ネオ・ヴァラニア 〜アナル開発すると魔法が強くなるMMOで

なエタそ

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8.新着メッセージがあります

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 ミュラーです。
 今日も元気に『ネオ・ヴァラニア』にダイブします。
 さて、人生初のナンパエッチ(未挿入)をキメた翌日、ジルからの連絡はなかった。
 昨日の今日で僕から連絡をするのも押しが強すぎるかと思い、僕も連絡をしなかった。
 まぁ、チュートリアルをオススメしておいたし、案内を受けているなら丸一日掛かっても不思議じゃない。

 今日はどうだろう?
 数日で追いつくと言っていたが、お誘いは来るだろうか?
 RPGだけのお誘いだろうか、R18もセットだろうか?

 友達と遊ぶなど、随分と久しぶりだ。
 友人。
 友人と言うには些か邪念もあるが、このソワソワとして落ち着かない感覚は、遠足前の子供と大差ないだろうな。

「ミュラー様、メッセージが届いておりますよ」
「えっ、マジ!?」

 ログインすると執事フェニエがそう教えてくれたので、勢い良く食いついてしまった。

 メニューを開けばメッセージの確認は自分でも出来るが、プレイヤーが許可すればログ間のNPCもメッセージを閲覧出来る。「他人にプライベートを見られるようで嫌」とか「システムの過干渉はちょっと」という人もいるが、僕は全く気にならない。
 むしろ、ワーカーホリック気味の執事フェニエは嬉々として細々した作業をやりたがるので、そんなにやりたいならと彼に任せっきりにしている。
 おかげで、メッセージは全て僕宛てだが、僕よりも執事フェニエの方が詳しい。
 お店のセール情報なども、僕が欲しそうな情報や本当にお得なものだけを彼が抜粋して教えてくれるので、非常にありがたい限りである。

「メッセージって誰から? プレイヤー?」

 プレイヤーならば、相手は先日会ったジルしかいない。
 今、僕にメッセージを送ってくるような知り合いのプレイヤーは彼だけなのだ。
 あ、いや、ナンパ男の丹波さんともフレンド登録は交わしたから、厳密には2人か。

「いえ、運営からです」
「うんえい」

 スンと僕の表情が抜ける。
 はしゃいだ自分が馬鹿みたいではないか。

 執事フェニエはニコニコと微笑を崩さない。
 僕がジルからの連絡を楽しみにしていると分かってやっているのだ、この執事は。700歳にもなって大人気ないと思わないのかね?

「運営から、新イベントについてのメッセージがあります。お読み致しますか?」
「新イベント!?」

 なんと、『ネオ・ヴァラニア』初のイベントとは。
 運営がイベント告知をした事も驚きだが、随分と早い展開だな。
 期間は?
 開始はいつからだ?

「原文と要点を表示、かい摘んで教えて」
「畏まりました」

 執事フェニエの説明を聞きながら、運営の告知文を確認する。

 告知によると、イベント名は「精霊達の春祭」。
 期間はリアルタイムで10日間。『ネオ・ヴァラニア』の1日はリアルだと6時間なので、『ネオ・ヴァラニア』内だと40日間イベントが開催されている事になる。
 イベントの開始は、次のメンテナンス明けから。リアルタイムだと来週だ。
 
「『ネオ・ヴァラニア』には数多あまたの精霊が存在します。『精霊達の春祭』とは、春に精霊が一堂に会する時期の事。精霊につられて下位精霊達が大地を賑やかすので、人々もそれにあやかって連日祝祭を開くのです」
「へぇ、そんな文化があるんだ。神無月の出雲みたいだな」

 日本では大昔に10月を神無月と呼んでいたが、それは神様達が出雲国へ集うからであり、逆に神の集う出雲国では神無月ではなく神有月と呼んでいたという。
 精霊大集合だなんて、聞いただけで楽しそう。
 もっとも、『精霊達の春祭』は毎回開催地が異なる上に、正確な場所までは分からないという。
 それでも、精霊が不在になる場所ですら下位精霊が増えるから、ほぼ全ての土地でお祭り騒ぎになるようだ。

「風と花の街フロランティアはその名の通り、風を司る精霊ウィンティアと、花を司る精霊フローラのお膝元ですから、街も非常に賑やかになりますよ」
「あ、風と花の街フロランティアって精霊の名前が元になってたのか。それなら順番的に『花と風』の方が分かりやすいけど」
「お互い譲り合った結果、そうなったそうですよ。街の起源を演劇にしたものの中に、『風を先に冠するなら、街の名はフローラの名前を先にしよう』というウィンティアの台詞があります。ウィンティアとフローラは仲が良いのです」
「へぇ。フェニエは本当に博識だね。精霊に会った事あるの?」

 フェニエは返事をせず、ニコリと微笑した。
 うーん、ミステリアス。
 あれか。精霊には実際に会って、自分の目で見て確かめろという意味か。
 一から十まで教えてもらっていては楽しみが減るし。

「精霊は滅多に出会えませんが、足を広げれば下位精霊には誰でも会えますよ。友好的に接すれば、この時期の下位精霊は『春祭の花弁』をお土産に渡してくれるので、街の指定場所までお持ちください。春祭の終わりに、街長が精霊ウィンティアとフローラに奉納しますから」

 つまり、妖精に会い、特定のアイテムを集めると、報酬を貰えるタイプのイベントだな。

「じゃあ、とにかくフィールドに出れば良い感じ?」
「いえ、確かに下位精霊は自然の中に多くいますが、街中でも下位精霊に会えますよ。下位精霊は生命の営みが好きなので、そういう行為をしていれば向こうから勝手に来るのです」

 お茶を飲んでいたらブハッと吹き出していただろう。

「せ、生命の営みって」
「直截的に申しますと、セックスです」

 足を広げたら下位精霊に会えるって、そういう事?
 「足を広げる」が、「遠出する」と「股を開く」のダブルミーニングとか気付かんわ。

「アナニーじゃ駄目?」
「アナニーで新しい生命が誕生するのなら、アナニーでも可能かと」

 アナニーで子供は出来ないし、出来たら僕は困っちゃうなぁ。
 でも、そりゃそうか。「R18とRPGが同時に楽しめる」を売りにしている『ネオ・ヴァラニア』が、どちらか片方だけを贔屓したイベントを最初にする訳がない。

「え、じゃあアナルセックスは?」
「下位精霊にはアナルとヴァギナの違いが分からないそうなので、アナルセックスもセックスと見做されるでしょうね」

 ぐぬぬ。
 男体プレイヤー、女体プレイヤー双方に配慮するくせに、ソロプレイヤーへの配慮が足りないんじゃないか?
 MMOだからもっと人と交流しろという僕への当てつけかな。
 あるいは、街のお店を利用するよう仕向けて、お金を落とさせる魂胆か。
 何にせよ、僕がセックスする事は無いから、イベント中はR18よりフィールドワーク中心だな。

「それにしても、セックスが好きだなんて、精霊のイメージと違うなぁ」
「セックスというか、生命の営み……生命そのものが好きなのですよ。
 精霊は自然そのものであり、生命の根源の象徴。精霊が元気だとこの世は栄えますし、精霊が居なくなる時は、この世の終わり。
 新種創造や生命繁栄は精霊の最たる力の表れですから、精霊を信奉する下位精霊達は生命そのものを歓迎します。同様に、生命に繋がる行為、セックスも歓迎するという話です」
「産めよ増やせよ、って訳か」

 ますます僕には関係無いな。
 自然生殖なんて僕の対極だ。子作りする予定もなければ、相手もいないし。
 下位精霊に会った暁には、喧嘩を売らない様に気をつけよう。

 はて、粗方お知らせ内容の確認は済んだ。
 今日はこの後どうするか。
 などと考え出した頃、執事フェニエが口角を上げて告げた。

「ミュラー様、メッセージが届いておりますよ」

 僕が胡乱な目を向けたのも仕方がないと思う。
 フェニエには前科があるから。
 どうせ、良くてセール情報、悪ければ無意味なセールス情報だろう。

「どこから?」
「プレイヤー、ジル様からです」
「自分で確認して返事するから!」
「畏まりました」

 本当にこの執事、大人気ないな!
 大人しいのは口調と物腰だけに違いない。
 勿論、僕の反応が思春期の子供じみいるのは棚に上げておく。

「ああ、もうっ、行ってきます!」
「はい。感度良好、システムに異常はございません。どうぞ、お気をつけていってらっしゃいませ」

 深々と頭を下げる執事フェニエを背に、僕は逃げる様にして風と花の街フロランティアへと駆け込んだ。


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