テイルウィンド

双子烏丸

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第四章 前哨戦

解説実況

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〈さて、ほとんどの選手はツインブルーに辿り着いたようだな〉
〈そうね、リオンドさん。けど、ここからが、レースの本当の始まりね〉
 複数投映された、あちこちで撮影されているレース映像、それらの映像とともに今は小さく投映されている解説映像で、レイとリオンドは解説をしていた。
〈ああ、ツインブルーの大気をどう乗りこなすかが、このレースの要だものな〉
 リオンドはレースの様子を確認しながら、状況を確認する。
 二人のいる解説室にも、今会場で行われているレース状況を映し出す、小型モニターが複数置かれている。
〈……おっと、やはり何人かは、星の大気に翻弄されているな〉
 解説とともにクローズアップされたレース映像には、数機のレース機体が、濃紺色のガスの、強い気流に巻き込まれて制御を失っていた。
 その内一機は、姿勢が崩れた所を突風に煽られ、あっという間に後ろに吹き飛ばされた。
〈あらら、運が無かったわね。早速一機、脱落かしら〉
〈ツインブルーの気流は、他のガス惑星に比べてもかなり強い方だ、下手するとこの有様になる。しかし、上手く乗りこなせれば……〉
 今度は別の映像がクローズアップされ、そこには先頭を飛ぶブラッククラッカーとクリムゾンフレイムの姿が映っている。
 先程の映像とは異なり、二機とも制御が崩れることなく、幾度も起こる気流の変化に機体を合わせながら、上手くその流れに乗っている。
 その速度は気流の追い風も相まって、通常の機体速度より大幅に上回っている。
〈レースにおいて有利になると言うわけだ。まぁ、それはこうした惑星上のレース全般で言える基本となる、今更実況で解説することでは、ないかもしれないがね〉
 


 そんな解説を聞きながら、フウマ、ミオの二人はレースの観戦をしていた。
 ジョンとフィナは、売店で食べ物を買いに行っているせいで、今は席を外している。
「おっと、悪い悪い。色々とあったせいで、合流するのに遅れちまった」
 声の主は、幾らか前に別れた、リッキー・マーティスだ。
「あっ! リッキーさん、随分と遅かったのね」
「でも色々って、一体何があったのさ。少しは教えてくれたっていいだろ?」
「まぁ、色々だ。……大したことじゃないぜ」
 ――シロノやジンジャーブレッドに会ったことを知ったら、何を言い出すか……。ここは黙っていた方が賢明だな――。
 リッキーはそう言い、質問をはぐらかす。
 すると突然――、こんな威勢のいい言葉が響いた。
「へぇー、アンタがテイルウィンドのパイロット、フウマ・オイカゼだね? ハハハッ! 映像で見るよりも、とてもカワイイじゃないか!」
 彼の隣には、ジョンとともに別れた、フィナの姿があった。
 しかし、先程の大人しい雰囲気は何処にもなく、いくらか粗暴で奔放な性格へと変わっていた。
 彼女はさながら肉食獣のように荒々しい笑みを見せ、口元からは鋭く光る八重歯を覗かせる。
「おい、フィナ! いくら知り合ったばかりでも、ずいぶんと失礼だろ! それに、一緒にいたジョンは……」
「ん? 僕とフィナなら、ここだけど」
 今度はまた、別の方向から声がした。
 するとそこには大きいポップコーンを抱えたジョンと、そして……何故かそこにもフィナの姿がある。

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