テイルウィンド

幕間 遭遇

麗しい女海賊

　ブースターは止まり、強い逆噴射により速度は相殺され、ついに停止した。
　海賊船は取り囲み、その砲門をテイルウィンドへと向ける。……絶対絶命と、言うべきだろう。
「ああ、やってしまった」
　そうフウマは、悔しげに呟く。
「けど、これから、どうなるの……かな？」
　ミオも不安を隠せずにいた。だが、不安を感じているのはフウマも同じであり、更にこの状況をどうしようも出来ない不甲斐なさに、絶望すらしていた。
　それでも彼は頭を上げ、なるべくそれを感じさせないように振る舞う。
「……大丈夫さ、まだ何処か、チャンスがあるはずだよ」


　――と、言ったものの、見ればシステムエラーは深刻だ。辛うじて別系統のワープ航法は使用出来るが、当然ここでは使えない。
　ブースター、スラスター等の出力系統の制御システムは全滅、自動復旧も始まってはいるが、これだとかなりの時間がかかる。出力系が動かなければ、当然、この場から動くことは不可能だ。
　復旧して動けるようになった時には――事態はもはや、取り返しがつかない事になるだろう。
　もはや、今出来ることは、何もない。運を天に任せるしか……道はない。



　すると海賊船から、通信が入って来た。
〈正体不明の機影からの通信です。通信を……〉
「繋いでくれ。どの道、拒否権もないだろ」
　結局どうしようもない。ややおざなりに、フウマはそう言った。
　コンピュータは命令通り、通信を繋いだ。


　海賊船との通信が繋がる。通信ディスプレイには、一人の美しい女性が映される。
　身長は180㎝ほどのすらりとした長身と、腰までかかる程に長い艶のある紫髪――。その顔は左目にある無粋な機械仕掛けの義眼があるものの、凛とした彫刻のように整った顔と、右目は狐の瞳のように鋭く、見るものを惹きつける程に深く紅い瞳を持つ。
　服装は時代錯誤的な海賊の船長服で、ご丁寧に腰には長い刀身のサーベルを掛けている。
　が、それを彼女は違和感なくそれを着こなし、厳しく冷酷な、カリスマ溢れる海賊の雰囲気に溢れている。
　

　美しく、同時に恐ろしい、宇宙海賊の首魁――
　その姿を見たフウマと、ミオも、思わずその深紅の瞳に射すくめられ、その雰囲気に呑まれるる。
〈さてと、随分手間を取らせたな……フウマ・オイカゼ。さぁ――これ以上の、抵抗は無意味だ〉
　聞くものを痺れさせるほどの、深く澄んだ綺麗な声――、女は口元に、笑みを見せる。