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2週間後
「怜さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけて」
「はーい」
今日は、賢太郎は仕事、怜は休日であった。怜は、一通りの家事を手際よく済ませると、父の家に行った。
「お父さん」
「怜、珍しいな。この間までよく家に来てたのに最近は来ないから」
怜は、賢太郎がいない日は前まではよく実家に帰って、お父さんと一緒に昼御飯を食べたりしていた。それがある意味リフレッシュであり、賢太郎についての情報を仕入れる場でもあった。
家に上がると、父は開口一番、賢太郎のことを聞いてきた。
「怜、賢太郎君がいる生活には慣れてきたか?」
「うん」
「賢太郎くんは、家でどんな感じなんだ?」
「うん、外に走りにいったり、テレビみたり、家事も積極的にやってくれるし、イビキとかも静かだし、同棲してて困ることはないよ」
「そうか、それは良かった。どうなんだ?二人で出掛けたりもするのか?」
「うーん、あんまり休日が被らないから出掛けることは少ないけど、夜一緒に映画みたりはするよ」
「そうなんだ、」
「あ、でもこの前一緒に出かけて観覧車に乗ったよ、楽しかったなぁ」
「楽しかったのか良いなぁ」
「二人はどこまでいった?」
「横浜までだけど」
「そうじゃなくて、キスをしたとか、手を繋いだとか、かれこれ同棲して半年以上になる、恋人どうしには戻ったのか?」
「手は繋いだことがあるけど、それより上は、、、それに、恋人っていうよりもなんか、友達の延長線上って感じ?」
なぜかほっとする父であった。
「どう?来てくれへん?」
「町内祭り?」
「うん、実は消防署の隣の公園やねんか、それで、僕も一応、消防代表で出んねんか」
「ぜひ、行かせていただきます!」
「手が空いたら一緒に祭りも回ろな」
一枚のチラシ。安っぽいが、面白そう。いろいろな出店も出るそうだ。
「これ、このシンデレラの劇と、メイド喫茶」
賢太郎は二つのポイントを指でトントンとする。
「お祭りに?」
もっともなことである。
「イベント的な意味合いが強いからな」
「へぇ、明日、楽しみにしてる。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
翌日
「シンデレラ役勤めます、けんちゃんです!」
舞台の前には結構人が集まっている。賢太郎はその前で、スカートをさばくのに苦労しつつ前に出る。
「王子様役の、たかちゃんです!」
高田ではなく、孝弘という名前の賢太郎の同期。高田は、メイド喫茶で忙しくしている。
劇は笑いを挟みつつ、ガラスの靴を落とすところまできた。
「シンデレラ!一体、どこに行ってしまったんだぁー。国中探して参れ!」
「はぁい、王様」
やる気のない家来の返事。
「お姉さまその一、家の外がお騒がしゅうございます」
お姉さまに名前はなく、お姉さまその一とか、その二で劇中で呼ばれている。
「シンデレラは関係のないことよ、舞踏会で、ガラスの靴を落とした人を王様が探していらっしゃるの。何でも、はいた方とご結婚ですって」
「私も、履いてみたいわ」
「ダメよ!私が履くんだから」
「お姉さまその一、私のこれを見てもまだそうおっしゃるのですか?」
シンデレラは、舞台袖に回るとガラスの靴を片方持ってくる。
「あ、あなたは!」
「この靴が目に入らぬか?我こそが、王が探すたった一人の人よ!」
いきなりあの黄門風。
「そ、そんなバカなぁ」
お姉さまその一は舞台袖にはけて、王様が現れる。
「やや!あなたは、もしやこの靴の持ち主、昨日の舞踏会で」
「はい!」
ナレーション「 靴はシンデレラにピッタリでした。キッスを交わし」
ちょうど口元が手で隠れるようにしながらキスシーンを男同士でやる。えー!という声が聞こえる。
「そして、めでたく二人は結婚しました。ずっとずっと幸せに暮らしましたとさ」
舞台上で屈強な男二人ががっちりとハグをする。(賢太郎は屈強ではないが、袖から出ている腕が超筋肉質)
その姿に、劇を見ていた人は笑う。
劇は大成功に終わった。
「みてくれてありがとー」
そういって、舞台に出た人たちが一斉に出てくる。女役の人たちは、ありがとうございました、と同時に勢いよく頭を下げて、あらかじめ緩めておいたカツラが落ちる。
これで、小学生の男子にはバカウケだ。
「シンデレラ、はまり役だったな!」
先輩たちからいじられる。
「高田先輩でも良かったんじゃないですか?」
「いや、男がやるから面白いんだよ!じゃ、メイドな、次」
「え?ちょっと、メイドは聞いてないですよ?」
「シンデレラがメイドやってるって面白いじゃん、それに、いける!猫猿、うん、いけるわ」
「な、何がですか?」
「とりま、着てみ」
「え、えぇ」
更衣室に案内させられ、結局着替えることに。
「こんなのお客さん離れていきますよ」
カツラまで被った賢太郎は、案外かわいらしい。そうだった、賢太郎はクリッとした目に、ちょこんと控えめな鼻と口を持つ童顔。
「ぜんぜん似合ってねぇよ」
孝弘に言われる。
「賢太郎、悪いことは言わん早く脱いだ方がいい」
他の先輩、同期からにたようなことを言われる。
(なんか良い!)(結構かわいい)(これはイイ)
みんなの本心はこっちである。
「じゃぁ、もう脱ぎますね」
「待て、そのままでイイ、やっぱりこういうのもいた方が」
ここにいるなかの一番の先輩にそう言われて、結局脱がなかった。
「け、賢太郎さん?」
「すみません、ちょっとメイドの方も手伝うことになって、ハハ」
怜には見られたくなかったー!
「似合ってて、可愛いい」
あんまり可愛いと言われることはないが、怜に言われたら無性に嬉しくなる。
「ハハ、やめてくださいよ」
「シンデレラも良かったよ、」
シンデレラということは、孝弘とのキッスまで見られたということか!
「ありがとう」
苦笑いだ。しかし、怜は特に気にしていないらしい。
「あの、胸ってどうなってるんですか?」
小さい声。
「ストッキングを丸めていれてて、触ってみますか?」
怜はツンツンと触る。
「本当だ、」
「けんちゃん、こっちよろしく」
どんどん客が入ってくる。こんなことをしている場合ではないのだ。
「は、はぁい、ただいま!怜さん、ホンマにゴメン、すぐに終わらせるから、多分やけど後30分から一時間くらいでピーク過ぎるし」
「はい、あの、私もここで昼御飯を食べていいかな?」
「うん、適当に空いてる席、って言ってもないか、ちょっと待っててな、」
横で、
「行ってらっしゃいませ、ご主人様!」
という声が聞こえる。つまり、席が一つ空いたというわけだ。
「あの、弘中先輩、こちら一名で」
見送りを済ませた高田の一つ上の先輩に声をかける。
「ダメじゃん、けんちゃんです、そうじゃなくて、おかえりなさいませお嬢様でしょ!」
「すみません、おかえりなさいませ、お嬢様!」
怜もこれには苦笑いだ。
「お嬢様、何になさいますか?オススメは愛情のふわとろ卵のオムライスです!」
全力でメイド業に勤しむ賢太郎。怜が相手でもその態度は変えない。
「あ、じゃぁそれで」
「かしこまりました、お嬢様」
連結させた特設テントの中、メイド喫茶でありながら家族連れも多い。
「ご主人様、お水でございます」
そんな中で高田も忙しく働く。
そんな中でハプニングは、起きた。
「あの、メイドさん」
高校生グループに声をかけられる。
「はい、けんちゃんです!」
「追加で、ポテト」
「はーい、わかりました、ご主人様」
女性陣のなかで賢太郎は目立ちすぎることもなくメイドを勤める。賢太郎は追加でのポテトの注文を受けて、厨房へ行こうとしたとき、目の前で両手が水でふさがった高田が転けそうになる。反射的に高田が転けないようにするためにパッと高田の方に賢太郎は寄る。
「だ」いじょうぶですか?
すべてを言い切ることは出来ない。
がしゃんと水がこぼれる音がする。そして、高田の顔が驚くほど近くにあって、口は塞がれている。
「ワ!すみません!」
いろんな視線を感じる。
漫画でしか見たことなぇ、うわぁ、わざとだろ?
なんかいいもん見れたわ、
最低
賢太郎は怜の方を見る。怜は席を立ち、騒ぎを知らぬふりをして店を出ていった。
「何があったの?」
弘中がそう思うのも無理はない。
「私が水をこぼしちゃって」
紙コップだったので、ガラスが割れるとかそんな心配はない。したも土だ、被害は最小限でとどまった。
「あっそう、けんちゃんは、こっち手伝って」
「はい」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
賢太郎は結局、仕事に集中できず、弘中にもろもろの事情の説明を行い、一旦休憩を取らせてもらった。メイド服を脱いで、公園内で怜を探す。だが、どれだけ探しても怜は、居なかった。メイド喫茶は、4時30分で終了した。
「高田先輩、今日は本当にごめんなさい、決してそういうつもりはありませんでした。」
「私の方こそ、ごめんね。その、あの件について。それと、もうこの話はやめよう。あれは事故ってことで弘中先輩にもう言ったから。」
「はい、わかりました」
「勇元は、早く怜のところ言ってあげな、私からはもう電話で事の経緯は、説明したから。分かってくれたっぽかったし」
「ありがとうございます。僕からの電話やメッセージは見ていないようだったので」
「ほら、急いで帰んな、後片付けはやっとくからさ」
「いや、でも、片付けは僕も」
「早く帰りなさい」
「わかりました」
賢太郎は、家に帰る。
「ただいま」
パチン!痛々しい音が家に響く。涙目をした怜。生まれて初めて、伝わるジーンとした痛みを伴う手のひらの感覚。
「賢太郎さん、今日、高田先輩とキスしてましたよね?」
高田が言っていたのと違う。理解したと、そうではなかったのか?
「本当にごめん。あれは、偶然起こった事故で」
「事故であんな風になるわけがないじゃないですか」
「僕も驚いた、高田先輩にも謝ったし、上にも事故で報告した」
「そういうことを聞いているのではありません、賢太郎さんは、あのとき何にも思わなかったんですか?だいたい、私が席を立ったことには気づきましたよね?それに、おかしくないですか?あんな事が起きたのに故意じゃないって」
私、どうしたんだ?事故で、実際に見てて故意じゃないって分かってるのに、どうしても許せない。賢太郎がキスしたこともその相手が高田だったことも全部、怜にとってはいやだった。
「誤解されるような態度をとって悪かった、でも、本当にあれは事故で、怜さん分かって」
「そんな風に言われて、はいはい、分かりましたなんてなるわけがないじゃないですか!」
「本当に自分でも信じられへんし、怜さん、ホンマにそういうつもりはなかったんやって」
「そういうつもりがなかったとしても、どうしても理解できません!もう、話さないでください!ごめんなさい、私はお風呂行ってきます」
「待って」
賢太郎がどれだけ弁解を試みてもすべては無駄だった。
どうすれば良いんだろう?
「怜さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけて」
「はーい」
今日は、賢太郎は仕事、怜は休日であった。怜は、一通りの家事を手際よく済ませると、父の家に行った。
「お父さん」
「怜、珍しいな。この間までよく家に来てたのに最近は来ないから」
怜は、賢太郎がいない日は前まではよく実家に帰って、お父さんと一緒に昼御飯を食べたりしていた。それがある意味リフレッシュであり、賢太郎についての情報を仕入れる場でもあった。
家に上がると、父は開口一番、賢太郎のことを聞いてきた。
「怜、賢太郎君がいる生活には慣れてきたか?」
「うん」
「賢太郎くんは、家でどんな感じなんだ?」
「うん、外に走りにいったり、テレビみたり、家事も積極的にやってくれるし、イビキとかも静かだし、同棲してて困ることはないよ」
「そうか、それは良かった。どうなんだ?二人で出掛けたりもするのか?」
「うーん、あんまり休日が被らないから出掛けることは少ないけど、夜一緒に映画みたりはするよ」
「そうなんだ、」
「あ、でもこの前一緒に出かけて観覧車に乗ったよ、楽しかったなぁ」
「楽しかったのか良いなぁ」
「二人はどこまでいった?」
「横浜までだけど」
「そうじゃなくて、キスをしたとか、手を繋いだとか、かれこれ同棲して半年以上になる、恋人どうしには戻ったのか?」
「手は繋いだことがあるけど、それより上は、、、それに、恋人っていうよりもなんか、友達の延長線上って感じ?」
なぜかほっとする父であった。
「どう?来てくれへん?」
「町内祭り?」
「うん、実は消防署の隣の公園やねんか、それで、僕も一応、消防代表で出んねんか」
「ぜひ、行かせていただきます!」
「手が空いたら一緒に祭りも回ろな」
一枚のチラシ。安っぽいが、面白そう。いろいろな出店も出るそうだ。
「これ、このシンデレラの劇と、メイド喫茶」
賢太郎は二つのポイントを指でトントンとする。
「お祭りに?」
もっともなことである。
「イベント的な意味合いが強いからな」
「へぇ、明日、楽しみにしてる。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
翌日
「シンデレラ役勤めます、けんちゃんです!」
舞台の前には結構人が集まっている。賢太郎はその前で、スカートをさばくのに苦労しつつ前に出る。
「王子様役の、たかちゃんです!」
高田ではなく、孝弘という名前の賢太郎の同期。高田は、メイド喫茶で忙しくしている。
劇は笑いを挟みつつ、ガラスの靴を落とすところまできた。
「シンデレラ!一体、どこに行ってしまったんだぁー。国中探して参れ!」
「はぁい、王様」
やる気のない家来の返事。
「お姉さまその一、家の外がお騒がしゅうございます」
お姉さまに名前はなく、お姉さまその一とか、その二で劇中で呼ばれている。
「シンデレラは関係のないことよ、舞踏会で、ガラスの靴を落とした人を王様が探していらっしゃるの。何でも、はいた方とご結婚ですって」
「私も、履いてみたいわ」
「ダメよ!私が履くんだから」
「お姉さまその一、私のこれを見てもまだそうおっしゃるのですか?」
シンデレラは、舞台袖に回るとガラスの靴を片方持ってくる。
「あ、あなたは!」
「この靴が目に入らぬか?我こそが、王が探すたった一人の人よ!」
いきなりあの黄門風。
「そ、そんなバカなぁ」
お姉さまその一は舞台袖にはけて、王様が現れる。
「やや!あなたは、もしやこの靴の持ち主、昨日の舞踏会で」
「はい!」
ナレーション「 靴はシンデレラにピッタリでした。キッスを交わし」
ちょうど口元が手で隠れるようにしながらキスシーンを男同士でやる。えー!という声が聞こえる。
「そして、めでたく二人は結婚しました。ずっとずっと幸せに暮らしましたとさ」
舞台上で屈強な男二人ががっちりとハグをする。(賢太郎は屈強ではないが、袖から出ている腕が超筋肉質)
その姿に、劇を見ていた人は笑う。
劇は大成功に終わった。
「みてくれてありがとー」
そういって、舞台に出た人たちが一斉に出てくる。女役の人たちは、ありがとうございました、と同時に勢いよく頭を下げて、あらかじめ緩めておいたカツラが落ちる。
これで、小学生の男子にはバカウケだ。
「シンデレラ、はまり役だったな!」
先輩たちからいじられる。
「高田先輩でも良かったんじゃないですか?」
「いや、男がやるから面白いんだよ!じゃ、メイドな、次」
「え?ちょっと、メイドは聞いてないですよ?」
「シンデレラがメイドやってるって面白いじゃん、それに、いける!猫猿、うん、いけるわ」
「な、何がですか?」
「とりま、着てみ」
「え、えぇ」
更衣室に案内させられ、結局着替えることに。
「こんなのお客さん離れていきますよ」
カツラまで被った賢太郎は、案外かわいらしい。そうだった、賢太郎はクリッとした目に、ちょこんと控えめな鼻と口を持つ童顔。
「ぜんぜん似合ってねぇよ」
孝弘に言われる。
「賢太郎、悪いことは言わん早く脱いだ方がいい」
他の先輩、同期からにたようなことを言われる。
(なんか良い!)(結構かわいい)(これはイイ)
みんなの本心はこっちである。
「じゃぁ、もう脱ぎますね」
「待て、そのままでイイ、やっぱりこういうのもいた方が」
ここにいるなかの一番の先輩にそう言われて、結局脱がなかった。
「け、賢太郎さん?」
「すみません、ちょっとメイドの方も手伝うことになって、ハハ」
怜には見られたくなかったー!
「似合ってて、可愛いい」
あんまり可愛いと言われることはないが、怜に言われたら無性に嬉しくなる。
「ハハ、やめてくださいよ」
「シンデレラも良かったよ、」
シンデレラということは、孝弘とのキッスまで見られたということか!
「ありがとう」
苦笑いだ。しかし、怜は特に気にしていないらしい。
「あの、胸ってどうなってるんですか?」
小さい声。
「ストッキングを丸めていれてて、触ってみますか?」
怜はツンツンと触る。
「本当だ、」
「けんちゃん、こっちよろしく」
どんどん客が入ってくる。こんなことをしている場合ではないのだ。
「は、はぁい、ただいま!怜さん、ホンマにゴメン、すぐに終わらせるから、多分やけど後30分から一時間くらいでピーク過ぎるし」
「はい、あの、私もここで昼御飯を食べていいかな?」
「うん、適当に空いてる席、って言ってもないか、ちょっと待っててな、」
横で、
「行ってらっしゃいませ、ご主人様!」
という声が聞こえる。つまり、席が一つ空いたというわけだ。
「あの、弘中先輩、こちら一名で」
見送りを済ませた高田の一つ上の先輩に声をかける。
「ダメじゃん、けんちゃんです、そうじゃなくて、おかえりなさいませお嬢様でしょ!」
「すみません、おかえりなさいませ、お嬢様!」
怜もこれには苦笑いだ。
「お嬢様、何になさいますか?オススメは愛情のふわとろ卵のオムライスです!」
全力でメイド業に勤しむ賢太郎。怜が相手でもその態度は変えない。
「あ、じゃぁそれで」
「かしこまりました、お嬢様」
連結させた特設テントの中、メイド喫茶でありながら家族連れも多い。
「ご主人様、お水でございます」
そんな中で高田も忙しく働く。
そんな中でハプニングは、起きた。
「あの、メイドさん」
高校生グループに声をかけられる。
「はい、けんちゃんです!」
「追加で、ポテト」
「はーい、わかりました、ご主人様」
女性陣のなかで賢太郎は目立ちすぎることもなくメイドを勤める。賢太郎は追加でのポテトの注文を受けて、厨房へ行こうとしたとき、目の前で両手が水でふさがった高田が転けそうになる。反射的に高田が転けないようにするためにパッと高田の方に賢太郎は寄る。
「だ」いじょうぶですか?
すべてを言い切ることは出来ない。
がしゃんと水がこぼれる音がする。そして、高田の顔が驚くほど近くにあって、口は塞がれている。
「ワ!すみません!」
いろんな視線を感じる。
漫画でしか見たことなぇ、うわぁ、わざとだろ?
なんかいいもん見れたわ、
最低
賢太郎は怜の方を見る。怜は席を立ち、騒ぎを知らぬふりをして店を出ていった。
「何があったの?」
弘中がそう思うのも無理はない。
「私が水をこぼしちゃって」
紙コップだったので、ガラスが割れるとかそんな心配はない。したも土だ、被害は最小限でとどまった。
「あっそう、けんちゃんは、こっち手伝って」
「はい」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
賢太郎は結局、仕事に集中できず、弘中にもろもろの事情の説明を行い、一旦休憩を取らせてもらった。メイド服を脱いで、公園内で怜を探す。だが、どれだけ探しても怜は、居なかった。メイド喫茶は、4時30分で終了した。
「高田先輩、今日は本当にごめんなさい、決してそういうつもりはありませんでした。」
「私の方こそ、ごめんね。その、あの件について。それと、もうこの話はやめよう。あれは事故ってことで弘中先輩にもう言ったから。」
「はい、わかりました」
「勇元は、早く怜のところ言ってあげな、私からはもう電話で事の経緯は、説明したから。分かってくれたっぽかったし」
「ありがとうございます。僕からの電話やメッセージは見ていないようだったので」
「ほら、急いで帰んな、後片付けはやっとくからさ」
「いや、でも、片付けは僕も」
「早く帰りなさい」
「わかりました」
賢太郎は、家に帰る。
「ただいま」
パチン!痛々しい音が家に響く。涙目をした怜。生まれて初めて、伝わるジーンとした痛みを伴う手のひらの感覚。
「賢太郎さん、今日、高田先輩とキスしてましたよね?」
高田が言っていたのと違う。理解したと、そうではなかったのか?
「本当にごめん。あれは、偶然起こった事故で」
「事故であんな風になるわけがないじゃないですか」
「僕も驚いた、高田先輩にも謝ったし、上にも事故で報告した」
「そういうことを聞いているのではありません、賢太郎さんは、あのとき何にも思わなかったんですか?だいたい、私が席を立ったことには気づきましたよね?それに、おかしくないですか?あんな事が起きたのに故意じゃないって」
私、どうしたんだ?事故で、実際に見てて故意じゃないって分かってるのに、どうしても許せない。賢太郎がキスしたこともその相手が高田だったことも全部、怜にとってはいやだった。
「誤解されるような態度をとって悪かった、でも、本当にあれは事故で、怜さん分かって」
「そんな風に言われて、はいはい、分かりましたなんてなるわけがないじゃないですか!」
「本当に自分でも信じられへんし、怜さん、ホンマにそういうつもりはなかったんやって」
「そういうつもりがなかったとしても、どうしても理解できません!もう、話さないでください!ごめんなさい、私はお風呂行ってきます」
「待って」
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