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第二章 魔族領編
第34話 牧場エリア
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三人組の獣人から事情聴取を行うにあたり、接待をすれば更に話しやすくなるのではないかと思ったライリーは憲兵隊長に尋ねてみた。
「馬車から降りて来たあの罪人の三人組が話していたんだが、全員が同じ魔族と関わっているような発言をしていた。
ここの農場主と関りのある魔族について何かを知っている可能性がかなり高いと思う。なので、美味い酒と食事を提供すれば何でも話しそうだが、獣人を使ってもてなせば更に確実かと思うんだがどうだろう?」
「良い案だ。私も先ほど農場主から話を聞いたが、どうも引っかかる人物が一人いる。誤魔化そうとしているがこちらでも把握している町で妙な動きをしていると思われる魔族と特徴が一致する」
「なら、仕掛けるか? 獣人はどうやって用意する?」
「それはこちらで手配しよう。接待をする獣人二人を信頼性の高い店から用意する。後の一人は私の部隊から行かせるとしよう」
話の分かる隊長で良かった。この憲兵隊も良い上司に恵まれて仕事がしやすいだろう。前の世界の上司は隠し事が多すぎて信用出来ない人間があまりに多かった。
そんな前の世界の事を思い出していると、妙に色っぽい犬獣人が歩いて来た。
「え? ライリーにソフィアに、カセム隊長!」
よく見れば犬獣人のアリアンヌで王国でクレールを追いかけて以来、姿を見ていなかったがどうしてこんなところに居るのかとソフィアは尋ねてみた。
「え? アリアンヌ? どうしてこの農場にいるの?」
「やっぱりソフィアだ。何でこの農場に?」
「あの後、魔族領での活動を王女陛下から拝命してね。カセムの部隊と来てるんだ」
「へえ。思ったより状況が悪くなっているのかもしれないね。私はあれから、魔族領へ行く商人の護衛任務に就いていたんだけど、取引をする街でイイ男を見つけてね。
しばらくこの街に居たいって商人に言ったら『荷物は全て渡したから一人くらい減っても大丈夫だ』って言うから帰りは私抜きで帰って行ったんだ」
「ええ……また? そうやってとっかえひっかえして、都合よく現れたからって今度はライリーってわけ? ねえ!」
ソフィアの顔が徐々に怒りで赤くなっていった。
「ねえ、そんなに怒んないでよ。私が軽い女だってのは知ってるでしょ? それに今日は獣人の接待とか私にピッタリの仕事だよ」
「もう! まあ、仕方ないけど。そのイイ男っていう人はどうしたの?」
「それがねえ。『俺はこれから彼女と首都に行く! あばよ!』とか抜かして去っていったよ」
「自業自得だね。恋多き女がカッコいいとかいつの時代の話?」
「この辺りじゃ普通みたい」
任務に関わるのでカセムはどこの所属になっているのかを確認するためにアリアンヌに尋ねた。
「アリアンヌ、お前は今、どこの所属になっているんだ?」
「王国冒険者ギルド所属だよ。路銀が無くなったから魔族領冒険者ギルドの憲兵隊のクエストを受注したよ」
「であれば、今回は王国軍と憲兵隊の共同任務なので王国軍の指示にも従って貰うぞ。いいな?」
「いいよ。どうすればいい?」
「とりあえずは憲兵隊長の指示に従ってくれ。夜に向こうに停めてある馬車でミーティングをするから参加するように」
「わかった。ねえ、ライリーは何か良い案でもあるの?」
尋ねられたライリーは答えた。
「ああ。三人組の獣人たちはどうやら同じ魔族に関わっている罪人で、情報を引き出すのにちょうどいいと思ってな。
会話内容からして忠誠心とかは見られないし、とりあえず裏の仕事をやったみたいな感じだから美味い酒と食事と良い女がいればすぐに話すと思ったんだ」
「なるほどねえ。じゃあ、その後は……」
嫌な感覚を覚えたソフィアは言った。
「ねえ、今夜は長くなるからそんな時間は無いよ」
妙に圧を感じる顔をしているソフィアを他所に、怪しいものが無いかを確認する必要もあるので、しばらく牧場エリアを歩いていると、魔族領に一緒に来た馬がいた。
「お? ライリーだな」
「草でも食べに来たのか?」
「それもあるんだが、今回の任務に関係する話をここらの馬に聞くついでにユニコーンについて聞いてやったぞ」
「どうだったんだ? いたのか?」
「コイツが話してくれるぞ」
そう言うとまさにユニコーンにしか見えない馬が現れた! 驚いたライリーは言った。
「うお! ユニコーン!」
「何だ? 俺の事か?」
「ああ。どこをどう見てもユニコーンだ。まさか牧場に居るとはなあ」
「それじゃあ、お前さんのいた世界に居る幻想的な馬が俺みたいな馬ってわけか。まあ、俺は一角馬なんだけどな」
「そうなのか? この世界じゃ普通にいる馬なのか?」
「ああ。場所によっちゃあ、群れでいる事もあるぞ。それに俺はお前さんの世界のと違って、男か女かも、獣人かも関係なく、清くなくても乗せるぞ」
「バイコーンって言う、経験者しか乗せたくないって言う馬も居るんだが、それは知らないか?」
「どんなヤツなんだ?」
「角が二本ある馬で、あまり綺麗とは言えない色をしているな」
「ああ。いるいる。経験者しか乗せたくないってヤツは聞いたことがないけどな」
「なあ、頼みがあるんだが、いいか?」
「何だ?」
「ここに経験が豊富過ぎるアリアンヌが居るんだが、乗っているところを見たいんだが乗せてもらってもいいか?」
「いいぞ」
そう言うとアリアンヌは馬の背に乗った。
「おお~。これが矛盾した光景であり発狂するかもしれない光景か」
感心するライリーを他所にアリアンヌと馬は呆れ顔で言った。
「ねえ、私が乗っているのを見て楽しいの? もしかしてそういう趣味があるとか?」
「ヤレヤレ。本当に豊富過ぎるヤツだな。乗っているだけで分かる。腰の動きが自然と俺の背中の動きに合わせて動いてやがる」
馬にまで言われるのを見てライリーは言った。
「これは今夜の任務に本当にピッタリだな。ところで、豚と牛と羊もいるがみんな馬みたいに人間と話せるのか?」
アリアンヌは答えた。
「ううん。みんな話せないんだ。でも、妖精は話せるよ。クレールみたいに妖精の猫は喋れるけど普通の猫は話せないのと同じ」
「それだと馬もそうじゃないのかと思うんだが?」
「ああ。でもね、馬は他の動物と話せるから通訳してもらう事は出来るよ」
「それは素晴らしいな。じゃあ、この羊は何て言ってるんだ?」
馬は羊と話しだした。
『転移者か。他の世界からわざわざご苦労なこった。俺たちはここでウロウロしているだけの人生、毛も人生も狩られるってな』
「と、この羊は言ってるぞ」
「これ以上は聞かない方がいいような気がしてきた」
「ちなみにここにいるカッコつけてる牛はこう言ってるぞ」
『あら? 良い男ね。舐めようかしら?』
「俺のいた世界じゃブラッシングしていると舐めてきたり服を引っ張ったりしてきたな。なんであんな事をするのかは分からなかったが」
「こっちの豚は、こんな事を言っているぞ」
『可愛い娘が近づいて来たら見上げるがパンツが見える事はあまりない。何故ならここで働いている子はみんな作業ズボンだからだ。アリアンヌ、俺の前に立ってくれ!』
「だとよ」
そう言われたアリアンヌは豚の前に立った。
『ああ……。スパッツ……』
そう言うと豚は去っていった。
「牧場暮らしの動物視点は想像とかなり違ったな。意外な話だった」
「そりゃ、同じ草原をウロウロするしかない毎日なんだから楽しみを探すのに疲れておかしくなるのもいるってもんだ。どこも似たようなもんだぞ」
「それもそうか。良い話が聞けた。俺たちはしばらくこの農場に居るからまた何かあればよろしくな」
そう言うとライリー達は一旦、宿泊所に戻った。
「馬車から降りて来たあの罪人の三人組が話していたんだが、全員が同じ魔族と関わっているような発言をしていた。
ここの農場主と関りのある魔族について何かを知っている可能性がかなり高いと思う。なので、美味い酒と食事を提供すれば何でも話しそうだが、獣人を使ってもてなせば更に確実かと思うんだがどうだろう?」
「良い案だ。私も先ほど農場主から話を聞いたが、どうも引っかかる人物が一人いる。誤魔化そうとしているがこちらでも把握している町で妙な動きをしていると思われる魔族と特徴が一致する」
「なら、仕掛けるか? 獣人はどうやって用意する?」
「それはこちらで手配しよう。接待をする獣人二人を信頼性の高い店から用意する。後の一人は私の部隊から行かせるとしよう」
話の分かる隊長で良かった。この憲兵隊も良い上司に恵まれて仕事がしやすいだろう。前の世界の上司は隠し事が多すぎて信用出来ない人間があまりに多かった。
そんな前の世界の事を思い出していると、妙に色っぽい犬獣人が歩いて来た。
「え? ライリーにソフィアに、カセム隊長!」
よく見れば犬獣人のアリアンヌで王国でクレールを追いかけて以来、姿を見ていなかったがどうしてこんなところに居るのかとソフィアは尋ねてみた。
「え? アリアンヌ? どうしてこの農場にいるの?」
「やっぱりソフィアだ。何でこの農場に?」
「あの後、魔族領での活動を王女陛下から拝命してね。カセムの部隊と来てるんだ」
「へえ。思ったより状況が悪くなっているのかもしれないね。私はあれから、魔族領へ行く商人の護衛任務に就いていたんだけど、取引をする街でイイ男を見つけてね。
しばらくこの街に居たいって商人に言ったら『荷物は全て渡したから一人くらい減っても大丈夫だ』って言うから帰りは私抜きで帰って行ったんだ」
「ええ……また? そうやってとっかえひっかえして、都合よく現れたからって今度はライリーってわけ? ねえ!」
ソフィアの顔が徐々に怒りで赤くなっていった。
「ねえ、そんなに怒んないでよ。私が軽い女だってのは知ってるでしょ? それに今日は獣人の接待とか私にピッタリの仕事だよ」
「もう! まあ、仕方ないけど。そのイイ男っていう人はどうしたの?」
「それがねえ。『俺はこれから彼女と首都に行く! あばよ!』とか抜かして去っていったよ」
「自業自得だね。恋多き女がカッコいいとかいつの時代の話?」
「この辺りじゃ普通みたい」
任務に関わるのでカセムはどこの所属になっているのかを確認するためにアリアンヌに尋ねた。
「アリアンヌ、お前は今、どこの所属になっているんだ?」
「王国冒険者ギルド所属だよ。路銀が無くなったから魔族領冒険者ギルドの憲兵隊のクエストを受注したよ」
「であれば、今回は王国軍と憲兵隊の共同任務なので王国軍の指示にも従って貰うぞ。いいな?」
「いいよ。どうすればいい?」
「とりあえずは憲兵隊長の指示に従ってくれ。夜に向こうに停めてある馬車でミーティングをするから参加するように」
「わかった。ねえ、ライリーは何か良い案でもあるの?」
尋ねられたライリーは答えた。
「ああ。三人組の獣人たちはどうやら同じ魔族に関わっている罪人で、情報を引き出すのにちょうどいいと思ってな。
会話内容からして忠誠心とかは見られないし、とりあえず裏の仕事をやったみたいな感じだから美味い酒と食事と良い女がいればすぐに話すと思ったんだ」
「なるほどねえ。じゃあ、その後は……」
嫌な感覚を覚えたソフィアは言った。
「ねえ、今夜は長くなるからそんな時間は無いよ」
妙に圧を感じる顔をしているソフィアを他所に、怪しいものが無いかを確認する必要もあるので、しばらく牧場エリアを歩いていると、魔族領に一緒に来た馬がいた。
「お? ライリーだな」
「草でも食べに来たのか?」
「それもあるんだが、今回の任務に関係する話をここらの馬に聞くついでにユニコーンについて聞いてやったぞ」
「どうだったんだ? いたのか?」
「コイツが話してくれるぞ」
そう言うとまさにユニコーンにしか見えない馬が現れた! 驚いたライリーは言った。
「うお! ユニコーン!」
「何だ? 俺の事か?」
「ああ。どこをどう見てもユニコーンだ。まさか牧場に居るとはなあ」
「それじゃあ、お前さんのいた世界に居る幻想的な馬が俺みたいな馬ってわけか。まあ、俺は一角馬なんだけどな」
「そうなのか? この世界じゃ普通にいる馬なのか?」
「ああ。場所によっちゃあ、群れでいる事もあるぞ。それに俺はお前さんの世界のと違って、男か女かも、獣人かも関係なく、清くなくても乗せるぞ」
「バイコーンって言う、経験者しか乗せたくないって言う馬も居るんだが、それは知らないか?」
「どんなヤツなんだ?」
「角が二本ある馬で、あまり綺麗とは言えない色をしているな」
「ああ。いるいる。経験者しか乗せたくないってヤツは聞いたことがないけどな」
「なあ、頼みがあるんだが、いいか?」
「何だ?」
「ここに経験が豊富過ぎるアリアンヌが居るんだが、乗っているところを見たいんだが乗せてもらってもいいか?」
「いいぞ」
そう言うとアリアンヌは馬の背に乗った。
「おお~。これが矛盾した光景であり発狂するかもしれない光景か」
感心するライリーを他所にアリアンヌと馬は呆れ顔で言った。
「ねえ、私が乗っているのを見て楽しいの? もしかしてそういう趣味があるとか?」
「ヤレヤレ。本当に豊富過ぎるヤツだな。乗っているだけで分かる。腰の動きが自然と俺の背中の動きに合わせて動いてやがる」
馬にまで言われるのを見てライリーは言った。
「これは今夜の任務に本当にピッタリだな。ところで、豚と牛と羊もいるがみんな馬みたいに人間と話せるのか?」
アリアンヌは答えた。
「ううん。みんな話せないんだ。でも、妖精は話せるよ。クレールみたいに妖精の猫は喋れるけど普通の猫は話せないのと同じ」
「それだと馬もそうじゃないのかと思うんだが?」
「ああ。でもね、馬は他の動物と話せるから通訳してもらう事は出来るよ」
「それは素晴らしいな。じゃあ、この羊は何て言ってるんだ?」
馬は羊と話しだした。
『転移者か。他の世界からわざわざご苦労なこった。俺たちはここでウロウロしているだけの人生、毛も人生も狩られるってな』
「と、この羊は言ってるぞ」
「これ以上は聞かない方がいいような気がしてきた」
「ちなみにここにいるカッコつけてる牛はこう言ってるぞ」
『あら? 良い男ね。舐めようかしら?』
「俺のいた世界じゃブラッシングしていると舐めてきたり服を引っ張ったりしてきたな。なんであんな事をするのかは分からなかったが」
「こっちの豚は、こんな事を言っているぞ」
『可愛い娘が近づいて来たら見上げるがパンツが見える事はあまりない。何故ならここで働いている子はみんな作業ズボンだからだ。アリアンヌ、俺の前に立ってくれ!』
「だとよ」
そう言われたアリアンヌは豚の前に立った。
『ああ……。スパッツ……』
そう言うと豚は去っていった。
「牧場暮らしの動物視点は想像とかなり違ったな。意外な話だった」
「そりゃ、同じ草原をウロウロするしかない毎日なんだから楽しみを探すのに疲れておかしくなるのもいるってもんだ。どこも似たようなもんだぞ」
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