テイルウィンド

双子烏丸

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第六章 前哨戦・後半

赤と白と(3)

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 しかし――シロノはマリンを、少々厄介、性質が悪いとは思っているが、本当に嫌っていたり邪険に思っている訳では、決してなかった。むしろ……。
 ――まぁでも、少し奔放で自分勝手な所はありますけど、美人で性格も良いですし、また同時にそんな所の愛嬌と言った感じで……。それにあの綺麗な赤毛と、勝気な表情もまた、正直、また可愛くて私の好みですものね――
〈うーん? シロノ、さっきから微笑んでいるけど、私の顔に何か付いてる?〉
 ふとそう思いを巡らせていた時、マリンの一言ではっと我にかえる。
「ええっと……、何でもありませんよ」
 ――全く、私とした事が、一体何を考えているのか……。それに、今の所は恋だとか、
愛だとか、正直面倒ですし。いつかとは思いますけど、まだ、私にはね――
 そんな、少しだけセンチメンタルな気分に浸ると、すぐに元の調子に戻した。


「……でも、中々やりますね、ここまで付いて来れるだなんて。まぁ、それでも私に勝つには、まだまだ程遠いですけどね」
 ホワイトムーンの出力は、依然80%と高いままだ。
 もはやレースは終盤、最後までこの出力のままでも、燃料は十分にある。
 それに、先を飛ぶジンジャーブレッドに追いつくには、最低でもそれくらいは必要だ。現にレーダーに映る距離は、順調に縮まっている。



 対するクリムゾンフレイムも、それとほぼ近い高速度を維持しているが、それでもホワイトムーンの幾らか後ろを飛行し、遅れずに付いて行くのがやっとの状態だった。
 更に、先程システム・スパークラーによりリミッターを外した超加速を行ったせいで、燃料にも余裕はない。
 それでもマリンは、そんな苦境なんて、まったく気にしていないように見えた。
〈言ってくれるわね。……でも、今回はシロノもだけど、あの伝説のレーサー、ジンジャーブレッドも私の狙いなの。多分シロノだって、その口でしょ?〉
「ええ、それはもう。このまま行けば、私達は上手く、ジンジャーブレッドに追いつけるでしょうね。しかし……」
 ふと、考えるような仕草を見せて、シロノは続ける。
「何だかやけに順調すぎるのですよね……。ジンジャーブレッド相手なら苦戦するだろうと思って、燃料もいくらか温存したのですが、この様子ではその必要もなさそうです」
 これにはマリンも同意見だった。
〈……さっきジンジャーブレッドを相手にした時は、機体も、パイロットも、とにかく別次元って感じだったもの。それなのに、今の様子だとシロノの言うとおり、順調って言ったら。順調かも〉
「まぁまぁ、今は考えていても、仕方ないでしょう。今は、ジンジャーブレッドに追いつくことです。
 クスッ……もしかすると、ここで私達が伝説を破ることが、出来るかもしれませんよ?」
〈えっ……シロノと、一緒に……?〉
 マリンはつい、どぎまぎとした様子を見せる。
「まぁ、まずは私に、ついて来れればですけどね。燃料にはどれくらい余裕があるか知りませんが、せいぜい善戦することです」
〈あっ! 待ってよシロノ!〉
 先を飛ぶシロノと、それに置いて行かれまいとするマリン、二人とその二機は、先頭のジンジャーブレッドとブラッククラッカーを目指す。

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