神殺しの花嫁

海花

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朝から舞うように降り続ける雪を見上げると幸成は小さく肩を竦めた。
まだ11月だというのに、この年の冬は気早らしく毎日の様に雪を降らせていた。それでも昼間は秋の陽射しが届き、家の仕事をするのも苦にはならなかったが、今日は昼近くなった今も重い雲が雪を振らせていた。

「ねぇ、今日こそ黒曜……来ると思う?」

縁側で一緒に柿の皮剥きをしていた蛍は包丁を持った手を休めると、幸成に向かって声を掛けた。

「んー……どうかな……月夜殿が風邪をひいたって言ってたから……もしかしたらそのまま帰るかもしれないね……」

朝から琥珀と、それに翡翠と蒼玉を連れ立って山へ行った黒曜が“帰りに寄るか”を気にしているのだ。

「…………あのキツネ……いつまで黒曜の所にいるつもりかしら……」

面白くなさそうに呟いた蛍に、幸成は思わず苦笑いした。


琥珀が幸成に血を与えてからじきに七年の月日が経とうとしている。
まだ子供と言えども年頃になった蛍は、どうやら黒曜が気になるらしく、時々家にも行っているらしい。
まあ、その度に月夜と喧嘩をすると言って愚痴を吐く、当の黒曜は蛍の気持ちに気づく様子はない。

「その代わりって言うのもなんだけど、今日、玻璃を連れてくるって…朝早く紫黒さまの使いが来てたよ」

器用に柿の皮を剥きながら、幸成の顔に笑顔が漏れた。

「──瑠璃も来る!?そしたら三人で話をしよう!……翡翠と蒼玉は子供だから話にならなくてイヤ……琥珀なんか問題外だし……」

そう言って溜息を吐いた蛍に、幸成はまた苦笑いした。

「あ…………そろそろ片付けて昼の支度をしないと……きっともうじき、みんな帰ってくるよ」

皮を剥かれた柿を手早く紐で結ぶと、幸成は雪に濡れないように軒下に吊るした。



台所で、朝琥珀が炊いてくれた飯の残りを手際よく握り、これも朝琥珀が作ってくれた味噌汁を温める。
“昼はそれでいい”と言っていたが、どうも申し訳なく感じ、少し前に茹でておいたお菜の胡麻和えを作ると、ちょうど皆が帰ってきた音が聞こえ、幸成は手を拭くとそちらへ向かった。

「幸成ッ!──見て見て!キジッ!おれが捕ったんだぞッ!!」

バタバタと大きな足音をさせて、片手に持った“キジ”を嬉しそうに掲げる翡翠の後を、少し不満げに着いてくる蒼玉を幸成が出迎えた。

「すごいね、大きなキジだ」

幸成の言葉に得意気に笑った翡翠を押し退けると

「おれも手伝ったよッ!」

蒼玉が面白くなさそうに頬をふくらませた。

七年前は幸成の腰ほどまでの背丈だった二人も、今では同じ目線だ。
これを言うと翡翠が怒るが、年下の蒼玉の方が僅かに高い。

「今夜は冷えそうだからキジ鍋でもするか?」

後から入ってきた琥珀が、籠いっぱいに採った木の実や茸を幸成へ手渡した。
そして一番上には美しく紅い実をつけた南天が乗っている。

「おかえりなさい。……玻璃が来るから……鍋なら喜びますね」

籠から南天を手に取り、嬉しそうな笑顔で返した幸成の頭を優しく撫でると

「昼を食ったらすぐ支度にかかるか……」

琥珀は台所へ向かった。



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