海色と灼熱

SHIROKO

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灼熱が心の灼熱に焼かれる

燃えたのは灼熱の方でした

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 「ねぇ見てよこれ!!これがさぁ、なんかマジらしくて」
 「そんなバカなことあるわけないだろ」
 「ほんとだって!!」

 サークル活動が終わって、帰り道。
 同級生の友人と街灯が照らす歩道を三人並んで駅へと向かっている間に、片方の友人がバッグから何やら怪しげな真っ黒いハードカバーの本を取り出して小声で話し出した。
 バカバカしい、と、それを見たもう片方の友人は呆れるように吐き捨ててスタスタと先に行ってしまった。
 「ねぇ海音、海音なら信じてくれるでしょ?」
 「えっ、えーと……具体的にどんなことがマジなの?」
 白いリボンカチューシャを付けたボブカットの少女が苦笑いを浮かべた。
 「そりゃもちろん、召喚術だよ!!異界の生き物を召喚できちゃうんだって」
 真っ黒いハードカバーには何語かもよく分からない言語が書かれていて読めそうにないが、怪しい雰囲気はプンプンと匂ってくる。
 「奏子はその本を使って何か召喚出来たの?」
 「わたしはまだ試してないけど……だからさ!!海音もやろうよ召喚術!!絶対面白いから!!」
 「え、ええ……」
 断りたくても、ここまで瞳をキラキラと輝かせてお願いされては断りづらい。
 折れた海音は渋々と頷いたのだった。


 海音の自宅は年季の入ったオンボロアパートの二階。
 今日は両親とも仕事で出ていて、帰ってくるのは明日以降。
 海音は自分の部屋の床を陣取って早速儀式を始めようとする友人……奏子に「やめようよ」と話しかけたものの……。
 儀式の準備に集中している奏子の耳には全く届いていないようだった。
 召喚術に必要な材料は揃えていたらしく、カバンの中から冷凍されたネズミの死体が出てきた時には目の前が真っ暗になりそうになった。
 「ど、どうしてそんな気持ち悪いものを持ってきてるのっ!?」
 「いや、だってこれペットのシャラの餌だし」
 シャラとは奏子の飼っている蛇の名前だ。
 ふらふらと後退り、家に帰りたくなってきた海音はここが自分の家なのだということを思い出して、絶望の深いため息をつく。
 そうこうしているうちに、遂に怪しい召喚術を行う準備が整ったようだった。
 「よし!!じゃあ始め……」
 奏子がワクワクしながら召喚術の本を片手に持ったところで、奏子のバッグの中からバイブ音が聞こえてきた。
気分を削がれた奏子がこんな時に電話とか誰だよとかぶつくさ言いつつスマホを取り出して画面を見てみると、途端にさぁっとその顔から血の気が引いた。
 「ヤバ!!!!!!!!」
 奏子は勢いよく立ち上がる。
 「どうしたの?」
 友人は電話を取らずに血相を変えて振り向く。
 「今日……バイトのシフト入ってたの忘れてた……店長から電話……」
 「え」
 「ご、ごめん!!!!これ、あと本に書かれてる呪文読み上げて召喚するだけだから!!!!!!!!やっといて!!!!」
 「えぇっ!?ちょっと待ってよ!!!!!!!?」
 奏子は結局電話に出ることなく、そそくさと荷物をまとめて慌ただしく飛び出して行った。
 床に置かれた黒魔術の陣、供物?か何かのゲテモノが配置され、雨戸もカーテンもドアも締め切った真っ暗な部屋に、ゆらゆらと揺らめく四本の蝋燭……。
 そして、奏子に去り際に押し付けられた黒魔術の本。
 どうしよう。こんな気味の悪いことしたくない。
 海音は暫く動けずにいたが、自分の部屋をこのままにはしておけない為、仕方なく片付けようと立ち上がる。
 念の為、恐る恐る黒魔術の本を開いて見てみると、海音は自分の行動にヒヤリとした。

 "儀式の準備を一度やり始めたら途中で絶対にやめないこと。さもなくば異界の呪いにより数多の不運が訪れ、一年も経たないうちに死に至るだろう。"

 走り去っていった奏子の事を思い出す。
 このまま片付けてしまえばあの友人は呪いにかかり死んでしまうのだろうか。
 もしくは、片付けをしてしまった己自身にも呪いが降り掛かってきてしまうのだろうか。
 どちらにせよ、海音には選択肢はひとつしか無かった。

 魔法陣の前に立ち、黒魔術の召喚の儀式のページを開いて海音は深呼吸をする。
 呪文の意味は全く理解出来なかったが、ルビがふられていたお陰で何とか読んで発音する事は出来そうだった。
 どうせ何も起きやしないと自分に言い聞かせて、震える声で海音は本に書かれた召喚の呪文を呟き始めた。

 『何も起きてない……よかった、このまま何も起こらないで……』
 今の時点では特に辺りに変化が起きている様子はない。
 海音は少しだけ心の緊張を解して引き続き呪文を読み上げていく。
 と、そこで一気に部屋の気温が下がったような気がして海音はビクリと肩を震わせた。
まさか本当の本当に、この儀式は本物なのだろうか。
 やめることが許されない今、泣きそうになりながら震える声で呪文を読み進めていく。
 耳鳴りがし始め、目の前がぐらりぐらりと揺れる。
 恐怖で口が震える。それでも終わらせなければ……。
 必死な思いで、海音は最後の呪文を唱えた。

 張り詰めた空気が漂う中、陣の中央には音もなく赤黒く揺らめく火の玉がボウと浮かび上がった。
 『どうしよう……本当に召喚出来てしまいそう……』
 あとはこの中央に現れた異界の生き物の魂……つまり目の前の火の玉に血か唾液を一滴垂らして口付けて終わり……らしい。
 流石に痛い思いはしたくない。
 少し口の中で唾液をふくませて、海音は赤黒く揺らめく火の玉に恐る恐る近づく。
 これからどんなおぞましい生き物を召喚してしまうのだろうか。
 海音は泣きそうになる気持ちを何とか押さえ込んで、火の玉に手を伸ばす。
 『……あれ、熱く、ない……』
 火の玉はむしろ暖かかった。
 その事にほんの少しだけ安堵して、恐る恐るその火の玉に唾液を一滴垂らす。
 すると、唾液は火の玉に吸収され、少しだけ火の色が明るくなった。
 『あとは、……あとは、口付けるだけ……』
 怖々と唇を炎に近付けて、炎に唇を重ねる。

 「これで終わ……きゃっ……!!!!」

 唇を離してその場から退こうとしたが、火の玉が急速に膨張し、そして爆発した。
 暴風によって尻餅をついた海音は咄嗟に目を瞑る。
 一体何が起きたというのか……。

 「……我を目覚めさせたのは貴様か」

 驚いて顔を上げると、あの火の玉は人の形を成していた。
 唸るような低い声に海音は震え上がる。
 「ぁ……あ……」
 上手く言葉が出てこない。

 「フン……まともに言葉も話せんのか。こんな弱々しい人間如きに契約するまでもないか」

 人の姿をした炎が海音の姿をじっと見下ろしている。
 身体中に突き刺さる、殺意。
 そして、ゆっくりと炎の手が海音へと向けられる。

 『やだ……私、殺されちゃう……』

 上手く言葉が出てこない、呼吸もまともに出来ない。
 がたがたと震える足が言うことを聞かず、立ち上がって逃げることも出来ない。
 ああ、嫌だ、死にたくない。
 まだ、まだ生きていたいのに……。
 私がもっと強くやめようって言えていたら良かったのかな。
 恐怖が込み上げてきて、涙が止まらない。

 「この我を目覚めさせたのは褒めてやる。だが貴様のような小娘に使役するなど、我の尊厳に関わる。貴様に恨みを抱く理由はないが存在が邪魔だ。死ね」
 人型の炎の手から、赤黒い炎が渦巻く。
 ああ、お父さんお母さん……親不孝な私でごめんなさい……。
 せめて、ちゃんと働けるようになるまで生きていたかった……。
 死ぬ事を覚悟し、海音はぎゅっと強く目を閉じる。
 炎の手に渦巻く炎が、勢いよく海音に襲いかかった。

 ……と、思われたが、マッチの火種のような小さな火が一瞬ポッと炎の手から吹き出しただけだった。

 「…………………………小娘、貴様……まさかこれっぽっちの魔力しか持たないというのに我を召喚したというのか………………?」

 「ぇ……」

 人の姿をした炎はブルブルと震えていた。
 独り言をブツブツと何か呟いている。
 海音は目を瞬かせ、炎から強い殺気が失せている事に気づく。
 目の前の人型の炎は再び言葉を発した。

 「おい小娘。何故我を召喚したのか一応聞いておく。何故召喚した」

 「…………………………ぁ、あ、の………………」

 海音は正直に言うべきか、それっぽい理由で誤魔化すかで悩んだ。
 しかし目の前の人型の炎(成人男性くらいの大きさ)に適当な嘘をついても見抜かれそうな気しかしない。
 結局何をしても殺されそうな気がする。
 再び死の恐怖に震えながら、海音は震える唇を開いた。

 「………………急用でいなくなった友人の、代わりに……………………」

 長い沈黙だった。
 本当に長い沈黙だった。
 人型の炎も呆然としているようだった。
 海音も殺される恐怖にただただ震えていた。

 「……我を召喚した理由がそんなどうでもいい事だったと?小娘、それは正気か?」
 「………………は、い」
 「…………………………そんなどうでもいい理由で我は目覚めさせられ、どうでもいい理由でこの地に縛られたということか……………………」

 言っている理由がいまいち分からない部分はあるが、人型の炎はどうやら黄昏ているようだった。


 再びの長い沈黙のあと、不意に人型の炎は燃える指で海音を指さした。

 「…………良いだろう。契約を結ぶには不十分過ぎる上に不快な理由だが、こうなった以上契約を結ぶしかない。」
 「えっ!!さっきので終わりじゃない……んですか……!?」
 「……………………………………いちいち説明する義理もない。今から貴様の魂に契約の証を刻む。動くなよ」
 「えっ……ひゃっ!?」

 人型の炎がそう言った直後、海音の胸元に炎の頭を突っ込んで来た。
 突然の出来事に一瞬思考が止まったが、本能的に炎を引き剥がそうとして炎に腕を伸ばす。

 が。

 「あれ……えっ、なんで……っきゃあっ!?」

 人型の炎は掴むことも払う事も出来ず、ずっぽりと胸部に入り込んだ人型の炎の頭は何かをまさぐるように動いている。
 そして何かを見つけたのか、更に体内に入り込み、そして海音は突然心臓に刺すような痛みを感じて悲鳴をあげた。

 用を済ませた人型の炎は、何事も無かったかのようにスっと海音の体内から抜け出した。

 「うぅ……凄く痛かった……わ、私の身体に何したんですか!?」

 「………………えっ、いや、だから……その………………契約の……証を刻……………………」

 ついさっきまでの威圧感のある炎とは思えない程の覇気のない答えだった。
 それどころか、何故か忙しなく部屋の中をウロウロと彷徨っている。

 「ま、まさか……私、これからどんどん寿命を吸われていくとか……」
 「いっ、いやっ!!寿命なんて吸う訳ないだろ!!!!い、いや、場合によっては吸ったかもしれないけどでもそんなこと出来るわけがないだろブツブツ……」

 再びガクガク震え出した海音の反応を見て、今度は人型の炎が慌て出す。
 そしてまた人型の炎は忙しなく部屋の中をウロウロウロウロウロウロウロウロ漂ってはウーンやらボソボソと独り言を呟いている。
 心に余裕のなかった海音も、流石に態度の急変ぶりが気になって仕方がなくなってきた。

 「………………あの、こんなこと聞くの失礼かもなんですけど……………………、どうしてそんなに焦ってるんですか……??私の身体に何か変なものとか……ありましたか??」

 ビク!!と今度は炎が大きく震えた。

 「いや!!ちが、ちがっ……!!ちが、くて。いや、違くない、けど。いや違う!!変なものじゃない!!でも、だって、あんなの俺だって初めてだったしそもそもブツブツ……」

 やっぱり物凄く様子がおかしい。
 さっきまでの殺意はどこへやら、今はむしろこの場所から一目散に逃げ出しそうなくらい炎の大きさも小さく……

 『え?小さく??』

 海音は部屋の隅でウロウロさまよっている炎をよく見た。
 海音を殺そうとした時とは明らかにサイズが縮んでいる。

 「あの……炎さん、何だか縮んでるみたい……なんですけど……」
 「炎?あ……あぁ、そんな風に見えてるのか……あー……えっと……その……あー……ん……」

 返事のキレが悪すぎる。さっきまでの高圧的な態度も消え去ってしまっている。契約を結ぶと性格まで変わってしまうのだろうか。
 部屋の隅をウロウロしていた炎は、意を決したように改めて海音の前まで戻ってきた。
 すっかり別人(?)のようになってしまった炎は、もじもじとしているような、震えているような感じで揺らめいているものの、消え失せてしまうような弱々しさはない。

 「んと……小娘……は失礼か、貴様……は流石に高圧的過ぎるよな……あの、あのな!!お前の名前教えろ!!!!」
 「はぇ!?え……えっと……私の名前……名前は、小波海音です……。海の音って書いて、ウミネ」
 「海音……海音、そっか、海音ね……うん、うん……じゃあ海音!!」
 「は、はい!!」
 名前を呼ばれて思わず海音は姿勢を正した。
 「本契約を交わした俺は、直にお前の魔力を媒体として、この世界に準じた姿に変わるはずだ。今のこの姿ではこの世界のものには触れられないからな。本契約ってのは、そういうものなんだ」
 「あ……はい、そうなんですか……」
 「…………興味無さげだな……。ま、まぁいい。さっきも言ったけど、契約自体は上手く出来てる。召喚士側、つまり海音……の、願いを叶える代わりに契約を結ぶのが普通なんだが……まあ、その、俺に殺される前に強く願った事を契約上の願いとして勝手に受け取らせてもらったからその辺は適当に……いや本当はこの辺りもちゃんとやるべきだったんだけど、俺も俺の事情で話をまともに聞くつもりもなかったからな……」
 「はぁ……」
 「……ん、んでだ。俺達のような存在と契約を交わした場合、基本的には願いが叶ったら契約終了。あとは死後地獄に落ちるだけ」
 「え」
 「死後の生活に関しては俺も責任は負えない。まあ……その、せいぜい長生きすることだな……」
「そんな…………」
 海音は顔を青くして俯く。
 死ぬのが怖いから召喚の儀式をやるしかなくて、
 召喚したバケモノから殺されそうになって、
 なんだかんだ殺されなくて済んだけど死んだら地獄行き確定の人生になってしまったなんて。
 俯いてしまった海音の様子を見て再び炎は慌て出す。
 しかし慌てるばかりで何かを言おうとしては飲み込み、再び忙しなく部屋の中を飛び回るだけだった。

 「お、お前が危険に晒されそうになった時は俺が助けてやるから……。だからそんなに落ち込むなよ……」
 「…………………………」

 話しかけても無反応な海音の様子を見て、炎は更に忙しなく部屋の中を飛び回った。
 と、突然部屋の中に重たいものが落ちるような音がした。
 「イテテ……」
 「………………??あれ……」
 視界の端で飛び回っていた炎が消え、代わりに部屋の隅で寝転んでいる少年がいた。
 少年がゆっくり立ち上がると、少年自身も自分の手足を眺めた。
 「………………そっか。魔力が少ないからか…………」
 褐色の肌にダークブラウンの髪、服装はファンタジー世界にありそうな特徴的なもので、この世界ではかなり浮いている容姿だ。
 服の下からはゴツゴツとした皮膚に覆われた太い尻尾も生えている。
 「………………炎さん、その尻尾は……?」
 「だから俺は炎じゃなくて……。ああ、俺名乗ってなかったのか……。海音、俺はナルヴォリエタルマス。種族は……炎龍って言った方が分かりやすいのか……??」
 「……………………ごめんなさい名前ちょっとよく分からなかったです」
 「…………………………ナルヴォリエタルマス」
 「……………………………………」
 「……………………あだ名でも付けて呼べばいい」
 「………………ナルタさん?」
 「………………おう。い、いや、さん付けも要らない!!」
 「えっ、えっとじゃあ……ナルタくん?」
 「うっ……、…………じゃあ、それで……」
 ナルタくんと呼ばれた瞬間、ちょっとだけ尻尾がふよっと動いた。
 人の姿になったからか、ナルタの感情がさっきよりも顕著によく分かる。
 照れくさそうに目をそらすナルタを見て、海音は初めて笑った。

 「………………あのさ」
 「あ、はい」
 「……………………さっきは死ねとか言って悪かった。もう、殺す気なんてないから。……死なせたりしないから」
 「えっ」
 「俺……その、俺、ちょっと色々、分かんないことあるんだけど……でも、その……俺、海音の事そう簡単に死なせたりしないからな!!!!」
 少年の姿で強く宣言されると、なんだが微笑ましくて。
 地獄に落ちるとか、そんな事はもうどうでも良くなった。
 どうせ死んだあとの話だ。
 生きている今は関係ない話だ。
 「ありがとうございます、ナルタくん」
 「……敬語も要らない。……出来れば俺の事は対等の存在として接してくれよ」
 「えっ、良いんですか??」
 「さっきの態度は、人間に舐められないためというか……」
 「えっと……じゃあ、今の態度も契約したから変えたの?」
 「い、いや、普通はあの態度崩さないけど、お前は特……んんっ!!!!ごほん!!!!ま、まあそうだな……」
 分かりやすく何故か動揺している。
 さっきから尻尾がふよふよと動き続けている。
 「ナルタくんは……えっと……このままこの部屋に住み込みになっちゃうのかな」
 「えっ、いや……そりゃだって俺無一文というか、そもそも今まで封印されてて何も持ってないし……」
 「…………えっと、どうしよう」
 海音は部屋を見渡した。
 「私、この部屋に両親と三人暮らしなの……。ナルタくんの部屋、無い……」





ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 海音の魂に契約の印を刻む時、初めて俺は躊躇った。

 今まで俺を召喚してきた人間の魂は大抵濁りきっていて、不愉快な気持ちにさせるものばかりだったのに。

 海音の魂は今まで見てきた幾つもの魂とは比較にならない程に、純粋で澄み切った……海色だった。
 こんなに綺麗な心の持ち主に、俺の牙を突き立てても良いのだろうか。
 傷物にしても、良いのだろうか。

 俺の魂を呼び起こした、あの優しく触れるような口付けが魂に染み付いて忘れられない。

 俺は優しい色の魂に出来るだけ優しく触れて、牙を突き立てる前に口付けた。
 今まで嗅いだことも無い、俺の魂を包み込んでくれるような甘い香りがした。

 どうしよう。
 こんな気持ち、初めてだ。

 衝動的に、優しくしたい、守りたい……ずっと隣にいたいと思った。



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