汽車旅つれづれはなし

深町珠

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奥羽線今昔

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"はくつる81号" は、昭和の香りを乗せて



<その10> 奥羽線沿線の今昔



701系はスムーズに、力強く下り線を走る。
音楽のような発振器の音とともに。
またたく間に、平川にかかる「第一平川橋りょう」を渡る。
鉄橋を渡る音が、ごおごおと。

かつて、蒸気機関車の頃は、力強く黒煙を吐いて
C61、D51などがこの線路を走っていた。
僕らはよく、この橋のたもとでそんな彼らの勇姿を
写真に収めていたものだった。

これは昭和45年8月28日の情景。


http://users.goo.ne.jp/c62_/view/hirakawa2.jpg
http://users.goo.ne.jp/c62_/view/hirakawa.jpg




このころはモノクロームの時代で、とはいっても蒸気機関車は真っ黒だから
とてもお似合いの被写体だったわけで、自家現像があたりまえだった時代
台所に暗幕を張って、赤い電球の下、酢酸の匂いの中で
引き伸ばし器のピント会わせをしたり、目見当で露光をしたり現像したり、と。
楽しく黒白写真に親しんでいたものだった。

また、この弘前近傍は、蒸気機関車が多数行き交っており
沿線も撮影に適当な風景が多かった。
弘前よりすこし先、秋田方へゆけばD51が率いる貨物列車は
時には三重連でその迫力を見せ、



http://users.goo.ne.jp/c62_/view/jyuran.jpg
http://users.goo.ne.jp/c62_/view/jyuran2.jpg




青森方へ行けば五能線、黒石線への86、96



http://users.goo.ne.jp/c62_/view/28667.jpg




これは川辺駅に停車中の五能線列車。

本線上にはD51、時には一号機の姿も見られた。



http://users.goo.ne.jp/c62_/view/d51-1.jpg





この一号機は、奥羽本線電化の際、さよなら運転に使用されて
沿線のファンの記憶に最後の勇姿として強く残っているのでは、と思う。

なめくじドーム、と俗に言われた半流線形の蒸気ドーム、金帯を巻かれて
ヘッドマークも華やかなD51-1の姿は美しくももの哀しく
多くのファンが涙したであろうと思う。
当日僕は青森に行けずに車掌をしていた叔父に撮影してもらったのだけれど、
現場に居たら、当時の僕ではピントが合わせられなかったかもしれない。



http://users.goo.ne.jp/c62_/view/kikanko.jpg




さて、回想をしながらも電車は進み、川辺に到着。
この駅もいくらか改装が行われているが、駅舎そのものが当時のままなので
どこか煙煤の匂いがするような気がしてならない。もう、四半世紀も前に消えてしまった
というのに人間の記憶というのは面白いものだ。

この駅からは五能線が分岐していて、乗りかえで次の駅が五所川原(ごしょがわら)だ。
この五所川原はストーブ列車で有名になった津軽鉄道の基点となっている。




http://users.goo.ne.jp/c62_/view/kanagi.jpg




この日は乗車しなかったが、以前に乗車した時にはのんびりとした米作地帯を走る
単行気動車のゆったりとした走りにとても魅せられた記憶がある。



http://users.goo.ne.jp/c62_/view/nakasato.jpg



また、津軽鉄道の駅の一つに金木駅があるがここはあの吉幾三の出身地でもあったりもして
彼の持ち唄のある一節では「なんにもない」という言葉でこのあたりを表現しているが
ほんとうにその通りで、田が見渡す限り続く中をまっすぐにレールが光る
という風景で家すら見あたらず、まったく唄のとおりだ、と納得した覚えがある。
そして、金木駅を降りた駅前の建物がちょっと派手な色あいに塗られており
どこかしら彼のイメージだった事もちょっとユニークな記憶として心に残っている。




http://users.goo.ne.jp/c62_/view/tugatute.jpg
http://users.goo.ne.jp/c62_/view/kanagist.jpg




さて、奥羽本線に戻ろう。
701系は快速運転ではないのでこまめに駅に停車する。
でも、半自動扉だから乗降客がいなければドアは開かないので
なんとなく都市部から来ると運転停車のようで奇異に感じたりもする。
冬場はとてもこの地方は冷え込むのでこのような方式でないと、
デッキのない通勤電車では寒気に乗客は困ってしまうだろう、と思う。
客車列車の頃はまあ大抵はデッキ付きの車両だから、問題は無かったのだろうが。

乗客の姿も車窓からの風景も、それから時が経っている
という事を無言のうちに僕に告げている..のだが。
しかし、乗客の素朴な表情、津軽弁の響き、遠く霞む岩木山...などと
変わっていない事象を探し続けている僕がここにいる。

この旅自体、583系に乗車するためのものではあるが
僕にとっては、過去、思い出を振り帰るための行動の
ようだ、と、再認した。
そして、583系"はくつる"は、僕のノズタルジィを満たすには
十分な程の香りに包まれていた...
それは、いってみれば郷愁、というか。
昭和、という時代の香りかもしれない...

-------|以下、次回に続きます..|-------
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