テイルウィンド

双子烏丸

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第七章 反省会

―進展―(3)

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「えっ!?」
 真っすぐ自分を見つめるフウマの瞳、ここまで真剣なのは、初めてかもしれない。
「ミオは僕を、ただの幼馴染か、友達か、どう思っているか知らないさ。けど……僕は、君が誰よりも大切で、大好きなんだ!」
「……大好き? フウマが……私を?」
「こんなに子供っぽくて、ミオに助けられっぱなしで……レースしか能がないような情けない僕だけど、これからは僕だって昔のように、君から頼りにされるように頑張ってみせる。だから……だから……」
 ここまで一気に言い放ったフウマは、この後に続ける言葉を必死に考えるように下を向く。
 そして、顔を上げて告白する。
「どうか――僕の恋人になってくれ」
 告白は男らしく決めようとした。


「…………たら、とても嬉しい……かな」
 しかし告白した瞬間、衝動によってさっきまで感覚麻痺になっていた、緊張が襲う。そのせいで最後は、つい弱気に、俯いて小声でそんな事を呟いてしまった。
 途端にフウマは我に返り、羞恥さですぐ目の前のミオから顔を反らした。そして無理な空笑いで、何とか誤魔化そうとする。
「あ、あはは……、何か変な事を、言ってゴメン。僕の言った事は……うん、やっぱり忘れてくれないか」
 そんな彼に、ミオは優しく声をかける。
「フウマ、顔を私に向けてもらえないかしら」
「そんな……あんな事言った後じゃ、恥ずかしくて……」
「大丈夫だから、お願い。少しだけでいいから」
 ミオから強く言われて、フウマは折れた。ゆっくりとミオに向けたその顔は、余程恥ずかしかったのか顔を真っ赤に、両目に涙を溜めて半泣きしていた。どうりで、顔を見せたくないわけだ。
「ううっ、あまり見ないでよ……」
 そんなフウマに、ミオはニコッと笑う。そして――




 フウマの額に、柔らかいものが当たった。
 それがミオの唇であることに、一瞬理解が追いつかず、彼がそれに気づくのは、少し遅れた。
 しかし気づいた後も……あまりに突然で、衝撃的だったせいで、しばらく固まっていた。
 唇を離し、ミオはフウマを見つめる。
 ようやく正気を取り戻したのは、それから7、8秒後。何とかフウマは慎重に、言葉を選ぶように口を開いて、こうたずねた。
「どう言う……事。……まさか」
 ミオは頷く。
「本当は、私から告白しようと思っていたの。一週間前に空中帆船で話していた時も、さっき会場にいた時も、フウマに話したかったんだけど……タイミングが悪くて。
 あーあ、先を越されちゃって、ちょっと残念。でも――それ以上にとても嬉しいの! フウマが私を、そこまで思ってくれていたなんて! ふふっ……両想いね、私たち」  
 窓に映る宇宙を背景にして、微笑む彼女。その姿は、普段よりも、ずっと綺麗だった。
「なら、僕たちは――」
 しかしフウマの言葉を、ミオは遮る。


「でも今はダメ。だって、まだ大事なレースが一つ、残っているでしょ」
 彼女は諭すように続けた。
「別に、優勝出来なくったっていいの。ただ、後悔しないように、全力を出すことが出来たら……。
 私がフウマの恋人になるのは、その後。さっきは額にだったけど、レースが終わったら、ちゃんとここに、キスしてあげるからね」
 ミオはそう言って人差し指を、フウマの口元に当てて、ニコッとする。
 そんな仕草に、フウマはドキドキした。……が、その気持ちを何とか抑えると、いつものように、自信たっぷりに笑ってみせた。
「ふっ! 言われなくても当然、全力で挑むさ! それに、ミオは優勝なんて出来なくてもいいって言ったけど僕は必ず……優勝する。
 シロノにも、ジンジャーブレッドにも、他の誰にも、このレースだけは譲れない」
 真っすぐフウマは、自分の愛した相手を見据える。
「今までは自分が好きでレースをしていた。けど今度は――ミオのためにレースを行う。僕を好きでいてくれた……君のために、勝利してみせる!」
 これは自分の気持ちに応えてくれた、彼女に対する初めての誓いだった。
 照れながらも、やはりミオは幸せそうにしている。
「ふふっ、ありがとう。今のフウマ、とても格好良かったよ。
 私もいつも以上にフウマを応援するわ、だから、レースでもあまり無理しないくらいで、頑張って来てね。きっとフウマなら、優勝だって夢じゃないから」
 いつものように優しく、自分を信頼してくれるミオ。でも、フウマにとってはいつもより、とても嬉しく、つい顔がほころんだ。

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