テイルウィンド

双子烏丸

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第十章 Grand Galaxy Grand prix [Action!〕

ジョセフとの決着

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 ――――
 突如、速度を増し迫る玄武号。
 次第に加速を増して行き、テイルウィンドを超すのも時間の問題だ。
 無事嵐を抜け、穏やかな青空を飛んでいると言うのに、まさかまだ勝負が続くとは、思ってもみなかった。
 ――ふっ、こんな奥の手を隠していたのかよ。……やるじゃん――
 とは思ったものの、このままではいられない。
 テイルウィンドは既に最高速度で、気流も弱い。
 

 何か方法は――。
 そう考えていた矢先、ディスプレイに映る外の映像に、ある物を発見した。
 ――これなら、もしかすると――
 フウマはある考えを思いついた。
 そしてその考えを実行に移すべく、機体の進路をとった。


 ――――
 速度はもはや、テイルウィンドを上回っている。
 これなら――、と、ジョセフは考えた。
 そんな時だった、目の前のテイルウィンドは降下し、海面の低空飛行を行い始めた。
 この地域では、微妙に低空の方が気流が強い。おそらく、それを狙ったのか?
 だがそれでも、玄武号の加速に叶うわけがない。
 ――努力は買うが、この俺と、玄武号からは逃げられない。それを、たっぷり教えてあげようじゃない――
 機体はテイルウィンドの後に続き、低空に降下する。


 海面に二つの波を立てて飛行する、二機の機体。
 だが、それでも徐々に玄武号が迫ることには変わらない。
 ――やはり無理があったようじゃないか? だがこっちも――
 モニターを見ると、動力部、ブースターの負担が増加していると言う、警報が表れている。
 ――しかし、それでもすぐに追い抜けば、損傷だって抑えられる。多少性能は下がるが、エメラルドまでもちさえすれば――
 と、思っていた矢先。
 テイルウィンドは何か、球体状の島々の中に入り込んだ。
 レースに熱中したジョセフは、逃がさないとばかりに、続いて入る。
 やけに丸い、ツルツルした島の間を、玄武豪は飛行する。
 ――ふっ! 今度は島で撒こうって訳か? そんな考えなど――
 ……が、ここでジョセフの頭に疑問を浮かぶ。
 ――いやちょっと待てよ? そもそもこの星には自然の島なんて、あるわけないはずだ――
 それぞれの惑星環境に対しては、自らも調べたうえで、熟知していた。
 そう、サファイアは一面全て海の惑星だ。陸地はなく、海上都市などの人工物でない限りは、海の上に島なんてある訳がない。
 瞬間……彼の頭に、この状況に対する解答が思い浮かんだ。
 ジョセフの顔からは血の気が引き、固まった口からは、ポロリと煙草を落とす。
 「……ああ、くそっ」
 思わず一言、呟いた瞬間に、それは起こった。
 
 
 
 ――――
 高い水飛沫をいくつも立てて、飛び跳ねるバルーンホエールの巨体。
 玄武号は見事、それに巻き込まれた。
 レース初めに遭遇した、群れを成すバルーンホエール、フウマは再びそれを見かけた時に利用しようと考えた。
 が……それも、少しやりすぎた気がした。
 ――ごめんなさい、僕もやり過ぎたけど、これぐらいしか考えつかなかったんだ――
 これには、フウマも罪悪感を感じた。
 しかし、それでもレースは往々にして荒いものでもある。
 それに今はまだ、先が残っている。何しろ中間地点さえにも、半分すら進んでいない。
 ――後で会ったら、ちゃんと謝ろう――
 そう心に決め、フウマは先へと向かう。しかし、初めからここまで良い戦いが出来た、それは……素直に嬉しかった。
 
 

 ――――
 玄武号は、バルーンホエールの群れ付近の、海にぽつんと浮かんでいた。
 群れの暴走に巻き込まれ、機体は制御を失い海面に墜落、そのショックでしばらくは動かせそうになさそうだ。
 海に浮かぶ機体の上で、ジョセフは吸っていた煙草の煙を、宙に吐く。
 ――ふっ、こっぴどくやられたものだな。それにあんなミスをするとは……ちょっと、熱中し過ぎたか――
 そんな苦笑いを、少し顔に浮かべた。
 探偵としてのジョセフなら、こんなミスなどしはしなかった。地形も十分に熟知しており、その対応も可能なはずだったからだ。
 しかし、いつの間にかレースに執着し、それをつい忘れてしまったのが敗因だ。
 本来、レースなどどうでもよかったジョセフ。だが――熱中したとたん、それが敗因に繋がるとは、皮肉な結果である。 

 
 だが、それでも彼は、満足そうな様子を見せる。
 ――しかしそれでも、楽しませてもらったよ、フウマ。これはちょっとした、借りが出来たかな?――
 クックッと笑いながら、ジョセフは煙草をふかしながら、青い空を眺める。


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