科学は、如何にしてヒトを幸せにするか~ななの例~

深町珠

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エレベーターを降りた加藤の
バッグの中の携帯電話が鳴った。

古い、NTTDOCOMOのPー705。

加藤を呼んだのは、意外な人物だった。



「磯です、しばらく」



加藤が回想した、そのインチキ研究者(笑)




「加藤です、しばらく」加藤も、柔和な男である。

インチキをする男にも、それなりの事情があるのだ。


心が軋んで、ある地位にしがみつきたい。
そういう病気を治さないと、一生地獄の
苦しみに追われる。


それは、言ってみれば
並列時空間の地獄、だ。



磯もそんなひとり。


でも、加藤に連絡してきたのは
何か理由があるのだろう。



「あなたのプログラムだけれども。
内容を学会で聞かれそうなんでね。
仕様を明らかにしてほしいんだ」磯は
横柄に言う事に慣れている(笑)。



今、加藤は磯とは何の関係もない。


「あの、6次元とやらで解析したんじゃ
なかったのかい?」加藤は
磯と同年代である。


別に、加藤はフリーなので
磯に媚びる事もない。



磯は、言葉を堪えて「まあ、そういわずに。
あの論文の解析は、加藤さんのお仕事ですから
私には理解が困難だ。それでお願いしたい」磯も、プライドを捨てて頼んでいる。


学会で、研究委託がバレたら
研究者は終わりだ(笑)。




「生理学を勉強すれば解るでしょう?脈拍と血圧は関連性がある。流体だからね。」と、加藤は工学の言葉を使って話した。

医学、生理学、工学、数学、情報工学。


コンピュータを使って人間を調べるには
それだけの知識が必要なのだけど

必要なところだけ勉強すればいいのだ。



それぞれ、大学で専門が別れているのは

そのジャンルだけで深く調べるため、で


全体をまとめる分野はないのだ(笑)。




そこで、実際に研究しようとしても

磯のような専門家でも、数学だけしか
知らないので、何もできない(笑)


と言う訳だ。



それで、コンピュータを使って
結果を出したいと


ソフトウェア会社に頼んでも

ソフトウェア会社でも、プログラムは書けるが

人間は解らない。


プログラムを書くのに必要なのは、その
人間についての知識なのだ。


そういう意味で、加藤の所には
依頼が集まる。



「今は無理ですね。別の研究所から
契約金を貰っている。他の仕事をしたら
契約違反だ」と、加藤は事実を述べる。



「そんな事を言わないで」磯も必死だ。


学会で注目されたのが間違いだったのだが(笑)。



知らない事を聞かれたら終わりだ。(笑)。




「まあ、それじゃ高額報酬、と言いたいところだが」と、加藤は言って



とりあえず、可哀相だから


何とかしてやる事にする(笑)。




「嘘をつき通すのは大変だけどなぁ」加藤は
電話を切ってそう、ひとり言。



別に、偉くならなくたっていいじゃないか。




その心の病気は、精神分析治療でも
直しにくい。



過去に戻れたらいいのだが。


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