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君は他人
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お父さん、何をこの人は言っているの?」
医者が怜のいる個室に駆け込んでくる。
「意識が戻りましたか、どうですか気分などは?頭が痛いとか首が痛いとかありますか?」
「腕がとても痛いです。それと、右半身全体がジーンと痛みます。」
「腕はね、事故の衝撃でヒビが入っていて」
「そうですか」
「では、簡単なテストをしますね。」
医者はそう言うと、怜に紙とペンを持たせていくつかの質問をする。怜の腕のヒビはアスファルトに打ち付けられた時のもので左側。右手でペンを持つのに支障はない。怜はテキパキと答える。
「記憶もハッキリとしていそうですね。事故前後の記憶がとぎれとぎれですがいずれ戻ると思われます。」
その言葉を喜ぶべきなのかもしれないが、賢太郎は喜ぶことができない。
医者は怜と20分程会話をして部屋を出ていった。賢太郎は急いで医者を追って、怜に自分の記憶がないことを教えた。
「しばらく様子をみてみましょう、今はまだショックで記憶が曖昧なのかもしれませんから」
「分かりました」
賢太郎は医者の言葉を聞き、1週間根気よく怜を待ち続けた。
「怜さん、今日は小さいけど花を持った来たで、癒しとか元気とかそういう花言葉を持つ花なんやって」
賢太郎は、花を怜のベッド脇に置いて、一昨日買った似たような小さい小さい花束が刺さっている花瓶の水を取り替える。怜は個室で水道のある部屋で入院している。
「あの、本当にあなたは誰ですか?毎日、花や果物をくださるのはありがたいですが、あまり病室に入って来ないでくださいませんか?」
賢太郎は、ジャーと流れる水が手に当たる感覚すらも遠退いていくような感覚を覚えた。
「本当に忘れたん?怜さんが事故にあったんは僕との結婚式用にウエディングドレスを買って家に帰ろうとしてたときやねんけど」
それは、本当に何気無い言葉のつもりだった。しかし、怜には相当なショックを与えた。賢太郎は、怜には婚約者と言ってみたものの信じられてはいなかった。ただ、この前、自分の財布を見たときに、大切そうに入れていたレシートが脳裏をよぎった。物証と証言が揃った。
「気持ちの悪いことを言わないで!出て行って!」
珍しく声を荒らげる怜。
「落ち着いて、怜さん」
「触らないで!」
寄ってきた賢太郎の手を凪ぎ払う。
「ごめんなさい」
「早く、帰って!」
「あ、あ、僕は」
賢太郎はまさか怜にそんなことを言われると思ってもなかったし、慌てる。
「いいから、出て行って!一人にさせて」
「わ、わかった。」
怜が大きく取り乱しているのは言うまでもない。
怜は強い頭痛に襲われているみたいに視界がグルグル回り、焦点が定まらない。そんな感覚に陥る。一旦深呼吸をして落ち着こうとするがそれは上手くいかない。
「怜、大丈夫?大きい声が聞こえたけど」
賢太郎と同い年であり、子供もいる。ちょっと複雑だが、怜は彼女を真の姉であるかのように慕う。
「瑠衣、」
「顔色わっる、顔色最悪選手権があれば堂々3部門での優勝は確実だね。でも、病気とかそんな感じじゃないんだよなぁ」
「瑠衣、あたしって彼氏居たっけ?」
「なに聞いてるんだか、この間プロポーズも受けたってあんなに喜んでたじゃん」
怜は両手で頭を抑える。
「さっき、病室出て直ぐのところで擦れ違ったよ。賢太郎くんもやつれてたよ。もしかして、あんたたち病室で喧嘩?」
「瑠衣、実は」
賢太郎が言ったことを怜はそっくりそのまま瑠衣に言った。
「まさか、賢太郎くんとの記憶がないの?」
「あの人とは初めてあったし、初めて聞く名前だったし」
「それって凄く大変なのでは?」
怪訝そうな顔をする瑠衣。
「気持ちがついてこないの、彼に対しては恐怖心しかない」
「驚きのあまり、彼を怒鳴り付けたと。怜はいろいろあって男っていう生き物を信頼してないし恐怖の対象として見てるからなぁ」
瑠衣は普段はテキトーなことばかり言って底抜けに明るい奴だが、一応、一流企業と呼ばれる大手企業に就職して母と妻とキャリアウーマンとしての3足のわらじをはいている。それでいて、勘が鋭く分析能力も高い。
「賢太郎っていうのはどんな人なのか教えてほしい」
医者が怜のいる個室に駆け込んでくる。
「意識が戻りましたか、どうですか気分などは?頭が痛いとか首が痛いとかありますか?」
「腕がとても痛いです。それと、右半身全体がジーンと痛みます。」
「腕はね、事故の衝撃でヒビが入っていて」
「そうですか」
「では、簡単なテストをしますね。」
医者はそう言うと、怜に紙とペンを持たせていくつかの質問をする。怜の腕のヒビはアスファルトに打ち付けられた時のもので左側。右手でペンを持つのに支障はない。怜はテキパキと答える。
「記憶もハッキリとしていそうですね。事故前後の記憶がとぎれとぎれですがいずれ戻ると思われます。」
その言葉を喜ぶべきなのかもしれないが、賢太郎は喜ぶことができない。
医者は怜と20分程会話をして部屋を出ていった。賢太郎は急いで医者を追って、怜に自分の記憶がないことを教えた。
「しばらく様子をみてみましょう、今はまだショックで記憶が曖昧なのかもしれませんから」
「分かりました」
賢太郎は医者の言葉を聞き、1週間根気よく怜を待ち続けた。
「怜さん、今日は小さいけど花を持った来たで、癒しとか元気とかそういう花言葉を持つ花なんやって」
賢太郎は、花を怜のベッド脇に置いて、一昨日買った似たような小さい小さい花束が刺さっている花瓶の水を取り替える。怜は個室で水道のある部屋で入院している。
「あの、本当にあなたは誰ですか?毎日、花や果物をくださるのはありがたいですが、あまり病室に入って来ないでくださいませんか?」
賢太郎は、ジャーと流れる水が手に当たる感覚すらも遠退いていくような感覚を覚えた。
「本当に忘れたん?怜さんが事故にあったんは僕との結婚式用にウエディングドレスを買って家に帰ろうとしてたときやねんけど」
それは、本当に何気無い言葉のつもりだった。しかし、怜には相当なショックを与えた。賢太郎は、怜には婚約者と言ってみたものの信じられてはいなかった。ただ、この前、自分の財布を見たときに、大切そうに入れていたレシートが脳裏をよぎった。物証と証言が揃った。
「気持ちの悪いことを言わないで!出て行って!」
珍しく声を荒らげる怜。
「落ち着いて、怜さん」
「触らないで!」
寄ってきた賢太郎の手を凪ぎ払う。
「ごめんなさい」
「早く、帰って!」
「あ、あ、僕は」
賢太郎はまさか怜にそんなことを言われると思ってもなかったし、慌てる。
「いいから、出て行って!一人にさせて」
「わ、わかった。」
怜が大きく取り乱しているのは言うまでもない。
怜は強い頭痛に襲われているみたいに視界がグルグル回り、焦点が定まらない。そんな感覚に陥る。一旦深呼吸をして落ち着こうとするがそれは上手くいかない。
「怜、大丈夫?大きい声が聞こえたけど」
賢太郎と同い年であり、子供もいる。ちょっと複雑だが、怜は彼女を真の姉であるかのように慕う。
「瑠衣、」
「顔色わっる、顔色最悪選手権があれば堂々3部門での優勝は確実だね。でも、病気とかそんな感じじゃないんだよなぁ」
「瑠衣、あたしって彼氏居たっけ?」
「なに聞いてるんだか、この間プロポーズも受けたってあんなに喜んでたじゃん」
怜は両手で頭を抑える。
「さっき、病室出て直ぐのところで擦れ違ったよ。賢太郎くんもやつれてたよ。もしかして、あんたたち病室で喧嘩?」
「瑠衣、実は」
賢太郎が言ったことを怜はそっくりそのまま瑠衣に言った。
「まさか、賢太郎くんとの記憶がないの?」
「あの人とは初めてあったし、初めて聞く名前だったし」
「それって凄く大変なのでは?」
怪訝そうな顔をする瑠衣。
「気持ちがついてこないの、彼に対しては恐怖心しかない」
「驚きのあまり、彼を怒鳴り付けたと。怜はいろいろあって男っていう生き物を信頼してないし恐怖の対象として見てるからなぁ」
瑠衣は普段はテキトーなことばかり言って底抜けに明るい奴だが、一応、一流企業と呼ばれる大手企業に就職して母と妻とキャリアウーマンとしての3足のわらじをはいている。それでいて、勘が鋭く分析能力も高い。
「賢太郎っていうのはどんな人なのか教えてほしい」
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