テイルウィンド

双子烏丸

文字の大きさ
102 / 204
幕間 遭遇

襲来

しおりを挟む

 ―――― 
「……くそっ! 何で……何で、こんな事にっ!」
 コックピットには、強い緊張感が漂い、緊迫した様子のフウマが操縦桿を握る。
 激しい操縦のせいで、まるでレースの最中かそれ以上に、強く揺れ、加速も強い。
「ミオ! そっちは大丈夫!? 操縦が荒くて、辛いかもしれないけど……」
「私は、まだ平気……。それよりフウマ、早く逃げないと!」
 そう言った途端、真横に強い光線の輝きが、横切るのがディスプレイに見える。


 同時に機体も、強く揺れ動く。
「直撃は……していないみたい。けど、時間の問題かも」
 後ろに見えるのは、何隻もの宇宙船の姿……。大きさはさほどではないが、数が複数存在し、小惑星の陰に隠れながら迫り、現れては攻撃を加えている。
 宇宙船は駆逐艦並みの装備を持っており、どう見てもまともな連中だとは、到底思えない。
 つまり今、テイルウィンドは、宇宙海賊の攻撃にさらされていた。
 何故こんな事になったのかと言えば……それは少し前に遡る。


 
 テイルウィンド、ホワイトムーン、ワールウィンドの三機は、共にG3レースの開催地へと向かっていた。
 エアケルトゥングを発ち、二度のワープを経て目的地へと行く予定であり、一度目のワープは問題なく上手く行った。
 だが……二度目のワープへと向かう道中、小惑星帯で待ち構えていた宇宙海賊の艦隊に襲撃された。
 ホワイトムーンとワールウィンドは上手く逃れたらしいが、不運なことにテイルウィンドは、ミオが機体システムの調整を行っている最中だった。
 急いで中断して逃れようとしたが、逃げ遅れて海賊の追跡を、一手に引き受ける結果となってしまった。
 この航路は、小型船くらいしか通りはしない、例え海賊行為をしても利益は少ないはずだが…………一体なぜここにいるのか?


 
 しかし原因を考えようと、今の危機は変わらない。
 今は、手を動かし、機体を動かし、海賊の追跡を逃れるしか手はない。
 後ろから迫るのは二……いや三隻、迫って来ている。
 幸い、小惑星のせいで上手く射線から逃れており、相手の狙いも機体の破壊よりは、動力部を狙い航行不能になるのを狙っているようだ。
 が、下手に動力系統に直撃を許せば、航行不能に陥る。そうなれば……G3レースに間に合うことは、なくなってしまう。
 ――これも、レースの妨害が目的か。誰の仕業か知らないけど……気に入らないな!――
 フウマとテイルウィンドの善戦により、少しずつだが海賊船との間には距離が開いている。
 小惑星帯さえ抜ければ、すぐに次のワープ宙域だ。そこはあの規模の海賊船は、通過不能になっている。
 そこまで行ければ――。そうフウマが思っていた時、それは起こった。


 突如、進行方向先の小惑星の陰から、一隻の海賊船が現れ行く手を塞いだ。
 今まで海賊から上手く逃ていたつもりだったが、これも相手の戦略の一つ、待ち伏せして挟み撃ちする魂胆だった、
 まんまとしてやられた、フウマは悔し気に舌打ちする。
 ――初めから、それが狙いだったのか! やってくれる! けどまだ――
 相手の海賊船は、レース機より十分に大きい。そして、その分機動性は小さい。
 テイルウィンドの性能なら、まだ逃げ切れる余地がある。フウマは回避運動を取り、前方の海賊船を避けようとした。
 だが、トラブルは追い打ちをかける。
〈警告! 急激な姿勢制御による、深刻なシステムエラーが発生しました。安全の為、直ちに緊急静止運動を行います〉
 その音声とともに、急に速度が低下し、停止した。
 途端に動力、出力系統も停止し、メーターも稼働率は0%を示している。
「……なっ!?」
 フウマは唖然とした。
 そう、海賊の襲撃により、作業中だったシステム調整を、無理やり中断した事が原因だった。
 無理な中断のせいで、中途半端なシステムに僅かな歪みが入った。
 やがて、度重なる操縦に耐えきれなった結果が、最悪に間の悪い、この誤作動だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...