

どれだけ長い時間を共に過ごしたとしても、決して手にすることの出来ない琥珀の時間。
そして今も……

「………俺が居なきゃ戦うことすらままならねぇくせに………」

ポツリと言葉を吐くのと同時に連れ立った二羽の雀が飛び立ち、漆黒のものさみしげな瞳がそれを見送った。

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