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告白
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東京に戻ってきた。どうして東京かって、東京で彼らは色々な取材や検査に駆り出されていたからだ。そして、今日は内閣総理大臣と面会したのであった。
「疲れたね」
肩に力を入れすぎたか、翠はグーッと伸びをする。
「案外、総理っていうのは気さくなおじさんなんだな」
それとは対照的に、蒼士の足取りは軽い。
「とかなんとかいって、最初はガチガチだったくせに。」
「いやいや、そんなことなかっただろう?な、琥珀」
「そんなことはないことはないと思ったけど?」
ようは、蒼士はガチガチだったということだ。
「ここが、あたしん家」
だいどう の暖簾がかかった店、そこは紛れもなく 料亭だいどう だ。
「家なの?」
「家も併設されてるんだ」
「へぇー」
「特別座敷を用意してるから」
「それは楽しみだなぁ」
翠は中にはいると、わくわくが止まらないようだ。すぐに、案内される。
「すぐに、料理は来るから」
琥珀は一旦席を離れる。
「な、翠って何が好きなんだ?」
案外、好きな食べ物を聞いたことがなかった。
「こんにゃくと、もやし」
「なんでだろう、翠が言うと意外な感じがしない」
「紅葉と蒼士は?」
「あたしは、たらこ」
「俺は梅干しと肉」
なかなか好きな食べ物を聞かれて肉は分かるが、たらこと梅干しは珍しいのではないのではないだろうか?
「はい、だいどう自慢の料理だよ」
小鉢がチョコチョコっと並べられる。
「うわ~、すっごい、なんか綺麗!」
「では、我々の諸々の何とかを賞してカンパーイ」
「琥珀の乾杯独特すぎだな」
オレンジジュースが入ったグラスが小さい音をたてる。
美味しい。それ以上の言葉を思い付けない。ハズレが存在しない。肉も寿司も、野菜も何をとっても完璧!ノンアルコールだが、気分が高まる。
「もう、帰るなんて考えられないな!」
「楽しかったもんね」
「あれ、覚えてる?無人島でさゴキブリが」
「ちょっと、翠、食事中にやめてよぉそんな話」
笑い声が、この空間を満たす。
料理も終盤に差し掛かり、いよいよ別れの時が近づいてきた。
「ね、紅葉、ちょっと良い?」
「うん?」
紅葉は琥珀に誘われるがまま、一旦座敷から出る。
「どうしたの?」
「実は、、翠に告ろうって思って」
耳打ちされて、普通なら驚いても良さそうだけど、紅葉は特に動揺することはなかった。
「やっぱり、好きなんだ」
「え?やっぱり?」
「なんとなく、好きなんだろうなぁって思ってたから」
フーッと琥珀の顔が赤くなっていった。
「あ、あのさ、紅葉は蒼士とか好きとかならないの?」
この二人の関係は琥珀と翠の間では実は付き合っているのでは?という噂が出ていた。船の上の二人の間だけで。
「え?なるわけないじゃん。アイツは確かに良い奴だけど、付き合うとか想像するだけでゾワッとする。」
「あ、、そうだったんだ」
なんか落胆された。
「誤解されてた?もしかして」
「いやぁ、そんなことは、、あるかもしれない」
やっぱりそうなのか。実は、ネットでもちょっと話題になっていた。本当にそんなことは一切ないというのに。
「それで?いつ、告白するの?蒼士なんか一緒に居たら邪魔でしょ、どっかにアイツはつれていくから」
パチンとウインクする。邪魔と言われた蒼士は若干可愛そうな気もするが、今までの行動からいって妥当だろう。
「、、東京駅で最後に言おうかなって」
「ロマンチック!良いじゃん。応援するとしかいえないけど」
小さく胸の前でガッツポーズ
「やってみる決心がついた」
同時刻 男二人の座敷では
「恋って具体的にどういうことなのか前に調べてみたことがあってさ、友達に相談されたから。恋って、心拍数の上昇、火照り、発汗などの症状を伴うことが多いんだって、心理的な面で言うと独占欲」
「わざわざそんなのを調べるとは、翠らしいな」
何というか、よく知られたことをあえて調べるみたいなところが。
「曖昧なことは言えないからね」
「で、結局、良いアドバイスは出来たのか?」
翠は頭を横に振る。
「ムズいよな、恋愛をアドバイスするってのは」
「だけど、それで気づいたことがあるんだ」
「うん?」
「きっと、僕は、琥珀が好きなんだ」
思わず口に含んでいたジュースを吹きそうになるがギリギリで耐える。
「い、いきなりだな、でも何で好きになったんだ?まぁ、琥珀は頼りになるし、美人だが」
「僕は、妹のためと思って色々なことをやってきた。大きな声で言えないけれど、実は僕、みんなみたいに選考会を通過した訳じゃないんだ。全国模試を先輩の薦めで受けてその結果だけで出せてもらえたようなものだから。」
「そうだったんだ、だから、あのカメラの話とかあんまりピンときてなさそうだったんだな。んで、それがどう関係あるんだ?」
「つまり、僕が言いたいのは、琥珀のためって思えて、考えるよりも先に体が動くっていうか、その、心拍数の上昇と手汗をかいたり」
なんとなく、分かった。翠は、過去に調べた恋の症状と、その類似症状が自分にも出ているから、琥珀を好きなのかもしれないといっているのだ。
「いっそのこと、告れ!旅の恥は掻き捨てって言うだろ?」
「それは、旅先には知っている人はいないという前提で、、」
「でも、今日を逃したら言える機会無いだろ?」
「、、そうかも」
「俺に任せろ、紅葉はどっかに連れていくから、アイツなんか居たら絶対邪魔するだろ」
蒼士は、こちょんと器に盛られた飾り切りされた人参に箸を伸ばす。
そうだね とは同意しにくそうな翠は、ジュースを飲む。
「はーい、戻ってきたよ」
さっきの事はわずか数分の話である。
「何しゃべったんだ?二人で」
耳の先がほんのりピンクになった琥珀は、顔の前に人差し指を立てて
「ナイショ」
と小声で言った。なんか、興奮させられる。
「食後の、デザートを持ってくる」
そういうと、琥珀はすぐに季節の果物が綺麗にカットされたものを持ってきた。
「わぁ、ありがとう!」
華やかな色が一人一人の前に並び、一瞬にして目を奪われる。そして、一色一色消えていく。
「ごちそうさまでした」
あっという間に大都会は夜の装いをまとい、行き交う人の足音が近づいてくる。近いけど知らない誰かと一緒に帰る そんな人が溢れている。そして、相変わらず町が明るすぎて、一番星すら見えない。皮肉なことだ。社会から切り離された一角。無人島、船の上、当然にあったものが、ここでは当たり前のようにない。
東京駅に着いて、
「もう、本当にお別れなんだね」
ガシッと握手を交わした紅葉と琥珀。心強い仲間だった。そして、唯一無二の親友。
「本当にあっという間だったよ、じゃあね!」
胸の前で手を振る琥珀。蒼士と紅葉は、「元気でな!」「また、会おう!」と言いながら遠ざかっていく。
「蒼士、結羽へのお土産買いにいこうよ」
「あ、そういや準決まではいったんだっけ?」
「そうそう!」
「まだ、時間はあるな。色々、見て回ろうぜ」
「うん!」
二人が、離れて東京駅には翠と琥珀が残される。蒼士と紅葉が気を使って離れたのは言うまでもない。
「僕もそろそろ、行くよ。」
「あ、うん、」
「これを、受け取って」
翠の手には、封筒があった。
「見ても良い?」
「うん、」
琥珀は、封筒を開けて、便箋を見て、琥珀は、一旦目をつぶる。
「大堂 琥珀
僕の気持ちです。
好きです。
貴女と、同じ船に乗って、同じ旅を出来て僕は、幸運でした。きっと、この夏を忘れることはないでしょう。
また、だいどう に行きます。必ず。
加賀 翠」
いざ渡すとなると緊張するが、もう琥珀の手のなかにあるラブレター。
琥珀は、ゆっくりと、目を開ける。
そして、ゆっくりと、ラブレターを大事そうに、胸の前に持ってくる。
「あたしも、好きです」
お互い、恥ずかしくて、でも、清々しくて、顔を見合わせるようにして、ニコッと笑う。
「翠、」
琥珀が手招きするようにして、翠を呼ぶ。翠は、それに誘われて、琥珀に近づく。
フーッと体が近づいて、琥珀の体温が伝わってくる
「翠のおかげで、色々出来た、ありがとう!翠がペアで、あたしは本当にラッキーだったよ」
翠がペアじゃなかったら、カミングアウトはいつになっていたかわからない。ひょっとすると、今も昔のままだったかも。
「僕もだよ」
優しい声が、耳元で聞こえる。
「また、連絡して」
「必ず」
「お兄ちゃん!!」
何度も聞きなれた声、友希の声だ。走ってくる。
バッと二人の距離がひらく。やはり、恥ずかしい。
「友希!」
翠は、そのまま走ってきた友希を抱き抱える。
「お兄ちゃん、さっきギューって琥珀としてた
ね」
琥珀は顔を赤くするが、翠はそうでもないらしい。
「僕は、琥珀が、琥珀は僕が好きだから」
「琥珀ちゃん、、」
友希は生で見るのは初めてだ。
「こんばんは!お兄ちゃんがお世話になりました」
琥珀と翠は笑った。
「こんばんは、友希ちゃん」
「友希ってよんで!」
「友希、またテレビ電話しようね。もう、帰っちゃうなんて残念だなぁ」
「お兄ちゃん、降ろして」
翠は、友希をおろす。友希は、琥珀にスゴく懐いていた。
「好きな食べ物ある?」
「う~ん、トマトかな」
「友希もトマト、好き」
友希と琥珀はちょっとお喋りをして、本当に帰る時間が来た。
「友希、翠くん、そろそろ時間ですよ」
「わざわざ、ありがとうございます」
施設のおばさんがこちらに歩いてくる。
「バイバイ、翠、友希」
「バイバイ、琥珀」
琥珀から10数メートル離れてから、翠は振り返る。そして、顎の下に手を持ってきて人差し指と親指の間に顎が入るようにして手を下にすると同時に、人差し指の先と親指の先をくっつける。
その合図を受け取った琥珀は、片手ずつ人差し指のと親指を下にさげると同時にくっつけるのを2度繰り返す。
お互い、顔が赤くなる。
「ス キ ダ ヨ」
「ワ タ シ モ」
(二人とも、手話ができる)
告白は大成功に終わった。
「お兄ちゃん、はじめての彼女が出来たんだよ」
「まさか、さっきの?やるねぇ、翠くん」
「お兄ちゃんね、好きなんだって」
新幹線の中はこの話題で持ちきりだった。静かな車内に友希の明るい声が響く。これは、これで、なかなかの拷問だ。
その頃、蒼士と紅葉は
「いっぱいありすぎて迷うな。な、紅葉は何が良いと思う?」
東京駅にはお土産やさんが多すぎて、結羽への土産が決まらないのだ。
「う~ん、これなんかどう?」
東京ドナナと書かれた箱を指差す紅葉。
「え?マジで?こっちの方がよくない?」
そのとなり、茶色の タマゴま と書かれた箱を蒼士は見る。この男、さっぱりと何でもあっという間に決めれるわりには、お土産は決められないらしい。それに、ウインドウショッピングも好きだそうだ。
「じゃぁ、両方買ってクラスメイトや先生に配ろう!」
「その考え良いな! だけどそれじゃ鈴木の特別感が」
「これなんかどう?」
「えぇ?それはないだろ?」
「はぁ?そんな言い方しないでよ」
なんだかんだ言いながら、結局、蒼士と紅葉、それぞれが結羽が喜びそうなものを選んで買った。いつかの、サプライズをするという蒼士の宣言を実現するために。
「結羽、絶対喜ぶよ!」
「だよな、」
新幹線に乗り込むと、肩の力が一気に抜ける。やっと帰れる。
「やっと帰れるな」
「私も、同じこと思ってた」
「明日から、学校かぁ」
大きくため息をつく蒼士。
「それは、仕方ない」
なにか思い出したように、ムクッと体を立てて、紅葉にトントンとする。
「あ、そういや、翠が琥珀のこと好きだったって知ってたか?」
あ、そうだった。蒼士は、今日その事を知ったのであった。
「知ってたよ、琥珀も翠が好きなんでしょ。告白、成功したのかな?」
「え!そうだったのか!マジかぁ、俺だけもしかして時代遅れか?」
そう言って、頭に手を持っていく蒼士。ラインの着信音。
「きっと、告白は成功したんじゃない?」
ラインを開ける。青色に白色の吹き出し。
「応援してくれてありがとう
翠から好きだって言ってくれて、自分の気持ちも伝えられたし良かった」
琥珀のラインであることは言うまでもない。
「うお!マジか!やったな」
紅葉が手を出す。ハイタッチ
この二人は、相当仲が良いのだ。いや、この旅を通して尚、仲良しになったか。
「疲れたね」
肩に力を入れすぎたか、翠はグーッと伸びをする。
「案外、総理っていうのは気さくなおじさんなんだな」
それとは対照的に、蒼士の足取りは軽い。
「とかなんとかいって、最初はガチガチだったくせに。」
「いやいや、そんなことなかっただろう?な、琥珀」
「そんなことはないことはないと思ったけど?」
ようは、蒼士はガチガチだったということだ。
「ここが、あたしん家」
だいどう の暖簾がかかった店、そこは紛れもなく 料亭だいどう だ。
「家なの?」
「家も併設されてるんだ」
「へぇー」
「特別座敷を用意してるから」
「それは楽しみだなぁ」
翠は中にはいると、わくわくが止まらないようだ。すぐに、案内される。
「すぐに、料理は来るから」
琥珀は一旦席を離れる。
「な、翠って何が好きなんだ?」
案外、好きな食べ物を聞いたことがなかった。
「こんにゃくと、もやし」
「なんでだろう、翠が言うと意外な感じがしない」
「紅葉と蒼士は?」
「あたしは、たらこ」
「俺は梅干しと肉」
なかなか好きな食べ物を聞かれて肉は分かるが、たらこと梅干しは珍しいのではないのではないだろうか?
「はい、だいどう自慢の料理だよ」
小鉢がチョコチョコっと並べられる。
「うわ~、すっごい、なんか綺麗!」
「では、我々の諸々の何とかを賞してカンパーイ」
「琥珀の乾杯独特すぎだな」
オレンジジュースが入ったグラスが小さい音をたてる。
美味しい。それ以上の言葉を思い付けない。ハズレが存在しない。肉も寿司も、野菜も何をとっても完璧!ノンアルコールだが、気分が高まる。
「もう、帰るなんて考えられないな!」
「楽しかったもんね」
「あれ、覚えてる?無人島でさゴキブリが」
「ちょっと、翠、食事中にやめてよぉそんな話」
笑い声が、この空間を満たす。
料理も終盤に差し掛かり、いよいよ別れの時が近づいてきた。
「ね、紅葉、ちょっと良い?」
「うん?」
紅葉は琥珀に誘われるがまま、一旦座敷から出る。
「どうしたの?」
「実は、、翠に告ろうって思って」
耳打ちされて、普通なら驚いても良さそうだけど、紅葉は特に動揺することはなかった。
「やっぱり、好きなんだ」
「え?やっぱり?」
「なんとなく、好きなんだろうなぁって思ってたから」
フーッと琥珀の顔が赤くなっていった。
「あ、あのさ、紅葉は蒼士とか好きとかならないの?」
この二人の関係は琥珀と翠の間では実は付き合っているのでは?という噂が出ていた。船の上の二人の間だけで。
「え?なるわけないじゃん。アイツは確かに良い奴だけど、付き合うとか想像するだけでゾワッとする。」
「あ、、そうだったんだ」
なんか落胆された。
「誤解されてた?もしかして」
「いやぁ、そんなことは、、あるかもしれない」
やっぱりそうなのか。実は、ネットでもちょっと話題になっていた。本当にそんなことは一切ないというのに。
「それで?いつ、告白するの?蒼士なんか一緒に居たら邪魔でしょ、どっかにアイツはつれていくから」
パチンとウインクする。邪魔と言われた蒼士は若干可愛そうな気もするが、今までの行動からいって妥当だろう。
「、、東京駅で最後に言おうかなって」
「ロマンチック!良いじゃん。応援するとしかいえないけど」
小さく胸の前でガッツポーズ
「やってみる決心がついた」
同時刻 男二人の座敷では
「恋って具体的にどういうことなのか前に調べてみたことがあってさ、友達に相談されたから。恋って、心拍数の上昇、火照り、発汗などの症状を伴うことが多いんだって、心理的な面で言うと独占欲」
「わざわざそんなのを調べるとは、翠らしいな」
何というか、よく知られたことをあえて調べるみたいなところが。
「曖昧なことは言えないからね」
「で、結局、良いアドバイスは出来たのか?」
翠は頭を横に振る。
「ムズいよな、恋愛をアドバイスするってのは」
「だけど、それで気づいたことがあるんだ」
「うん?」
「きっと、僕は、琥珀が好きなんだ」
思わず口に含んでいたジュースを吹きそうになるがギリギリで耐える。
「い、いきなりだな、でも何で好きになったんだ?まぁ、琥珀は頼りになるし、美人だが」
「僕は、妹のためと思って色々なことをやってきた。大きな声で言えないけれど、実は僕、みんなみたいに選考会を通過した訳じゃないんだ。全国模試を先輩の薦めで受けてその結果だけで出せてもらえたようなものだから。」
「そうだったんだ、だから、あのカメラの話とかあんまりピンときてなさそうだったんだな。んで、それがどう関係あるんだ?」
「つまり、僕が言いたいのは、琥珀のためって思えて、考えるよりも先に体が動くっていうか、その、心拍数の上昇と手汗をかいたり」
なんとなく、分かった。翠は、過去に調べた恋の症状と、その類似症状が自分にも出ているから、琥珀を好きなのかもしれないといっているのだ。
「いっそのこと、告れ!旅の恥は掻き捨てって言うだろ?」
「それは、旅先には知っている人はいないという前提で、、」
「でも、今日を逃したら言える機会無いだろ?」
「、、そうかも」
「俺に任せろ、紅葉はどっかに連れていくから、アイツなんか居たら絶対邪魔するだろ」
蒼士は、こちょんと器に盛られた飾り切りされた人参に箸を伸ばす。
そうだね とは同意しにくそうな翠は、ジュースを飲む。
「はーい、戻ってきたよ」
さっきの事はわずか数分の話である。
「何しゃべったんだ?二人で」
耳の先がほんのりピンクになった琥珀は、顔の前に人差し指を立てて
「ナイショ」
と小声で言った。なんか、興奮させられる。
「食後の、デザートを持ってくる」
そういうと、琥珀はすぐに季節の果物が綺麗にカットされたものを持ってきた。
「わぁ、ありがとう!」
華やかな色が一人一人の前に並び、一瞬にして目を奪われる。そして、一色一色消えていく。
「ごちそうさまでした」
あっという間に大都会は夜の装いをまとい、行き交う人の足音が近づいてくる。近いけど知らない誰かと一緒に帰る そんな人が溢れている。そして、相変わらず町が明るすぎて、一番星すら見えない。皮肉なことだ。社会から切り離された一角。無人島、船の上、当然にあったものが、ここでは当たり前のようにない。
東京駅に着いて、
「もう、本当にお別れなんだね」
ガシッと握手を交わした紅葉と琥珀。心強い仲間だった。そして、唯一無二の親友。
「本当にあっという間だったよ、じゃあね!」
胸の前で手を振る琥珀。蒼士と紅葉は、「元気でな!」「また、会おう!」と言いながら遠ざかっていく。
「蒼士、結羽へのお土産買いにいこうよ」
「あ、そういや準決まではいったんだっけ?」
「そうそう!」
「まだ、時間はあるな。色々、見て回ろうぜ」
「うん!」
二人が、離れて東京駅には翠と琥珀が残される。蒼士と紅葉が気を使って離れたのは言うまでもない。
「僕もそろそろ、行くよ。」
「あ、うん、」
「これを、受け取って」
翠の手には、封筒があった。
「見ても良い?」
「うん、」
琥珀は、封筒を開けて、便箋を見て、琥珀は、一旦目をつぶる。
「大堂 琥珀
僕の気持ちです。
好きです。
貴女と、同じ船に乗って、同じ旅を出来て僕は、幸運でした。きっと、この夏を忘れることはないでしょう。
また、だいどう に行きます。必ず。
加賀 翠」
いざ渡すとなると緊張するが、もう琥珀の手のなかにあるラブレター。
琥珀は、ゆっくりと、目を開ける。
そして、ゆっくりと、ラブレターを大事そうに、胸の前に持ってくる。
「あたしも、好きです」
お互い、恥ずかしくて、でも、清々しくて、顔を見合わせるようにして、ニコッと笑う。
「翠、」
琥珀が手招きするようにして、翠を呼ぶ。翠は、それに誘われて、琥珀に近づく。
フーッと体が近づいて、琥珀の体温が伝わってくる
「翠のおかげで、色々出来た、ありがとう!翠がペアで、あたしは本当にラッキーだったよ」
翠がペアじゃなかったら、カミングアウトはいつになっていたかわからない。ひょっとすると、今も昔のままだったかも。
「僕もだよ」
優しい声が、耳元で聞こえる。
「また、連絡して」
「必ず」
「お兄ちゃん!!」
何度も聞きなれた声、友希の声だ。走ってくる。
バッと二人の距離がひらく。やはり、恥ずかしい。
「友希!」
翠は、そのまま走ってきた友希を抱き抱える。
「お兄ちゃん、さっきギューって琥珀としてた
ね」
琥珀は顔を赤くするが、翠はそうでもないらしい。
「僕は、琥珀が、琥珀は僕が好きだから」
「琥珀ちゃん、、」
友希は生で見るのは初めてだ。
「こんばんは!お兄ちゃんがお世話になりました」
琥珀と翠は笑った。
「こんばんは、友希ちゃん」
「友希ってよんで!」
「友希、またテレビ電話しようね。もう、帰っちゃうなんて残念だなぁ」
「お兄ちゃん、降ろして」
翠は、友希をおろす。友希は、琥珀にスゴく懐いていた。
「好きな食べ物ある?」
「う~ん、トマトかな」
「友希もトマト、好き」
友希と琥珀はちょっとお喋りをして、本当に帰る時間が来た。
「友希、翠くん、そろそろ時間ですよ」
「わざわざ、ありがとうございます」
施設のおばさんがこちらに歩いてくる。
「バイバイ、翠、友希」
「バイバイ、琥珀」
琥珀から10数メートル離れてから、翠は振り返る。そして、顎の下に手を持ってきて人差し指と親指の間に顎が入るようにして手を下にすると同時に、人差し指の先と親指の先をくっつける。
その合図を受け取った琥珀は、片手ずつ人差し指のと親指を下にさげると同時にくっつけるのを2度繰り返す。
お互い、顔が赤くなる。
「ス キ ダ ヨ」
「ワ タ シ モ」
(二人とも、手話ができる)
告白は大成功に終わった。
「お兄ちゃん、はじめての彼女が出来たんだよ」
「まさか、さっきの?やるねぇ、翠くん」
「お兄ちゃんね、好きなんだって」
新幹線の中はこの話題で持ちきりだった。静かな車内に友希の明るい声が響く。これは、これで、なかなかの拷問だ。
その頃、蒼士と紅葉は
「いっぱいありすぎて迷うな。な、紅葉は何が良いと思う?」
東京駅にはお土産やさんが多すぎて、結羽への土産が決まらないのだ。
「う~ん、これなんかどう?」
東京ドナナと書かれた箱を指差す紅葉。
「え?マジで?こっちの方がよくない?」
そのとなり、茶色の タマゴま と書かれた箱を蒼士は見る。この男、さっぱりと何でもあっという間に決めれるわりには、お土産は決められないらしい。それに、ウインドウショッピングも好きだそうだ。
「じゃぁ、両方買ってクラスメイトや先生に配ろう!」
「その考え良いな! だけどそれじゃ鈴木の特別感が」
「これなんかどう?」
「えぇ?それはないだろ?」
「はぁ?そんな言い方しないでよ」
なんだかんだ言いながら、結局、蒼士と紅葉、それぞれが結羽が喜びそうなものを選んで買った。いつかの、サプライズをするという蒼士の宣言を実現するために。
「結羽、絶対喜ぶよ!」
「だよな、」
新幹線に乗り込むと、肩の力が一気に抜ける。やっと帰れる。
「やっと帰れるな」
「私も、同じこと思ってた」
「明日から、学校かぁ」
大きくため息をつく蒼士。
「それは、仕方ない」
なにか思い出したように、ムクッと体を立てて、紅葉にトントンとする。
「あ、そういや、翠が琥珀のこと好きだったって知ってたか?」
あ、そうだった。蒼士は、今日その事を知ったのであった。
「知ってたよ、琥珀も翠が好きなんでしょ。告白、成功したのかな?」
「え!そうだったのか!マジかぁ、俺だけもしかして時代遅れか?」
そう言って、頭に手を持っていく蒼士。ラインの着信音。
「きっと、告白は成功したんじゃない?」
ラインを開ける。青色に白色の吹き出し。
「応援してくれてありがとう
翠から好きだって言ってくれて、自分の気持ちも伝えられたし良かった」
琥珀のラインであることは言うまでもない。
「うお!マジか!やったな」
紅葉が手を出す。ハイタッチ
この二人は、相当仲が良いのだ。いや、この旅を通して尚、仲良しになったか。
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