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第11話 フォローのコラボは誰
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朝に駅前でカレンから責められたが、菜乃が二股を指摘してくれて形勢が逆転。
しかし菜乃は、カレンに告白のことを聞かれて、俺を傷つけないために、逆に俺からフラれたと言ってしまう。
俺と菜乃が互いを気遣うさまを見て、不満をあらわにしたカレンは登校せずに帰ってしまった。
俺と菜乃は互いの思いやりに気づきつつも、付き合っていることを秘密にするため、少し離れて登校したのだった。
「おい、健太。姫川さんをフッたって何なんだよ!」
1限目の現代文が終わると、クラスメイトたちが俺の席に詰めかける。
駅前の騒動で朝は遅刻ギリギリだった。
クラスの奴らは朝、俺に話しかけることができず、現代文の授業中ずっとメッセージが届き続けた。
俺には新着の通知がずっと来ていて、とんでもない量なのでずっと先生に隠れて返信し続けたのだ。
「てめぇ、知ってることを全部白状しろ!」
「ねぇ、姫川さんをフッたって本当なの?」
「おい中村、ちゃんと答えやがれ!」
「いや、彼女が勝手に言っただけだから。さっき返信しただろ、知らんって」
俺は騒ぎを収めるため、メッセージへの返答をひたすら「知らん」と入力し続けたのだ。
そもそも、菜乃が俺を傷つけないために言った嘘。
俺は本当に誰もフッてはいない。
男子も女子も俺の席に詰めかけるが、俺はひたすら壊れた機械のように「知らん」と答え続けた。
すると昼休みになるころには、もう俺のところへ来なくなり、教室内で噂をされるだけになった。
フッた相手である菜乃を、俺が気遣ってるんだと言ってるのが聞こえる。
これからしばらく学校に居づらくなりそうだ。
「中村くん、あのね」
「ちょっと聞きたいことがあるの」
今度は同じクラスの女子ふたりが、もじもじしながら話しかけてきた。
「だから知らないって」
「いえ、そうじゃないの」
「姫川さんの話じゃなくてね」
「違うの? 何?」
ふたりともすぐに答えず、どちらが話し出すかお互いを見ている。
「あのっ! 美崎さんって、ただの幼馴染みなの?」
「彼女と付き合ってないって本当?」
「え、何で? まあ本当だけど」
俺が肯定すると、彼女たちは笑顔で「やった!」とか「がんばろ!」と言って嬉しそうに戻っていった。
一体どういうことだろ?
なぜ彼女たちは喜んだんだ?
騒ぎは午前中に収まって、何とか昼飯は普通に食えそうだと思ったが、今度はゲーム仲間の連中が俺の机にやってきた。
切り抜いたナノンの配信をスマホで見せられる。
「おい、健太。これ、おまえじゃないのかよ?」
「知ってることを全部白状しやがれ!」
「中村氏がナノン様をフッたのはマジでござるか?」
今度はナノンの配信の方だ。
「ナカムラケンタって名前があきらかなんだぞ?」
「あのな、お前ら。ナカムラケンタっていう名前の人間は全国に大勢いるんだよ」
こっちの話も知らん顔で否定を続けると、割とあっさり引き下がった。
やはりナカムラケンタという名がありふれていて説得力はあるようだが、内心ちょっと複雑だ。
が、ひとりだけ黒髪ロングの女子が食い下がる。
「あの聖天使ナノンをフッたの、もったいないよ?」
「栗原もしつこいな。フッてないってば!」
童顔で低身長の栗原瑠理が、俺の机から離れない。
せっかく幼くて可愛らしい美少女系なのに、俺すら引くほどのゲームオタなので、彼女を見るたびにもったいなく思ってしまう。
「リアルでなくても、ゲーム内ならどうなのよ? ゲーム内で求婚されて、それを断った相手がVtuberだったとか?」
「最近、結婚システムがあるゲームしてないし。それに、聖天使ナノンを知ったのが昨日なんだよ」
彼女は不満そうに頬を膨らませたが、なぜか確信があるようで、諦めずに俺を睨んでいる。
栗原はカレンが近くにいると、俺に話しかけない。
彼女はカレンともよく話すのに、カレンがいると俺に話しかけてこないのはなんでだろう?
「健ちゃんじゃない証拠でもあるの?」
「そんなもんあるか」
栗原は親しい相手をちゃん付けで呼んでくる。
ちびっこい彼女がちゃん付けで呼ばれず、その栗原が逆に周りをちゃん付けするのでギャップが面白い。
「もう。総研の聖天使ナノンが、誰にフラれたのか知りたかったなぁ」
「諦めてくれ」
どうも始めから聖天使ナノンを知ってたみたいだ。
聖天使ナノンの所属事務所、カワイイ総合研究所まで知ってるし……。
そもそも栗原は、俺が菜乃をフッたという噂を聞いてこない。
ナノンの配信漏れの方が興味あるのか?
栗原の追及に口をつぐんで耐えていると、携帯にメッセージ受信の通知が表示された。
菜乃からだ。
すぐ返信しよう。
《今日も配信するよ》
《今日も?》
《健太が配信に付き合ってくれないとまた迷惑かけちゃうよ》
《それは勘弁》
《冗談。ホントは、事故の後だからちょっと不安》
《謝罪とかするの?》
《うん。事務所がコラボのフォローを手配したって》
《誰とコラボ?》
《サプライズとかで教えてくれない》
《そんなんで接続できないだろ》
《これまでコラボ経験少なくて不安》
《おけ、放課後に菜乃の家の最寄り駅で》
俺と菜乃って、自分でも信じられないが、昨日から付き合ってるんだよな。
こうしてメッセージで放課後の約束をしたら、少しずつだが実感が湧いてきた。
そして、俺の心は間違いなく菜乃に惹かれてる。
表情を緩めながら携帯をながめていたが……。
「いてっ! あっ!」
誰かが俺の肩に当たり、携帯を落としてしまった。
先生が教室に来て、うろついてた奴が席に戻る拍子で俺の肩に当たったのだ。
「なんだよ、もう!」
愚痴を言いながらも携帯を拾おうとしたが、先に栗原が拾ってくれた。
「はい、どうぞ」
「悪いな、ありがとう」
礼を言って受け取る際に、彼女の視線が携帯画面へ向けられているのに気づく。
「へえ~、ふ~ん、そうなんだ」
「え、あ、おい、見るなよ」
「午後の授業始まるね。じゃ!」
「あ、うん……」
マズいな。
内容見られたか!?
気になったが、その後の栗原の態度は普通だったので、まあ大丈夫だろうと気にするのをやめた。
しかし菜乃は、カレンに告白のことを聞かれて、俺を傷つけないために、逆に俺からフラれたと言ってしまう。
俺と菜乃が互いを気遣うさまを見て、不満をあらわにしたカレンは登校せずに帰ってしまった。
俺と菜乃は互いの思いやりに気づきつつも、付き合っていることを秘密にするため、少し離れて登校したのだった。
「おい、健太。姫川さんをフッたって何なんだよ!」
1限目の現代文が終わると、クラスメイトたちが俺の席に詰めかける。
駅前の騒動で朝は遅刻ギリギリだった。
クラスの奴らは朝、俺に話しかけることができず、現代文の授業中ずっとメッセージが届き続けた。
俺には新着の通知がずっと来ていて、とんでもない量なのでずっと先生に隠れて返信し続けたのだ。
「てめぇ、知ってることを全部白状しろ!」
「ねぇ、姫川さんをフッたって本当なの?」
「おい中村、ちゃんと答えやがれ!」
「いや、彼女が勝手に言っただけだから。さっき返信しただろ、知らんって」
俺は騒ぎを収めるため、メッセージへの返答をひたすら「知らん」と入力し続けたのだ。
そもそも、菜乃が俺を傷つけないために言った嘘。
俺は本当に誰もフッてはいない。
男子も女子も俺の席に詰めかけるが、俺はひたすら壊れた機械のように「知らん」と答え続けた。
すると昼休みになるころには、もう俺のところへ来なくなり、教室内で噂をされるだけになった。
フッた相手である菜乃を、俺が気遣ってるんだと言ってるのが聞こえる。
これからしばらく学校に居づらくなりそうだ。
「中村くん、あのね」
「ちょっと聞きたいことがあるの」
今度は同じクラスの女子ふたりが、もじもじしながら話しかけてきた。
「だから知らないって」
「いえ、そうじゃないの」
「姫川さんの話じゃなくてね」
「違うの? 何?」
ふたりともすぐに答えず、どちらが話し出すかお互いを見ている。
「あのっ! 美崎さんって、ただの幼馴染みなの?」
「彼女と付き合ってないって本当?」
「え、何で? まあ本当だけど」
俺が肯定すると、彼女たちは笑顔で「やった!」とか「がんばろ!」と言って嬉しそうに戻っていった。
一体どういうことだろ?
なぜ彼女たちは喜んだんだ?
騒ぎは午前中に収まって、何とか昼飯は普通に食えそうだと思ったが、今度はゲーム仲間の連中が俺の机にやってきた。
切り抜いたナノンの配信をスマホで見せられる。
「おい、健太。これ、おまえじゃないのかよ?」
「知ってることを全部白状しやがれ!」
「中村氏がナノン様をフッたのはマジでござるか?」
今度はナノンの配信の方だ。
「ナカムラケンタって名前があきらかなんだぞ?」
「あのな、お前ら。ナカムラケンタっていう名前の人間は全国に大勢いるんだよ」
こっちの話も知らん顔で否定を続けると、割とあっさり引き下がった。
やはりナカムラケンタという名がありふれていて説得力はあるようだが、内心ちょっと複雑だ。
が、ひとりだけ黒髪ロングの女子が食い下がる。
「あの聖天使ナノンをフッたの、もったいないよ?」
「栗原もしつこいな。フッてないってば!」
童顔で低身長の栗原瑠理が、俺の机から離れない。
せっかく幼くて可愛らしい美少女系なのに、俺すら引くほどのゲームオタなので、彼女を見るたびにもったいなく思ってしまう。
「リアルでなくても、ゲーム内ならどうなのよ? ゲーム内で求婚されて、それを断った相手がVtuberだったとか?」
「最近、結婚システムがあるゲームしてないし。それに、聖天使ナノンを知ったのが昨日なんだよ」
彼女は不満そうに頬を膨らませたが、なぜか確信があるようで、諦めずに俺を睨んでいる。
栗原はカレンが近くにいると、俺に話しかけない。
彼女はカレンともよく話すのに、カレンがいると俺に話しかけてこないのはなんでだろう?
「健ちゃんじゃない証拠でもあるの?」
「そんなもんあるか」
栗原は親しい相手をちゃん付けで呼んでくる。
ちびっこい彼女がちゃん付けで呼ばれず、その栗原が逆に周りをちゃん付けするのでギャップが面白い。
「もう。総研の聖天使ナノンが、誰にフラれたのか知りたかったなぁ」
「諦めてくれ」
どうも始めから聖天使ナノンを知ってたみたいだ。
聖天使ナノンの所属事務所、カワイイ総合研究所まで知ってるし……。
そもそも栗原は、俺が菜乃をフッたという噂を聞いてこない。
ナノンの配信漏れの方が興味あるのか?
栗原の追及に口をつぐんで耐えていると、携帯にメッセージ受信の通知が表示された。
菜乃からだ。
すぐ返信しよう。
《今日も配信するよ》
《今日も?》
《健太が配信に付き合ってくれないとまた迷惑かけちゃうよ》
《それは勘弁》
《冗談。ホントは、事故の後だからちょっと不安》
《謝罪とかするの?》
《うん。事務所がコラボのフォローを手配したって》
《誰とコラボ?》
《サプライズとかで教えてくれない》
《そんなんで接続できないだろ》
《これまでコラボ経験少なくて不安》
《おけ、放課後に菜乃の家の最寄り駅で》
俺と菜乃って、自分でも信じられないが、昨日から付き合ってるんだよな。
こうしてメッセージで放課後の約束をしたら、少しずつだが実感が湧いてきた。
そして、俺の心は間違いなく菜乃に惹かれてる。
表情を緩めながら携帯をながめていたが……。
「いてっ! あっ!」
誰かが俺の肩に当たり、携帯を落としてしまった。
先生が教室に来て、うろついてた奴が席に戻る拍子で俺の肩に当たったのだ。
「なんだよ、もう!」
愚痴を言いながらも携帯を拾おうとしたが、先に栗原が拾ってくれた。
「はい、どうぞ」
「悪いな、ありがとう」
礼を言って受け取る際に、彼女の視線が携帯画面へ向けられているのに気づく。
「へえ~、ふ~ん、そうなんだ」
「え、あ、おい、見るなよ」
「午後の授業始まるね。じゃ!」
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