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第四十九話 「だめ、選べない」※

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 アンニーナは抵抗できず、ラウリに口のなかを蹂躙されるのに甘んじていた。上顎の内側を舐められて、ずくんっと腰が跳ねる。膣に咥えこんだエサイアスをぎゅっと締め付けるかたちになって、背後から「うぅ……っ」と快楽に染まったうめき声がこぼれた。
 夫とキスした彼女の唇全体がぬるっとして、口の端から唾液がこぼれる。接吻から解放されたとき、今にも途切れそうな銀の糸がアンニーナとラウリを繋いでいた。
 
「あ、はぁ……っ」
「アンニーナ」
「どういうこと、ですか……?」

 ――この人に知られるのが怖くてたまらなかったのに。わたし一人騙されて。

 「泣くなよ」
 
 ボタボタと涙がラウリの顔や首筋に落ちる。手が自由にならず涙を拭うことも出来ない彼女の頭を、ラウリはよしよしと撫でた。
 
「エサイアス様も、あなたもいったい……? ――あああ……っ!」
「アン、……アンのなか締め付けてきて、きもちいいです……っ」

 夫婦の会話の最中というのに、快楽に飲まれたエサイアスによりガツンッガツンッと容赦なく膣奥をえぐられる。アンニーナは強い衝撃に何も考えられなくなった。
 
「や……ああん……っ! エサイアスさまの、おおき……ぃ」
「こんなときにも、僕を褒めてくれるんですか、……アン……っ!」
「俺の前でそんな声を出すなよ、口塞いでやる」
 
 ラウリはそう言うなり、ディープキスを再開させる。アンニーナが口の快感を感じるにつれ、蜜壺がキュンキュンと収縮を繰り返す。背後のエサイアスの腰の動きが勢いを増し、打ち付けらるたびに身体が浮いた。

「ああ、そんなにめいっぱい締め付けないでください」

 背後から聞こえてくるエサイアスの声は、もはや懇願に近い。
 ラウリは一旦彼女の腰を掴んで、自分の顔の横に両手をつけさせる。顔の前に来たアンニーナのシャツのボタンを外し、露わになった肌着の紐をほどいた。ぽろんと小振りのサイズの乳房が露わになる。エサイアスの激しい動きに合わせて、柔肉が白い残像をつくった。
 ラウリはそれに手を添えると、舌を伸ばして乳腺に刺激を与えるように乳首をねぶる。

「んん……っ、だめ……っ、あああっ、ん」
「ん? 気持ちいいか?」

 夫はもう片方の血の昇った尖りも摘まみ、ぐにぐにと刺激を与えてきた。唾液と絡めてじゅるっと吸われると、切ないほど求められている気がする。グミのように硬くなった乳首を執拗に刺激されると、膣へのピストンと相まってよりいっそう快楽を感じた。アンニーナの身体が甘く痺れて、コントロールが効かない。
 
「んん……っ、はぁ、う……く……っ」
「ああ……アン。あなたのなか、きつくてたまりません……っ」
「あああ、……はぁっ、やあぁ……っ」

 今まで声を出すのを我慢していたせいなのか、耳から入って来る女の喘ぎ声が自分のものとは思えないほど淫らだった。やがて脳裏に火花が散り、花火が打ちあがるかのように身体が浮遊感に包まれた。

 ――ああ、イっちゃう……っ!

 意識が白く濁り、全身が官能に満たされる。
 
「いぃ……っ、ああ、あ……っ!」
「アン、僕も一緒に……っ、くぅ……っ!」

 体の奥でエサイアスの精液を浴びせられ、罪悪感と羞恥心とそれと相反する幸福感に同時に見舞われる。ぬるりと股の間を占領するものに、余韻でぎゅうぎゅうと締め付けてしまう。
 背後のエサイアスも大きく息を吐く。しばらくして、若い男根がねばつく液体を纏いながらずるりと膣から抜かれていった。
 脱力したアンニーナを抱き締めて背中を撫でていたラウリだが、突然酷く険のある声を出した。
 
「アンニーナ、そいつの種で孕むなよ」
「え……っ、はぁ……」

 ラウリは彼女の下から抜け出ると、毛布を剝いでズボンの前を寛がせる。すっかり準備の整った男根が勢いよく勃ちあがった。アンニーナは血の気が引いた。

「え……? もう終わりじゃ、ないんですか?」
「あいにく妻と間男のセックスだけ見せつけられて満足するほど、俺は歳を取ってないんだ」

 夫はしかめっ面でそう言うと、脱力したアンニーナを支えて膝立ちにさせる。彼女はまだ自力で身体を支えきれず、ついラウリの両腕に縋ってしまった。
 
「僕も明るいところで、アンの全身を見たいです」
 
 エサイアスが戸惑うアンニーナの身体を背後から抱えて膝立ちにさせると、正面に座るラウリがスカートのホックに手を掛けた。背後のエサイアスもはだけた彼女のシャツと肌着を完全に脱がせる。乳房の先端が腫れているかのように赤く色づき、白い肌にはラウリの吸い痕が点々と残されていた。

 ――恥ずかしい。

 服を脱がされながら、正面のラウリの長い熱の塊が太腿や下腹に当たって、どこへ目を向けていいのか分からない。アンニーナが裸にされ身の置き場がないともだもだしている間に、男二人は服を脱いでいる。

「やだ……やめてください。これ恥ずかしい……っ」
 
 ラウリはアンニーナをベッドに寝かせると、躊躇いもなく両脚を開いたのだ。彼女は両足首を持つラウリに力で敵うはずもなく、ただ顔を覆った。
 
「まったく、こんなに出されやがって」

 М字に開脚されると、膣からドロリと生温かいモノが零れてくる。エサイアスに愛されたばかりの秘所を夫に見られ、今更ながら例えようもない羞恥と罪悪感に晒された。その一方、今日のことは二人が共謀して図ったのに、ラウリの言葉はこの展開を望んでいなかったかのようにも聞こえる。

「あなた……ごめん、なさい……っ」

 おそらくだが、アンニーナの反応がラウリの望みとは違っていたのだ。自分は妻として、夫の意に適わなかったことを申し訳なく思う。ラウリは銀髪を掻きあげ苦笑した。

「謝んなよ。悪くないのに謝って傷つくのは自分だぞ。俺は、もうおまえを傷つけないと誓ったんだ」
 
 夫が優しい。優しくされると自分も優しくしたくなるのが常なのだ。アンニーナは、ようやく相手が自宅療養中の身であることを思い出した。
 
「あなた、……胸の傷が」 
「おまえ軽いからどうってことなかったぞ。もう治ったしな」

 ラウリは今更のように答えると、他人の精液で満たされた妻の蜜壺に自身の男根を当てる。
 
「あん……っ!」
「ふ……くっ、アンニーナの中、ぬるぬるしてるのにぎっちぎちに締め付けてくる」
「あ、ふ……、ぅん……っ」
「気持ちいか?」

 アンニーナは何も考えられなくて、ただただ頷いた。ラウリは自分好みに躾けた身体を堪能する。妻の感じるところを熟知した男の動きは、すぐにアンニーナを官能の坩堝に落とし込んだ。彼女はたまらず、自分の気持ちを吐露する。
 
「あなたの、きもちいいです……」

 うえで壮絶な色気を振りまく夫に、自然と微笑んでしまう。こんなに気持ちいいのを伝えられずにはいられなかった。
 すると何を思ったか、ラウリが膣の浅いところを突きながら、耳を傾けてくる。
 
「俺のなんだって? 口に出して言ってみろよ」
「言え、ません」

 何も考えられなくても、恥ずかしさだけは生きている。ラウリはくすっと笑うと、身体を屈めてアンニーナの耳元で囁いた。途端、彼女の顔が熱くなる。

「ほら言ってみろ。もっと奥を突いてやるから」

 しばしの躊躇いののち、アンニーナは陥落した。
 
「あなたのおちんちん、きもちいい……ですっ」
「よくやった」

 ラウリは妻の臀部に向かって勢いよく突き入れる。アンニーナの背中が快楽でエビぞりになった。

「あんんっ……っ、だめぇ……っ」
「まったく可愛いレディに汚い言葉を使わせて補佐官は品がないですね。アン、お口の消毒をしましょう」

 それまで傍観者に徹していたエサイアスが彼女に屈みこんで横向きにキスをしてくる。その舌の動きがなめらかで、彼の呑み込みの速さを思い知らされた。エサイアスは、ラウリに突かれるたび震える両の乳房を優しく包む。
 上も下も愛されて、アンニーナの体の中に快楽の虫を飼っているかのような錯覚に陥る。全身が気持ちよさに騒めいて、頭が真っ白になっていた。

「はん、お貴族様がお高くとまりやがって」
「ああああああん……っ!」
「くぅ……っ!」

 ラウリの剛直に膣を抉られて、背中がのけ反る。膣奥に子種を放出された。予兆もなくイかされて、ただビクッビクッと腰が痙攣する。

 ――きもちいい。なにも考えられない……っ!
 
 しばらくして、ラウリが萎えた剛直を質量を伴い抜いていく。アンニーナは汗と精液と涎に塗れた身体をやっとの思いで起こすと、目の前に雄茎を勃たせたエサイアスがいた。彼はそれをどうしようか悩んでいるかのようだ。

 アンニーナは行き過ぎた快楽のせいか、頭がぼんやりして思考が働かない。スティーナが飲んだクスリを飲めばこんな感じになるのだろうか、と朧気に考える。だとしたら、アンニーナにクスリは要らない。今、彼女は本能だけで動いていた。
 
「わたしに、お手伝いさせてください」

 アンニーナは青年の股の間で猫が伸びをするような姿勢をとると、猛々しく屹立する亀頭に唇を当てた。

「うっ」

 エサイアスの肩が、ビクッと揺れる。アンニーナはラウリの遅漏に二年も付き合わされたのだ。童貞を卒業したばかりのエサイアスをイかせることなど容易かった。

「だめです、アン。それ以上やると、不都合が……っ!」

 初めて聞く切羽詰まった声に驚いて顔を上げると、いつもは冷静沈着な顔が朱に染まっていた。イクまいと必死に瞑っている瞳からは今にも涙がこぼれそう。無垢な天使を地に堕としたような淫靡な妄想がアンニーナのなかに広がる。
 
「ひおひひひほふか(きもちいいですか)……?」
「口に入れたまま、話さないで……ッ ぼくはアンの前ではカッコつけたいんです。だから……」

 そのような反応されると、かえって虐めたくなるものだ。鈴口を舌先でつつき、唾液でいっぱいにした唇で亀頭を包む。飴をしゃぶるようにねぶると、エサイアスの腰が揺れる。

「むかつくガキが一方的にヤられてる顔をみると胸が空くな」

 いつのまにかラウリはアンニーナの背後で膝立ちになると、屹立した己を白い臀部にこすり付ける。アンニーナは焼けた鉄のように熱くて硬い感触を覚え、後ろから支配される期待に胸を高鳴らせた。知らず、掲げたままの尻をもじもじと動かしてしまう。
 このとき白濁した二人の分の精液を垂れ流して誘う妻の白い柔肉に、ラウリの理性は持っていかれていた。

「欲望に忠実で可愛いな、アンニーナ。普段もそれぐらい主張してくれ。おまえは何も欲しがらないから」

「んん……っ!」

 エサイアスのモノを万が一にも噛まないように息を詰める。アンニーナは夫の顔を見なくても、特別上機嫌なのが分かった。自分のなかで分身が脈々と鼓動し、弾むようなストロークをかましてくれる。
 
「く……ぅ」

 快楽一色に染められたハシバミ色の瞳はうっとりと潤み、ずっと開いたまま口の端からは唾液と精液が伝っていた。ファニーフェイスのアンニーナがもたらす恍惚とした表情は、ふたりに危険な刺激を与える。

「俺とそいつ、どっちが気持ちよかったんだ?」

 エサイアスも解答が欲しいのか、一旦アンニーナの口から男根を抜く。二人は彼女の言葉を待った。アンニーナは肩で息をしながら、性欲に染まった瞳を閉じる。
 
「だめ、選べない」
「どうしてだ? 簡単なことだろう?」
「だって、どっちも気持ちぃい……、ああぁ、あん……っ!」

 はしたない声が漏れる。
 エサイアスも眼下の茶色を頭を抱えて、アンニーナの喉奥に自分の欲望をがむしゃらにぶつける。あまりの激しい動きに彼女の目じりに生理的な涙が浮かんだ。

「アン、愛しています。……あなたに、一生の愛を」

 ラウリはなおいっそう腰の動きを速める。蜜壺の底がゴリゴリと抉られて、その精を受けたら妊娠するのではないかという狂喜に、全身が震えた。
 
「俺はもうアンニーナを裏切らない。死ぬまでおまえ一人だ」

 ――そう、わたしを愛して。

 満たされると確信した瞬間に、焼けるように熱い精液が二つの穴にぶちまけられる。
 
 「んんんん……っ!」
 
 口と膣にそれぞれ違う男の精液を含み、どちらも身体の内に取り込もうと本能が命じる。ごくんっと喉が嚥下して、膣口がなお食い絞めるものを求めて縮小した。アンニーナは幸福感に満ちた絶頂のあと、白い霧に包まれて気絶した。
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