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第一章 王国編
第3話 新たなる世界②
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客間から足早に去ろうとするソフィアだが、ネグリジェ姿であった。声をかけると顔を赤くして無言で着替えだしたが俺も目が離せない。彼女があまりにも魅力的な女性であったからだ。すぐに着替え終わり、そのまま部屋を出て行った。
自分の姿はというと、ヨレたポロシャツにジャージだ。部屋の隅に目をやるとメイドがいた。
目が合うと近くにやってきたので、この恰好だと浮いてしまうだろうから何か服を貸してもらえないか尋ねると、箪笥から何着か用意してくれた。
「どれを着れば似合うと思う?」
「こちらがよろしいかと思われます。お着替えも手伝いましょう」
そう言うと古めかしいゴシック風のようなデザインのスーツを着せてくれた。
自分でも中々に似合っているような気がする。仕事ではいつもスーツを着ていたがこれならそんな感じも無いし、コスプレのような感覚である。着替え終わると、朝食の用意が出来たというので案内してくれた。
ダイニングに案内され、席に着くとソーセージにスクランブルエッグ、丸いパンにスープと中々に美味そうだ。
食べるとパンは小麦の甘い香りが鼻を抜け、濃厚なコクのある卵に、香ばしく肉汁があふれるソーセージには爽やかなソースがかけられている。スープはシンプルなコンソメのような味で野菜がたっぷりと入っており、健康的だ。
奥の席には領主であるソフィアの父親が座っている。赤い髪をしており、身長は一八〇センチ程、貴族らしいスーツを着ている彼は言った。
「我が家のシェフの作った料理は口に合ったかな?」
「私の世界にもそっくりな料理があり、この味は私の好みの味です。こちらのシェフの方はこだわりを持った丁寧な仕事をなさっているようですね」
「そうか、それはよかった。ところで君は話を聞いた感じだと地獄のような異世界から来たようだが、この世界と私の領地を気に入ってもらえるとありがたいがどうかね?」
「夢で女神のような方からいろいろと話を聞いておりますが、まだこちらの屋敷から外へ出ておりません。実際に見てみない事には何とも言えませんが窓の外から見える風景だけでも良いところだというのは分かります。
それと、確かに私にとっては地獄のような日々を過ごした世界でしたが、人によっては天国のような世界でもあります。お金や運に恵まれた人はこちらの屋敷が何件も立つような乗り物や宝石を趣味で持っており、世界中のどこへでも僅かな時間で行ける空を飛ぶ乗り物にいつも乗っては遊び惚けているという人もいます。何もない田舎に住んでいる人の中には、貧しいながらも何事にもとらわれず、自給自足で笑顔で過ごしている人もいます」
「なるほど。こちらの世界とそこまでの違いは無いようだな。世界が違っても人生とは人それぞれなんだろう。君の場合は運に恵まれなかったというところかな」
「私もそう思います。この世界では運に恵まれているようですが」
「それはいいことだ。そうそう、空き家に住みたいという事だが、鍵は後で渡そう。仕事については領地経営についてと、他にやってほしい事がいくつかあるが、まずはこの世界を見る事が必要だろうから、ソフィアと領地を見て回るといい。
娘はどうやら君を気に入っているようなので、馬車の中で手を出してもらっても構わないが、その時は私の息子になってもらう事になるな」
ソフィアは驚いて言った。
「ちょっと! お父様、そんな冗談を言ってはライリーも困るではありませんか!」
「何だ? ライリーとは結婚したくないのか? 見た感じ、仕事の出来そうな良い男じゃないか? 何が不満なんだ?」
「そんな……そうじゃなくて、私で釣り合うのか分からないし、ライリーがどんな人生を送りたいのかも分からないし……」
「ライリー。君は私の娘では不満か?」
「いえ、全く。こんな良いお嬢さんはそうそういませんよ。前の世界では似たような女性とは出会った事もありませんでした。むしろ年がかなり離れているし、そういう事では?」
「それは分からんが、君くらいの年齢の男に私の娘くらいの年の娘が嫁ぐのはよくある事なので普通の事だ。まあ、焦る事はないし考えておいてくれ」
「光栄です」
食事も終わり、ソフィアが立ち上がり「ライリー、これから領地を見て回るからついてきて」というので、領主に頭を下げて屋敷を後にした。
自分の姿はというと、ヨレたポロシャツにジャージだ。部屋の隅に目をやるとメイドがいた。
目が合うと近くにやってきたので、この恰好だと浮いてしまうだろうから何か服を貸してもらえないか尋ねると、箪笥から何着か用意してくれた。
「どれを着れば似合うと思う?」
「こちらがよろしいかと思われます。お着替えも手伝いましょう」
そう言うと古めかしいゴシック風のようなデザインのスーツを着せてくれた。
自分でも中々に似合っているような気がする。仕事ではいつもスーツを着ていたがこれならそんな感じも無いし、コスプレのような感覚である。着替え終わると、朝食の用意が出来たというので案内してくれた。
ダイニングに案内され、席に着くとソーセージにスクランブルエッグ、丸いパンにスープと中々に美味そうだ。
食べるとパンは小麦の甘い香りが鼻を抜け、濃厚なコクのある卵に、香ばしく肉汁があふれるソーセージには爽やかなソースがかけられている。スープはシンプルなコンソメのような味で野菜がたっぷりと入っており、健康的だ。
奥の席には領主であるソフィアの父親が座っている。赤い髪をしており、身長は一八〇センチ程、貴族らしいスーツを着ている彼は言った。
「我が家のシェフの作った料理は口に合ったかな?」
「私の世界にもそっくりな料理があり、この味は私の好みの味です。こちらのシェフの方はこだわりを持った丁寧な仕事をなさっているようですね」
「そうか、それはよかった。ところで君は話を聞いた感じだと地獄のような異世界から来たようだが、この世界と私の領地を気に入ってもらえるとありがたいがどうかね?」
「夢で女神のような方からいろいろと話を聞いておりますが、まだこちらの屋敷から外へ出ておりません。実際に見てみない事には何とも言えませんが窓の外から見える風景だけでも良いところだというのは分かります。
それと、確かに私にとっては地獄のような日々を過ごした世界でしたが、人によっては天国のような世界でもあります。お金や運に恵まれた人はこちらの屋敷が何件も立つような乗り物や宝石を趣味で持っており、世界中のどこへでも僅かな時間で行ける空を飛ぶ乗り物にいつも乗っては遊び惚けているという人もいます。何もない田舎に住んでいる人の中には、貧しいながらも何事にもとらわれず、自給自足で笑顔で過ごしている人もいます」
「なるほど。こちらの世界とそこまでの違いは無いようだな。世界が違っても人生とは人それぞれなんだろう。君の場合は運に恵まれなかったというところかな」
「私もそう思います。この世界では運に恵まれているようですが」
「それはいいことだ。そうそう、空き家に住みたいという事だが、鍵は後で渡そう。仕事については領地経営についてと、他にやってほしい事がいくつかあるが、まずはこの世界を見る事が必要だろうから、ソフィアと領地を見て回るといい。
娘はどうやら君を気に入っているようなので、馬車の中で手を出してもらっても構わないが、その時は私の息子になってもらう事になるな」
ソフィアは驚いて言った。
「ちょっと! お父様、そんな冗談を言ってはライリーも困るではありませんか!」
「何だ? ライリーとは結婚したくないのか? 見た感じ、仕事の出来そうな良い男じゃないか? 何が不満なんだ?」
「そんな……そうじゃなくて、私で釣り合うのか分からないし、ライリーがどんな人生を送りたいのかも分からないし……」
「ライリー。君は私の娘では不満か?」
「いえ、全く。こんな良いお嬢さんはそうそういませんよ。前の世界では似たような女性とは出会った事もありませんでした。むしろ年がかなり離れているし、そういう事では?」
「それは分からんが、君くらいの年齢の男に私の娘くらいの年の娘が嫁ぐのはよくある事なので普通の事だ。まあ、焦る事はないし考えておいてくれ」
「光栄です」
食事も終わり、ソフィアが立ち上がり「ライリー、これから領地を見て回るからついてきて」というので、領主に頭を下げて屋敷を後にした。
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