契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです

星月りあ

文字の大きさ
45 / 57

王太子様、恋愛を学ぶ2

しおりを挟む
「……ロベルト、読み終わったよ」
レイリックはロベルトから渡された小説をひたすら読んでいた。

「おっ、早かったな。どうだった?」
「……」
「レイ?」
ロベルトは無言になったレイリックを不思議そうな顔で見た。

「……ああ、いや、積極的に来られるのが苦手な人もいるんだと思ってね」
「そうだな」

レイリックが読んだ恋愛小説では一人の男がヒロインを好きになり積極的にアピールするが、それが嫌で逃げ出すというシーンがある。今までレイリックは女性から言い寄られることはあっても逃げられた経験など全くない。

「あんま男性慣れしてないんだろ、リリカ嬢は」
「公爵令嬢だから男性にもたくさん話し掛けられたりしてると思ったんだけどな」
「そりゃあ、あの兄がいれば誰も近寄れないんじゃねえの」
「あっ……確かに」
「それにそもそもパーティーにも滅多に参加してないだろ」
「そうだったね」
うっかりしてたな。公爵が過保護すぎてパーティーにもあんまり参加してないんだった。

「逃げられても困るし、リリカ嬢とはちゃんと話しをして来るよ。あっ、そうだ。一つ頼みがあるんだけど」
「なんだ?」
「こういう本って他にもあったりするの?」
「ああ、あるな。色々売ってるぞ」
「それを用意して」
「まあいいが、どれぐらいだ?」
「全部。じゃあ頼んだよ」
そう言って、レイリックは部屋を出ようとする。

「いやっ、待て待て待てっ!! 全部って一体何冊あると思ってんだよっ!!」
ロベルトは思わず全力で叫んだ。

「それもそうか。うーん、ならロベルトが適当に選んで持って来てよ」
「……はぁ、分かった。用意しておく」
諦めたような、どこか仕方ないという色を含んだ感情が彼の表情からは窺えた。レイリックは返事を聞くとすぐに執務室から去って行った。



**********

「リリカ嬢、少しいいかな?」
リリカは扉越しにレイリックの声が聞こえ、扉を開けた。

「はい、どうぞ」
「っ!? そっ、その格好は」

レイリックはリリカの姿を見て珍しく動揺していた。それもそのはずだ。もうすぐ寝るところだったので薄着を着ていたのだ。決して男性に見せられるような格好ではなかった。

「えっ、あっ!!」
リリカは今の自分の格好に気が付き、赤くなった。
「す、少しお待ちくださいっ」

そう言って慌てて扉を閉め、近くに置いていた羽織りを着た。

「お待たせしました……な、中へどうぞ」
「あっ、ああ」
二人は向かい合ってソファに腰を掛けた。

きっ、気まずい……。何か話し掛けるべきかしら。

そのとき、レイリックが口を開いた。
「その、ちゃんと話そうと思って。色々とごめんね。勉強もしたし、もうあんなことにならないように気を付けるよ」
勉強って一体何を?
とリリカの頭の中には疑問が浮かんだ。

でも、そんなことより……
「別にレイリック様のせいではありませんわ。その、ああいうことされたのは初めてで……」
なんというか距離を取られているような。配慮してくださっているのでしょうけれど、でも……
「今まで通り関わってくださいませんか?」
「えっ、だけど」
「私も倒れることがないように慣れたいですし」

リリカはそうは言ったが、実際のところ今更距離を置かれたくはなかったのだ。

だっていきなり寂しいじゃない。

「お願いします、レイリック様」
そう言うと、彼は大きく頷いた。

「今まで通りってことはまたキスしてもいいってことだよね」
「っ~~。がっ、頑張ります!! でっ、ですがそのっ、お手柔らかにお願いしますっ」
リリカは頬を赤らめながら言う。

「ふふっ、分かったよ」
「ありがとうございます」
「でも本当に誰にもされたことなかったの?」

キ、キスのことよね?
「はい。されたことは一度もありませんわ」
「公爵にも?」
「お兄様はそんなことしませんわ。ハグはよくされますけど」
「へぇ。妬いちゃうな」
「?」
「じゃあ僕は部屋に戻るから。また来るよ」
「はい。お待ちしております」

**********

レイリックはリリカの部屋を出た。

どうにか理性を保てたな。早く去らないと暴走しそうだったし、危なかった……。あんな格好……本当に可愛すぎるっ。でも危なっかしいな。僕じゃなかったら今頃大変なことになってるよ。
リリカの姿が脳裏に焼き付いて離れなかった。

それにしてもキスは僕が初めてか。嬉しいな。

先程までが嘘のように心が軽くなっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました

蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。 だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた

まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...