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第二章 魔族領編
第33話 怪しい農場
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―― 夢の中 ――
見る景色全てが美しく、幻想的な雰囲気を出しているのに生き生きとした草木のハッキリとした存在感がいつもの夢だと理解させる。今日も丘を登りガゼボへと向かった。
着くとそこにはいつもの女性が座っていた。
「こんばんは。ご無沙汰しています。ついに魔族領へ来てしまいましたね」
「ええ。全くです。想像してたよりは大分、良い状況なのでそれは安心しましたがこの先の中枢に向かうと魑魅魍魎の跋扈する魔界なのでしょうね……」
「まあ、ここは地獄ではありませんのでそこまでではありませんが、あなたの想像だとそういうところなのかもしれませんね」
「どうしても想像してしまいます。それにハーレムが出来ると思ったのに一向にできません」
「それは魔族領の人間が仲間に加わると変わります。今は王国領の人間だけなのでハーレムが成り立ちません」
「魔族領の誰かが『仲間に加えて欲しい!』とか言ってくるのでしょうか?」
「ええ。そういう人も来ますよ。この農場より南下するとさらに治安の悪い地域に入るのですが、そこでは生きる事自体が苦しい人々も増えてきます。
そういう人たちの中には何とかして今の状況から脱出したいと思っている人も多くいますし、王国がどんなところか分からないし、馴染めるようになる自信がないからという理由であなた方の部隊と同行したいという人も現れます」
「そうなのですか。と言っても、最近、私はハーレムが出来ればいいなと思っていたのは一体何だったんだ? と思うようになってきました」
「ええ。分かっております。あなたが求めていたのはハーレムではなく善良な人々に囲まれた日々であって、それが実現すれば自然と美少女ちゃんも集まります。
前の世界でも子供に好かれる事が多かったようですが、前の世界では悪意ある情報があまりに多く、猜疑心の募った人間は必要な人間関係すら壊すものでそれがあなたの周りで起きていたというところです」
「まさにその通りですね。そして猜疑心の強い人間はまともな人間を避けるから悪い関係にばかり嵌っていくという」
「そういう事です。あなたも前の世界では腐るほど見て来た事でしょう。今いるここは次元の違う世界なので腐っているものはありえませんけどね」
「まったくです。美しい女神のような女性に色とりどりの花畑、心地よい風に耳を癒す木々のざわめき」
「まあ、あなたはまだここで暮らすには早いし、退屈になる事でしょう。さて、そろそろ目が覚めます。
今後の出会いの話はこんなところなのですが、この農場は不正が多すぎるので今日、監査が入ります。王国軍も共同で行う事に決定しましたので目が覚めてからはあなたも一仕事しましょう」
「え? あの幽霊は大丈夫じゃないかって言っていましたが?」
「霊体だからといって何でもわかる訳ではないし、興味が無かったのでしょう。でも頭の中は覗く事が出来るので協力を要請してもいいと思います」
「わかりました。それではまたお会いしましょう」
「ええ。もちろん」
―― 翌朝 ――
鶏の鳴き声で目が覚めた。牧場の朝だと実感できる。身支度をして食堂に行くと食事の用意がされており、パンにチーズ、サラダとジュースといった暑い時期にもピッタリなメニューだった。
食事中にカセムが王国から伝達があったので伝えると言った。
「みんな、聞いてくれ。王国から仕事が入った。この場では言えないので皆、食べ終わったら一旦、馬車に向かうぞ」
馬車に入ると盗聴防止の魔道具を展開し、兵士が音が漏れていないか確認をした。
カセムが今回の任務について話しだした。
「今回の任務は、この領地の憲兵隊と協力してこの農場の捜査をする事だ。内容は農場主が魔族領の魔族と取引をしており、その中に大量の媚薬等が含まれているのでその量と種類を特定する事。
何で調べるのかというと、それが王国を脅かす取引に繋がる可能性が高くなったという事が理由だそうだ」
ライリーは昨日の夜、幽霊と出会った事について話した。
「なるほどな。昨日の夜、幽霊が現れてここの農場主夫妻は欲望に任せて酒池肉林の宴と不倫を繰り返しているって話していたのか。
資料にも大量の不正が見つかっていると書いてあるし、宴で周りの機嫌を取るのはよくあることだからな。みんな、届いた資料を確認したら収納魔法で格納しておけ。見られたらまずい」
馬車から出ると、憲兵隊が到着したところだった。カセムが隊長に挨拶をした。
「俺はこの部隊の隊長のカセムだ。よろしくな」
「ああ。こちらこそよろしく。そちらにも資料が届いたと思うが、持っているか?」
「ああ。全員に配布した。内容を見せられないのは悪いけどな」
「それはお互い様だ。それに、今回の任務はお互いが力を合わせる必要がある。よろしく頼む」
「ああ。もちろんだ」
そう言うと彼らは握手を交わした。
憲兵隊長は言った。
「では、我々は農場主とその周囲の人間に事情聴取を行う。そちらは農場内に不自然な施設や物品が無いかの確認等があったと思うが?」
「まずはそれだな。こちらは魔族領側の人間ではないので事情聴取をするには勝手が分からない事もあるからな。確認するうえで、農場内の人間とは話す必要があるが、それについて何か問題がある事はあるか?」
「特にはない。だが、農場の従業員に魔族が紛れ込んでいる可能性もあるから魔道具は常に使いながら注意して話して欲しい」
「分かった。では」
そう言うと、憲兵隊は農場主の住まう豪邸へと向かった。一体、どれほどの広さなのかと思わせる豪勢で成金趣味な家に住んでいるのはどんな顔をした農場主なのかは分からないが力を誇示するような事をする輩は大抵、裏がある。
酒池肉林の宴に豪華すぎる家。これから連想されるのは太っている姿だが不倫をしまくっていると言うので案外、運動不足ではなく痩せているのかもしれない。
そんな事を考えていると、調査をする牧場エリアに到着した。海際の断崖にある牧場で、馬、牛、羊、豚が見える。全て話せたらトンカツとかモツ煮とか食べられないじゃないかと思っていると、妙な雰囲気の馬車が近づいて来た。
―― 馬車の荷台 ――
「なあ、お前らはどこから来たんだよ?」
一人のコボルドがワ―キャットとワーウルフに尋ねた。
「俺は山間の町から出稼ぎに出てきたぜ」
「俺は向こうの港町から来た」
二人が答えると、コボルドは得意げに話しだした。
「俺は魔族のやろうに頼まれて商品を運んでいたところを憲兵に捕まってな。牢に入れられていたが、ここの農場主に安値で雇われた。報酬はほとんど無いに等しいがしばらく働いていたら刑期も短くしてやるってんで来てやった」
「俺もそうだ。向こうの港町に運ばれたのを怪しい商人に引き渡していたところを捕まって、牢に入れられた。後は似たようなもんだな」
そう、ワ―キャットが答えると、ワーウルフも話しだした。
「何だ、お前らコソコソやって見つかって捕まったって? 情けねえなあ」
「じゃあ、お前は何でこんな馬車に乗ってんだよ?」
コボルドが尋ねた。
「俺はお前らと違って、用心棒として雇われてたんだよ。ある魔族が『俺はいつも狙われているから守れ』ってな。報酬も高かったし」
「じゃあ、その強いお前は誰かに倒されたって事だな」
「ああ。そうだ。卑怯な手を使って来やがった。魔族が『おかしい、誰か近づいて来た』ってんで、部屋の外に見に行ったんだ。誰も居ねえなって思って振り向くと桃色の粉をかけられた。気が付いた時には牢に居たってこった」
「腕っぷしが役に立たなかったって訳だな。雌犬の匂いでもしたのか?」
「うるせえな! その腕をへし折ってやろうか!」
馬車が止まり、荷台の扉を開けた農夫は言った。
「降りろ、クソ共! また牢に入りたくなけりゃこれからキリキリ働け!」
そう言うと、罪人を下ろし畜舎の掃除をさせていた。それを見ていたライリーはこの獣人たちなら美味い酒と食事で何でも話すと確信した。
見る景色全てが美しく、幻想的な雰囲気を出しているのに生き生きとした草木のハッキリとした存在感がいつもの夢だと理解させる。今日も丘を登りガゼボへと向かった。
着くとそこにはいつもの女性が座っていた。
「こんばんは。ご無沙汰しています。ついに魔族領へ来てしまいましたね」
「ええ。全くです。想像してたよりは大分、良い状況なのでそれは安心しましたがこの先の中枢に向かうと魑魅魍魎の跋扈する魔界なのでしょうね……」
「まあ、ここは地獄ではありませんのでそこまでではありませんが、あなたの想像だとそういうところなのかもしれませんね」
「どうしても想像してしまいます。それにハーレムが出来ると思ったのに一向にできません」
「それは魔族領の人間が仲間に加わると変わります。今は王国領の人間だけなのでハーレムが成り立ちません」
「魔族領の誰かが『仲間に加えて欲しい!』とか言ってくるのでしょうか?」
「ええ。そういう人も来ますよ。この農場より南下するとさらに治安の悪い地域に入るのですが、そこでは生きる事自体が苦しい人々も増えてきます。
そういう人たちの中には何とかして今の状況から脱出したいと思っている人も多くいますし、王国がどんなところか分からないし、馴染めるようになる自信がないからという理由であなた方の部隊と同行したいという人も現れます」
「そうなのですか。と言っても、最近、私はハーレムが出来ればいいなと思っていたのは一体何だったんだ? と思うようになってきました」
「ええ。分かっております。あなたが求めていたのはハーレムではなく善良な人々に囲まれた日々であって、それが実現すれば自然と美少女ちゃんも集まります。
前の世界でも子供に好かれる事が多かったようですが、前の世界では悪意ある情報があまりに多く、猜疑心の募った人間は必要な人間関係すら壊すものでそれがあなたの周りで起きていたというところです」
「まさにその通りですね。そして猜疑心の強い人間はまともな人間を避けるから悪い関係にばかり嵌っていくという」
「そういう事です。あなたも前の世界では腐るほど見て来た事でしょう。今いるここは次元の違う世界なので腐っているものはありえませんけどね」
「まったくです。美しい女神のような女性に色とりどりの花畑、心地よい風に耳を癒す木々のざわめき」
「まあ、あなたはまだここで暮らすには早いし、退屈になる事でしょう。さて、そろそろ目が覚めます。
今後の出会いの話はこんなところなのですが、この農場は不正が多すぎるので今日、監査が入ります。王国軍も共同で行う事に決定しましたので目が覚めてからはあなたも一仕事しましょう」
「え? あの幽霊は大丈夫じゃないかって言っていましたが?」
「霊体だからといって何でもわかる訳ではないし、興味が無かったのでしょう。でも頭の中は覗く事が出来るので協力を要請してもいいと思います」
「わかりました。それではまたお会いしましょう」
「ええ。もちろん」
―― 翌朝 ――
鶏の鳴き声で目が覚めた。牧場の朝だと実感できる。身支度をして食堂に行くと食事の用意がされており、パンにチーズ、サラダとジュースといった暑い時期にもピッタリなメニューだった。
食事中にカセムが王国から伝達があったので伝えると言った。
「みんな、聞いてくれ。王国から仕事が入った。この場では言えないので皆、食べ終わったら一旦、馬車に向かうぞ」
馬車に入ると盗聴防止の魔道具を展開し、兵士が音が漏れていないか確認をした。
カセムが今回の任務について話しだした。
「今回の任務は、この領地の憲兵隊と協力してこの農場の捜査をする事だ。内容は農場主が魔族領の魔族と取引をしており、その中に大量の媚薬等が含まれているのでその量と種類を特定する事。
何で調べるのかというと、それが王国を脅かす取引に繋がる可能性が高くなったという事が理由だそうだ」
ライリーは昨日の夜、幽霊と出会った事について話した。
「なるほどな。昨日の夜、幽霊が現れてここの農場主夫妻は欲望に任せて酒池肉林の宴と不倫を繰り返しているって話していたのか。
資料にも大量の不正が見つかっていると書いてあるし、宴で周りの機嫌を取るのはよくあることだからな。みんな、届いた資料を確認したら収納魔法で格納しておけ。見られたらまずい」
馬車から出ると、憲兵隊が到着したところだった。カセムが隊長に挨拶をした。
「俺はこの部隊の隊長のカセムだ。よろしくな」
「ああ。こちらこそよろしく。そちらにも資料が届いたと思うが、持っているか?」
「ああ。全員に配布した。内容を見せられないのは悪いけどな」
「それはお互い様だ。それに、今回の任務はお互いが力を合わせる必要がある。よろしく頼む」
「ああ。もちろんだ」
そう言うと彼らは握手を交わした。
憲兵隊長は言った。
「では、我々は農場主とその周囲の人間に事情聴取を行う。そちらは農場内に不自然な施設や物品が無いかの確認等があったと思うが?」
「まずはそれだな。こちらは魔族領側の人間ではないので事情聴取をするには勝手が分からない事もあるからな。確認するうえで、農場内の人間とは話す必要があるが、それについて何か問題がある事はあるか?」
「特にはない。だが、農場の従業員に魔族が紛れ込んでいる可能性もあるから魔道具は常に使いながら注意して話して欲しい」
「分かった。では」
そう言うと、憲兵隊は農場主の住まう豪邸へと向かった。一体、どれほどの広さなのかと思わせる豪勢で成金趣味な家に住んでいるのはどんな顔をした農場主なのかは分からないが力を誇示するような事をする輩は大抵、裏がある。
酒池肉林の宴に豪華すぎる家。これから連想されるのは太っている姿だが不倫をしまくっていると言うので案外、運動不足ではなく痩せているのかもしれない。
そんな事を考えていると、調査をする牧場エリアに到着した。海際の断崖にある牧場で、馬、牛、羊、豚が見える。全て話せたらトンカツとかモツ煮とか食べられないじゃないかと思っていると、妙な雰囲気の馬車が近づいて来た。
―― 馬車の荷台 ――
「なあ、お前らはどこから来たんだよ?」
一人のコボルドがワ―キャットとワーウルフに尋ねた。
「俺は山間の町から出稼ぎに出てきたぜ」
「俺は向こうの港町から来た」
二人が答えると、コボルドは得意げに話しだした。
「俺は魔族のやろうに頼まれて商品を運んでいたところを憲兵に捕まってな。牢に入れられていたが、ここの農場主に安値で雇われた。報酬はほとんど無いに等しいがしばらく働いていたら刑期も短くしてやるってんで来てやった」
「俺もそうだ。向こうの港町に運ばれたのを怪しい商人に引き渡していたところを捕まって、牢に入れられた。後は似たようなもんだな」
そう、ワ―キャットが答えると、ワーウルフも話しだした。
「何だ、お前らコソコソやって見つかって捕まったって? 情けねえなあ」
「じゃあ、お前は何でこんな馬車に乗ってんだよ?」
コボルドが尋ねた。
「俺はお前らと違って、用心棒として雇われてたんだよ。ある魔族が『俺はいつも狙われているから守れ』ってな。報酬も高かったし」
「じゃあ、その強いお前は誰かに倒されたって事だな」
「ああ。そうだ。卑怯な手を使って来やがった。魔族が『おかしい、誰か近づいて来た』ってんで、部屋の外に見に行ったんだ。誰も居ねえなって思って振り向くと桃色の粉をかけられた。気が付いた時には牢に居たってこった」
「腕っぷしが役に立たなかったって訳だな。雌犬の匂いでもしたのか?」
「うるせえな! その腕をへし折ってやろうか!」
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