契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです

星月りあ

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公爵と婚約者のデート

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今日、ウィリアムはロベルトに言われた通りにスカーレットと共に街にデートに出掛けている。スカーレットの弟であるフレディはデートと聞いて、喜んで送り出してくれて、今は家でお留守番をしている。

ウィリアムもスカーレットも初めは普段着で出掛けようとしていたのだが、それぞれ執事と侍女に止められ、着替えさせられた。

ウィリアムは執事に「その格好は何です? 仕事にでも行かれるのですか」と怒られてしまった。ウィリアムは普段忙しさのあまり登城以外で外出することは滅多になく、外出用の服などろくに持っていないはずだったのだが、なぜか屋敷に用意されていた見たこともない服をデート用だと言って渡された。

一方、スカーレットは可憐さと上品さを兼ね備えた格好をしている。彼女はどこか子供らしさの残る顔立ちだが、その装いが大人の女性を彷彿とさせている。

今日はそんなスカーレットに会ってから、ほとんど会話がなく、代わりにウィリアムは無言でじっと目を逸らすことなく見つめてしまっていた。

無言の時間がずっと続いてしまったことで、スカーレットが不安を募らせているとはウィリアムは思いもしなかった。



「あっ、あのっ」
馬車の中でも一切の会話がなく、無言の時間に耐えられなくなったスカーレットはついに声を掛けた。

「えっ、ああ、どうした?」
「どうしたって……今日の格好そんなに変ですか?」
スカーレットは不安そうに眉を下げて尋ねる。

「え?」
ようやくウィリアムはスカーレットから目を離せなくなっていたことに気が付き、慌てて顔を逸らした。

「いや、変ではない……が、その、普段と違うから驚いたというか、なんというか」
ウィリアムはつい言葉を濁してしまった。

な、なぜ素直に言えないんだ、綺麗だって。 リリカにはいつも言ってるのに。リリカは妹だから言えたのか!? 確かにリリカ以外には一度も言ったことがなかったような……。そもそもそんなこと思ったことすらなかったというのに。どうして、スカーレットにだけ……。
内心かつてないほど困惑していた。

そんなウィリアムの反応を見て、変だと思われていると勘違いしたスカーレットはショックを受けていたが、そこに気が付けるほど、今のウィリアムには余裕がなかった。



そうこうしている内に街に到着し、降り立った。
「ここが街……」
スカーレットは思わずといった感じで呟いた。

「来たことはなかったのか?」
「はい。あっ、そういえば昔一度だけ来たことがあります」
「そうか。これからは自由に出掛けてくれて構わない。護衛さえ一緒ならな。次はフレディも一緒に出掛けたらいい」
「そうですね。フレディも喜ぶと思います」
「入りたい店はあるか?」
「えっと、どんなお店があるのか分からなくて……」
困惑気味に彼女は言う。

「ふむ。なら付いて来てくれ」
「はい」

ウィリアムが向かったのは事前に執事から教えられていた女性に人気だという雑貨屋さんだ。ウィリアムは武器屋には詳しいのだが、他の店は全くと言っていい程知らない。さすがにデートで女性を武器屋に連れて行くわけにはいかないことぐらいはウィリアムも分かっていた。執事はこうなることをある程度見越していたのかもしれない。

「雑貨屋さんですか?」
「ああ。好きに見てくれ」
「ありがとうございます」
「わあっ、綺麗」

スカーレットは雑貨を見て、目を輝かせている。スカーレットからすれば初めて見るものばかりだった。

こんなに嬉しそうなスカーレット初めて見たな。連れて来て良かった。
思わず頬が緩んだ。

「欲しいものは見つかったか?」
「はい。ですがやはりお高いですね。私には手が届きそうにありませんし行きましょう」
そう言って彼女は早々と店を去ろうとする。

「待て。どこに行くんだ? 俺が買おう」
慌ててウィリアムはスカーレットを引き留めた。

「えっ!? で、ですが……」
「婚約者なのだからプレゼントの一つや二つ贈って当然だ」
「すでにお返しできないほどたくさん頂いていますし」
スカーレットが着ている服は公爵家から与えられている予算で買ったものだ。

「何も返さなくていい。それにお金を使うのは貴族の義務というものだ。我々が使うことで経済が回っていく」
「なるほど……。そういうことでしたら、こちらをお願いします」
彼女は緊張気味に栞を差し出す。

「ああ。店主、これを包んでくれ」
「かしこまりました、旦那様」
「ありがとうございます、ウィル」
「いや、他にも欲しいものが見つかったら言ってくれ」

包んでもらった栞を受け取ったスカーレットが嬉しそうに持っている姿を見て、なぜだか嬉しくなって笑みが零れた。



その後、ひとしきり街を見て周ったウィリアムとスカーレットは屋敷に戻っていった。
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