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「──お前!本物のバカだろ!?」
小石が敷き詰められた河原で全身びっしょりになった真藤康介は、片手に子犬を抱えたままの高森航へ怒鳴りつけた。
怒鳴られている当の本人は地面に膝と子犬を抱いていない方の手を付き、康介以上にびっしょりになり顔を真っ青にしている。
「泳げないのに、川に飛び込むバカなんかお前くらいなもんだぞ!」
唇までプルプル震わせている航にそれでも容赦なく怒鳴りつける。
「……仕方ねえじゃん…………犬が……溺れてたんだから……」
小刻みに身体を震わせながら、航は何とか康介を睨みつけ言い返した。
学校からの帰り道、川に流されそうになり倒れた木にしがみついていた子犬を見つけ、航は慌てて川に飛び込んだ。
しかし、まさかそんなに深いとも思わず飛び込んだまでは良かったが、子犬を何とか助けた後子犬共々溺れかけたのだ。
そしてそれを呆気に取られて見ていた康介が慌てて助け出した……これがここに至るまでの流れでだった。
「そんで自分が溺れてりゃ意味ねぇだろっ!」
そう言われてしまえば、精一杯のプライドも底を尽き、もう言い返す言葉も気力も無い。
黙ったまま動けず震えている航の目の前まで行くと、康介は目線を合わせるようにしゃがみ込み「はぁ…」と大きなため息を吐いた。
「次、溺れてる犬見つけたら俺に言え。俺が助けてやるから……」
そしてそう言いうと航の頭を撫でた。
康介と航はこの河原からそう遠くない高校に通う幼なじみ同士だ。
保育園からの腐れ縁で、中学に入る頃には2人で連むのが当たり前になっていた。
決して手の掛からない生徒では無いが、悪さをする訳でもない。
所謂『元気が良い』高校生だ。
特に航は何をするのも全力で、時々暴走するのを康介がブレーキを掛ける。
そんな『いいコンビ』だった。
「……けど…俺…………これでバス乗んの…嫌なんだけど……」
康介がびっしょりになった制服を見ながらまた大きなため息を吐く。
そしてチラッと航へ視線を向ける……。
それに気付いた航は真っ青だった頬に微かに血の気を戻し、慌てて康介の視線から逃げた。
「あーぁ……。誰かさんのせいで……歩いて帰るか…………」
康介がこれ見よがしに口にする。
「───!?…………」
「……まぁ……2時間も歩けばいいんだけどさ…」
康介の言葉に航の頬がみるみる赤くなる。
それをちゃんと理解っている康介がまだ大袈裟に追い討ちをかける。
「はぁ……風邪ひくかもな……夕方はまだ肌寒いし……まぁ……それでも……」
「分かったよ!うち寄ってけよ!」
航の大声が康介の言葉を遮った。
さっきよりまだ顔を真っ赤にして、溺れた恐怖から震えていた身体もそれを止めている。
「いいの!?」
すかさず笑顔を向ける康介に、航はグッと言葉を詰まらせるが、今更「やっぱりダメ」とも言えないし、康介がずぶ濡れになったのは紛れも無く自分の所為だと解っている。
「───その代わりっ!……絶対…変な事するなよ!!」
地面についたままだった手を康介に引かれ、身体を起こしながら航が口にする。
「…変な事って?」
ニヤニヤする康介に、耳から煙を吐くのではないかと思える程顔を真っ赤にした航が
「───変な事は変な事だよ!!!」
河原を散歩していた老人が振り向く程大きな叫び声を上げた。
小石が敷き詰められた河原で全身びっしょりになった真藤康介は、片手に子犬を抱えたままの高森航へ怒鳴りつけた。
怒鳴られている当の本人は地面に膝と子犬を抱いていない方の手を付き、康介以上にびっしょりになり顔を真っ青にしている。
「泳げないのに、川に飛び込むバカなんかお前くらいなもんだぞ!」
唇までプルプル震わせている航にそれでも容赦なく怒鳴りつける。
「……仕方ねえじゃん…………犬が……溺れてたんだから……」
小刻みに身体を震わせながら、航は何とか康介を睨みつけ言い返した。
学校からの帰り道、川に流されそうになり倒れた木にしがみついていた子犬を見つけ、航は慌てて川に飛び込んだ。
しかし、まさかそんなに深いとも思わず飛び込んだまでは良かったが、子犬を何とか助けた後子犬共々溺れかけたのだ。
そしてそれを呆気に取られて見ていた康介が慌てて助け出した……これがここに至るまでの流れでだった。
「そんで自分が溺れてりゃ意味ねぇだろっ!」
そう言われてしまえば、精一杯のプライドも底を尽き、もう言い返す言葉も気力も無い。
黙ったまま動けず震えている航の目の前まで行くと、康介は目線を合わせるようにしゃがみ込み「はぁ…」と大きなため息を吐いた。
「次、溺れてる犬見つけたら俺に言え。俺が助けてやるから……」
そしてそう言いうと航の頭を撫でた。
康介と航はこの河原からそう遠くない高校に通う幼なじみ同士だ。
保育園からの腐れ縁で、中学に入る頃には2人で連むのが当たり前になっていた。
決して手の掛からない生徒では無いが、悪さをする訳でもない。
所謂『元気が良い』高校生だ。
特に航は何をするのも全力で、時々暴走するのを康介がブレーキを掛ける。
そんな『いいコンビ』だった。
「……けど…俺…………これでバス乗んの…嫌なんだけど……」
康介がびっしょりになった制服を見ながらまた大きなため息を吐く。
そしてチラッと航へ視線を向ける……。
それに気付いた航は真っ青だった頬に微かに血の気を戻し、慌てて康介の視線から逃げた。
「あーぁ……。誰かさんのせいで……歩いて帰るか…………」
康介がこれ見よがしに口にする。
「───!?…………」
「……まぁ……2時間も歩けばいいんだけどさ…」
康介の言葉に航の頬がみるみる赤くなる。
それをちゃんと理解っている康介がまだ大袈裟に追い討ちをかける。
「はぁ……風邪ひくかもな……夕方はまだ肌寒いし……まぁ……それでも……」
「分かったよ!うち寄ってけよ!」
航の大声が康介の言葉を遮った。
さっきよりまだ顔を真っ赤にして、溺れた恐怖から震えていた身体もそれを止めている。
「いいの!?」
すかさず笑顔を向ける康介に、航はグッと言葉を詰まらせるが、今更「やっぱりダメ」とも言えないし、康介がずぶ濡れになったのは紛れも無く自分の所為だと解っている。
「───その代わりっ!……絶対…変な事するなよ!!」
地面についたままだった手を康介に引かれ、身体を起こしながら航が口にする。
「…変な事って?」
ニヤニヤする康介に、耳から煙を吐くのではないかと思える程顔を真っ赤にした航が
「───変な事は変な事だよ!!!」
河原を散歩していた老人が振り向く程大きな叫び声を上げた。
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