科学は、如何にしてヒトを幸せにするか~ななの例~

深町珠

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ラジオ少年

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加藤は、自分の古ぼけた車に乗ると
ラジオをつけた。


窓を開け、ロッドアンテナを伸ばし。


「芝田も、ラジオ好きだったよな」



番組のお知らせが流れる。


「3時間生放送、太田裕美さんがお送りします」アナウンサーは、そつのない話。


「そうだ。芝田は太田裕美の大ファンだった。今でも、ラジオ聞いているだろうか?」



アマチュア無線で、半分眠りながら
話をしていたあの頃。


記憶が解放されるかもしれない。


幸い、加藤のガールフレンドのひとりにアイドル歌手だった子が居た。

太田裕美の、旦那さんと知り合いだって
言ってたっけ。



加藤は、名案だと思って
彼女に電話した。



「ああ、加藤です。久しぶりだね。
ちょっと、人助けだと思ってさ、頼まれてよ」


生放送のDJ、話題に流れる曲に
思い出のある曲を使って貰って。

電話で語り掛けて貰う。


アマチュア無線仲間に、長く話して貰って。


眠りかけて朦朧とした頃、電話を掛けて
催眠術を解く。



こんな手段でどうかな?



と、加藤は放送の日までに


用意をした。




芝田は、催眠術に掛かるまでは
本当はいい奴だったんだ。



芝田だけじゃなくて、ほとんどの人が
争わなくてはいけない、と
催眠術に掛かっているのかもしれない。


それなら、ラジオを聞いた人が
心を和らげてくれれば。



流す音楽の低い音に、特殊なメッセージを
含めれば。


効き目があるかもしれない。



音楽に加工をして催眠術に掛けるのは
よく、カルトが使う手段だ。



テクノロジーミュージックのバンドが
1980年代に使って、静かにブームになったが

音楽にそういうメッセージを含めたと言う
事が、今では解っている。






「うまく行くといいが」加藤は祈るような気持ちで


放送を待った。





別に、太田裕美だけではなく
その時代の女の子は
皆、優しく穏やかだったのだと
加藤は回想する。

男の子もそうだった。






神様は、天国から加藤を見下ろして



「面白い事をしているのぉ。」と

にこにこ。




「地獄に苦しむ芝田くんを救おうと言うのか。
神様のようだの。」と、微笑んで。





心が安堵する時が無ければ、それは
地獄である。



地上に生きていたとしても、心は
地獄に囚われているのだ。


それも並列時空間だろう。
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