異世界に招かれしおっさん、令嬢と世界を回る

いち詩緒

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第一章 王国編

第24話 話す馬

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 今日は乗馬訓練や兵器の扱い方の訓練をするのだという。この世界では前の世界の兵器のような見た目のものもあるが扱い方が違うようなので覚えておかないと操作が難しそうである。

 その他には古代で使われていたような兵器もいくつかある。何はともあれまずは乗馬だというので乗馬の練習をする。
 前の世界では馬と心を通わせるのも時間がかかりそうだし、何度乗っても機嫌の悪い馬がいるし、難しそうだったがこの世界の乗馬は非常に楽である。

 前の世界でも乗馬をしたことがあるが相性が悪そうな馬はやはり乗る事自体が難しかったがこの世界の馬は話せるので乗せたくないとかが分かるので簡単だ。
 馬もどうしたいかを尋ねるとすぐに答えるし長距離の移動でも暇をしにくい。

「前の世界の馬は話せなかったから大変だったぞ。この世界の馬は話してくれるから分かりやすくていいな」
「そりゃよかった。意思疎通が出来ないとお互い大変だからな」

「前の世界の伝説上の馬にユニコーンってのがいたんだが、処女じゃないと乗せないし後で処女じゃないって分かると発狂する馬がいたんだ。アレはどう思う?」

「ああ。俺の仲間もそんなのがいるぞ。女性兵士で処女じゃないと乗せたくないっていうやつ。そいつはしばらくその兵士と魔族領に行ったりしてお互い良い関係だったんだ。
 しかし、ある夜のことだ。魔族領の飲み屋街に消えていった彼女を見送ると馬小屋で眠る事にした。
 翌朝、今日も彼女を背に乗せて楽しい仕事だと意気込んでいたんだが様子がおかしい事に気づいたヤツは彼女に聞いた。妙に腰を浮かそうとするけど何かあったのか? ってな。すると、しどろもどろになって、今日は腰が痛くてって言ったんだ。
 ヤツも妙だと思ったらしい。連日、戦闘だったり険しい道を通って腰に負担がかかっているのにどうして今日に限って腰を浮かそうとするほど痛いのか? といっても、ヤツも心では分かっていても考えたくはなかった。
 俺たちは人間より鼻が利く。処女じゃ無くなれば体臭が変わる。それに飲み屋街にいる男だ。香水の匂いがあったり、酒の匂いがあったり。何かしらの匂いが付いているもんだ。特に男のフェロモンの匂いなんて風呂に入っても翌日の朝なら人間でも変化に気が付くくらいだ。
 なので聞いたんだ。男が出来たんじゃないかって。すると根は真面目な兵士だ。認めたんだ。酔った勢いで一夜を過ごしたってな。そしてヤツは言ったよ、王国に戻ったらもう降りてくれってな」

「悲しい話だな」
「悲しいか? 俺なら経験が全く無い方が問題だと思うけどな?」

「女ならそうだろうけどな。もしかしてメスなのか?」
「言わなかったか?」

「分からなかった。話し方もオスみたいだし」
「軍馬だからかな。俺みたいな話し方をするのも多いぞ」

「ところで俺は合格か?」

「う~ん……。なんというか、癖も無いし、人間の男としては何も感じないとかそんな感じだな。それに馬が人間に惚れたってどうしようも出来ないからある意味では理想的な関係だ」

「そうか。さて、一通り走ったしブラッシングでもしようか?」
「いいのか? なら頼む。ついでにそこにバリカンがあるからタテガミも切ってくれ」

「どんな感じで切ればいいんだ? なるべく短く切ればいいのか?」
「俺は短い方がいいな」

「牛のトリミングをしていた頃を思い出すな。眠そうな顔をしていたが?」

「気持ちいとそうなるな。俺たちはトリミングを時々はしてもらわないと毛が溜まってしまうから困るもんだ」

「浄化魔法とか風魔法とかあるが、それで一気に削いだんじゃダメなのか?」

「それでもいいぞ。むしろ風魔法で一気に削いだ方が早い。でも、こうやってブラシでかいてくれると気持ちがいいから俺はブラッシングしてもらう方がいいな」

 ブラッシングを終えると随分と綺麗になったので、オイルも塗るかと尋ねたがオイルを塗るのはあまり好みではないらしいので水洗いをして終わった。

 もしかしたらツンデレなのかもしれないとも思ったが過去に好きだった兵士と何かあったのかもしれないと思うと距離を取るのもこの世界の馬には必要な事なのかもしれないと思うところだ。

 その後は兵器の扱い方の訓練だったが、前の世界では古代で使っていたような兵器を魔法を交えて使うので様子がかなり違っていた。単純なものでも魔法を使うので威力がまるで違う。
 それに単純なので故障の心配が無いし、壊れてもすぐに替えが効く。

 一通り終えたが、まだまだあるというが他はどうするのかというと実地で訓練するようにとの事だった。前の世界でもそうだが訓練を飛ばされるのは運命なのだろうか?

 妙に訓練も急いでいるような気がするので司令官にどういう事なのかを聞いたところ、この国で長々と訓練を続けても、魔族領では魔法の使い方も違うし、時間の流れも、波動も全てが違うので、向こうで必要に応じて訓練を続けつつ、実戦もしていく方が効率がいいのだという。

 そうは言うが前の世界では短い訓練で散々な目に遭ったのでもっと伸ばしてくれないかと言い続けたが、行きたくないのは分かるが行かないと成長もないし、訓練を続ける事も出来ないぞと言っていた。

 その後もしばらく操作訓練をしたが大体終わったところでまた後日という事になった。訓練が終わったところでギルド長が用があるというので行ってみると魔族領に行く事が既に決まっているかのように、連隊に同行する傭兵と冒険者が何人か居るというのでその顔合わせだった。話が分からないのでライリーはギルド長に尋ねた。

「さっき、この世界に来て初めて兵器の扱いのレクチャーを受けたがもう魔族領に行けってのは話が早すぎないか?」
「早いのか? 武器の準備も出来たって言っていたし、司令部も計画が整ったと言っていたが?」

「なんでそんなに準備が早いんだよ?」

「ん? 訓練で適正を見て、設計部が設計して工廠で作ってお前の武器が出来て司令部はどこに配置すればいいか魔道具を使って配置を決めて終わったと言っていたな」

「早すぎだろう。何でそんなに急かすんだよ」

「なあ、行きたくないのは分かるが、行かないと向こうで困っている人間は沢山いるんだ。この国に来る事で魔族の勢力も抑えられるし、今は向こうの情勢が悪くなっている。それにあの魔道具とプリーストの未来予知は大抵、当たる。
 今がベストなタイミングなんだろう。俺は冒険者だが向こうに何度か派遣されているからそれが分かるんだ」

「そうそう。悪い事になりそうだったら手を打つのは早ければ早いほどいいって言うじゃん」

「俺の前の世界では一番の悪者を炙り出すためにしばらく泳がせるってのもやってたんだけどな?」

「それも今回は織り込み済みだ。悪の集まりは人が減るほど焦るし、離脱しようとする人間を必死で止めようとするもんだろ?」

「それはそこまで狡猾じゃない連中だから行動が読みやすい。本当に厄介なのは離脱しようとする人間の悪評を流して善人を悪人に仕立てあげて自分たちを正当化する連中だ。こういう奴らは噂の出所まで分からないようにする。
 だから先に泳がしておいてどこに悪人がいるか特定してから始末する方がいいだろう」

「だからだよ。これがギルドに来た作戦案なんだが、ここに書いてあるだろ。こちらに引き入れられそうな人間のリストとその周りの人間がどう行動するかの予測リストだ」

「こんな事まで分かるのか。俺の出番は無いんじゃないか?」

「いいや。これはあくまでも予測だからな。実際に行くと時間の流れが違うから予測していた状況と違う事はままある事だ」

「はあ……」

 何をどう言っても魔族領行きは避けられそうもないし、延長も出来なさそうだ。まあ、前の世界に比べたら徹底して分析しているようだし、無理強いもしていない。作戦に関わる人間が皆、優秀な証拠だ。

 しばらくするとソフィアとカセムも来て、一通り皆に挨拶をした。その後は食事でもするかとギルドに併設されているレストランに向かう事にした。
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