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痛みに幸成の顔が歪んだ。
背中が熱を持つように痛み、生温かい液がそこから垂れていくのが肌に伝わる。
しかし本気で殺すつもりはなど無かったと解る。
成一郎が本気で太刀を振れば、この程度で済まないことを、幼い頃から散々見てきている。
そして幸成が翡翠を庇う事も重々承知していた筈だ。
庇ったところを致命傷にはならない程度の怪我を負わせるつもりだったのだ。
少しづつ、何度も怪我を負わせ
傷と共に恐怖を植え付ける。
抗えないように……
それを考える事すら、愚かだと思うように……
しかし成一郎の目論見に僅かな亀裂が入っていた。
僅かな計算違い。
一つは“翡翠が人の子ではなく、狼の子供”で俊敏であった事。
そしてもう一つは“翡翠もまた自らを顧みず幸成を守ろう”とした事。
成一郎の思惑通り、幸成の背中へ痛みと出血を伴う、それでいてそう深くない傷を負わせた。
しかし幸成が庇いきれなかった翡翠の左目のすぐ下にも傷を負わせていた。
正確には庇いきれなかったのでは無く、自分を抱きしめ庇おうとした背中を、翡翠もまた守ろうとしたのだ。
「────翡翠ッ!?」
身体より薄い皮膚がパクリと口を開き、中の肉を覗かせながら血を溢れさせている。
しかし翡翠はそれでもまだ成一郎へ牙を剥き、幸成を守ろうと身体を強く抱き締めている。
そしてそれに習う様に、蒼玉も体勢を低くして成一郎へ牙を剥いた。
「───二人ともやめるんだッ!」
もし成一郎を本気で怒らせてしまえば、自分にはそれを止められない。
全てなげうって命と引き換えにしたところで、その後子供達が成一郎の手に掛る事など容易に想像できた。
成一郎は昔から命を摘む事になんの躊躇いも見せない。
しかし幸成の言葉が虚しく空気に溶けるように消え、蒼玉が狼の姿に戻るのと同時に成一郎の首目掛けて身体を跳ねさせた。
「───蒼玉ッッ!」
全てが瞬く間であった。
己の首を狙った小さな獣に、当然のように鋭い刃が振り下ろされた。
つい数刻前に唄を唄い、子供達の穏やかな寝顔を見ていた布団の上に、小さな悲鳴を上げた身体が叩きつけられ周りを紅く染めた。
「蒼玉ッ!」
幸成を抱き締めていた翡翠がその手を離し、布団の上で動けなくなっている蒼玉を抱き上げた。
その小さな手まで紅く染まっていく。
必死に呼びかける翡翠の声にも応じないぐったりした小さな身体が、瞬く間に紅く染まっていく。
それに幸成の頭が知らない熱で埋め尽くされた。
初めて感じる抑えられない感情。
「………………貴様……」
幸成の手が短刀を握りしめ、鞘を投げ捨てた。
振り返った瞳が、怒りで我を忘れている。
「───貴様ァァ!!」
成一郎より僅かに早く動いた幸成の、怒号とも悲痛ともつかない叫び声が、辺り一面響き渡った。
背中が熱を持つように痛み、生温かい液がそこから垂れていくのが肌に伝わる。
しかし本気で殺すつもりはなど無かったと解る。
成一郎が本気で太刀を振れば、この程度で済まないことを、幼い頃から散々見てきている。
そして幸成が翡翠を庇う事も重々承知していた筈だ。
庇ったところを致命傷にはならない程度の怪我を負わせるつもりだったのだ。
少しづつ、何度も怪我を負わせ
傷と共に恐怖を植え付ける。
抗えないように……
それを考える事すら、愚かだと思うように……
しかし成一郎の目論見に僅かな亀裂が入っていた。
僅かな計算違い。
一つは“翡翠が人の子ではなく、狼の子供”で俊敏であった事。
そしてもう一つは“翡翠もまた自らを顧みず幸成を守ろう”とした事。
成一郎の思惑通り、幸成の背中へ痛みと出血を伴う、それでいてそう深くない傷を負わせた。
しかし幸成が庇いきれなかった翡翠の左目のすぐ下にも傷を負わせていた。
正確には庇いきれなかったのでは無く、自分を抱きしめ庇おうとした背中を、翡翠もまた守ろうとしたのだ。
「────翡翠ッ!?」
身体より薄い皮膚がパクリと口を開き、中の肉を覗かせながら血を溢れさせている。
しかし翡翠はそれでもまだ成一郎へ牙を剥き、幸成を守ろうと身体を強く抱き締めている。
そしてそれに習う様に、蒼玉も体勢を低くして成一郎へ牙を剥いた。
「───二人ともやめるんだッ!」
もし成一郎を本気で怒らせてしまえば、自分にはそれを止められない。
全てなげうって命と引き換えにしたところで、その後子供達が成一郎の手に掛る事など容易に想像できた。
成一郎は昔から命を摘む事になんの躊躇いも見せない。
しかし幸成の言葉が虚しく空気に溶けるように消え、蒼玉が狼の姿に戻るのと同時に成一郎の首目掛けて身体を跳ねさせた。
「───蒼玉ッッ!」
全てが瞬く間であった。
己の首を狙った小さな獣に、当然のように鋭い刃が振り下ろされた。
つい数刻前に唄を唄い、子供達の穏やかな寝顔を見ていた布団の上に、小さな悲鳴を上げた身体が叩きつけられ周りを紅く染めた。
「蒼玉ッ!」
幸成を抱き締めていた翡翠がその手を離し、布団の上で動けなくなっている蒼玉を抱き上げた。
その小さな手まで紅く染まっていく。
必死に呼びかける翡翠の声にも応じないぐったりした小さな身体が、瞬く間に紅く染まっていく。
それに幸成の頭が知らない熱で埋め尽くされた。
初めて感じる抑えられない感情。
「………………貴様……」
幸成の手が短刀を握りしめ、鞘を投げ捨てた。
振り返った瞳が、怒りで我を忘れている。
「───貴様ァァ!!」
成一郎より僅かに早く動いた幸成の、怒号とも悲痛ともつかない叫び声が、辺り一面響き渡った。
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