思い出を探して

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半年後

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半年後


 怜は、記憶が戻らないことを除けば、腕は完治しバリバリ仕事をこなせるまでに回復。その回復ぶりには医者も驚いた。

 そして、週一程度で賢太郎に会うことにした。ただ、話はなかなか続かず、難しい。賢太郎が話すことを思い出せない自分がイヤになりかけていた。
カフェで、それぞれがコーヒーを一杯と、小さなケーキを注文する。静かな店内はコーヒーの香りが広がっている。賢太郎のお気に入りスポットで、大学時代の鉄板デート場所。
「それでな、僕が豆腐崩してたらな怜さんってば勘違いしてそこに牛乳入れたんやんか」
(どういうシチュエーションの会話なのか作者にもわからない)
「あたしがそんなことを。ごめんなさい。」
「はは、謝らんといてや 笑い話の一つやって」


「帰り道、気を付けて。すみません、僕は今日寄るところがあって」
「大丈夫です。今日はありがとうございました」


賢太郎は怜の背中が幾分小さくなるまで手を振って、はぁ とため息をついた。


賢太郎は家に帰って、ベッドに腰をおろす。そして、ふと目に入ったお気に入りの小説を手に取る。パラパラとページをめくる音が、一人に部屋に響いた。

「幸せとは、大切な人と痛みを分かち合い、ただ同じ空気を吸うだけで心が満たされていくようなことだ。」

賢太郎が鍵をかけていた心がスルスルほどけて意図も簡単に外れてしまったような不思議な感覚に襲われる。
賢太郎はパタッと本を閉じる。

そうや、苦しいのは僕だけちゃう!きっと、僕だけが怜さんにできることもあるはずや!

ただ、そんなものが見つかっているならもうとっくに解決している。
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