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怖い
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記憶を失ったら、どこに戻るかは
本人でもわからない。
自分が誰かもわからない。
ただ、心は
何等かの形で残るかもしれない。
魂の生まれ変わり。
そういう可能性もある。
珠子の 「珠」=魂、soul nirvana の意である。
そんな風に、珠子を慰めながら
神流は、ゆっくり歩いて
珠乃家の前まで来た。
珠子の父が、様子に気づいた。
店の外まで来て「なんだ、珠子。どうした。」
珠子は、「少しヘンなの・・・・。」と言っただけ。
お父さんに心配をさせたくないのだろう。
優しい子である。
神流は「少し、疲れたみたいですね。」とは言いながら
珠子の父の様子が少し・・なんというか
言葉にしにくいけれども、ちょっと怯えたような。
普段、そういう顔を見せない人である。
珠子を部屋に休ませて「私は、やっぱりホテルに行きます。」と
神流が言うと
珠子は「神流ちゃん、傍に居て。怖い。」と。
そういえば、この事を話せるのは神流くらいだ。
他の人には、まあ、話せない。
神流は「はい。それでは・・・お電話。」と
階下に下りる。
詩織に電話しようと思ったのだった。
家族に聞かれたくないから、外に出て
アーケードの反対側へ。
河原に出て。「あ、詩織ちゃん。神流です。」と
今日起こった事と、推論を話す。
詩織は黙って聞いていた。「そんな事・・・。でも、見たのでしょう?。」
神流は「はい。」と、朴訥に。
詩織は「その環境が、あの商店街のあちこちに起こるのかもしれないわ。
神隠しだと、信じられている現象の幾つかは、それかもしれない。
あ、神流ちゃん。あのね。お父さんの何か、サンプルがあれば・・・
細胞の。」
神流は、気づく。「まさか・・・。」
詩織は
珠子が、本当は産まれていない可能性を推論したのだった。
どこかの異なる空間から来たのであれば、そうなる。
生まれ変わりとして。
放射線被曝量が、現代人と異なる事も
遺伝子の複写プロセスが違う事も。
その、実証になるのだろう。
神流は思う。
そこまで、調べない方がいいのではないだろうか。
本人が苦しむだけ、なのではないか。
判ったとして、珠子には
何もしてやれないのだろう。おそらく。
「・・・・。」神流、悩む。
神流は、しかし
検証を得れば、あるいは回避方法が見つかるかもしれないとも
思う。
「わかりました。何か、細胞のサンプルを取ります。」
詩織は「うん。結果は、珠子に知らせないでも。
私達に出来る事をしよう。」
神流と同じ考えだった。「詩織ちゃん、私もそう思ってた。」
電話を切って、神流は珠乃家の方へ戻る。
珠子の父が、なぜか通りに出ていた。
神流を見て「珠子がご迷惑をお掛けしました。」と
きちんと筋を通すひと。職人である。
相手が年下であろうとも、世話になったのだから。
礼節を持っている、日本人。
神流は「いえ、私もいつもお世話になって。
今夜もお世話になるところ。」と、微笑むと
珠子の父は、少し和んだが不安な表情。
神流は「お父さん、何か..ご不安でもございますか?」
父は、しばらく沈黙し「すこし、お話していいでしょうか」と
珠乃家の奥座敷に、神流を招いた。
店から見ると奥になるこの座敷は、普段使われる事がないのか
新しい印象を受けた神流だった。
あまり、ここに入った記憶がない。
珠子の父は「妻の時と似ています。」
神流は、その言葉でなんとなく理解した。
「珠ちゃんのお母さんは....『神隠し』に遭った。」
父は頷く。「付近では良くある事なんだ。」
神流は思う。プロセスは複数だろう。
本当に、帝から逃れた人。
帝が浚った人。
そして、珠子のケース。
「なぜか、うちの家系は代々、そうなる。」と、珠子の父。
神流は、詩織の頼みを思い出す。
「お父さん、何か、あなたの細胞をサンプルにほしいのです。」と。
珠子の父は「それで、何かわかりますか?」
神流は「これは、詩織ちゃんの大学で調べてくれるのですが。
対策が出来るかもしれません。」と、本当の理由は述べなかった。
父が聞いたら衝撃を受けるかもしれないと思ったのだった。
本人よりも、それは。
ふつう、人は何かを愛でる。
脳にそういう構造が出来たのは、進化の過程で得たものであるから
生き延びる為の機能である。
父は、娘を愛でる事で
生きる理由が生まれる。その為に生きている。
神経内分泌で言うと、そのスイッチにオキシトシンと言うホルモンが使われる。
かなり前、脳内麻薬、なんて流行語になったものも
そのスイッチのひとつだ。
オキシトシンに因って得られる充足感のために働くのである。
愛。
故に、対象である娘が居なくなると
愛を感じられなくなる。
それゆえ、過剰に心配することもある。
神流は、それを気に掛けた。
本人でもわからない。
自分が誰かもわからない。
ただ、心は
何等かの形で残るかもしれない。
魂の生まれ変わり。
そういう可能性もある。
珠子の 「珠」=魂、soul nirvana の意である。
そんな風に、珠子を慰めながら
神流は、ゆっくり歩いて
珠乃家の前まで来た。
珠子の父が、様子に気づいた。
店の外まで来て「なんだ、珠子。どうした。」
珠子は、「少しヘンなの・・・・。」と言っただけ。
お父さんに心配をさせたくないのだろう。
優しい子である。
神流は「少し、疲れたみたいですね。」とは言いながら
珠子の父の様子が少し・・なんというか
言葉にしにくいけれども、ちょっと怯えたような。
普段、そういう顔を見せない人である。
珠子を部屋に休ませて「私は、やっぱりホテルに行きます。」と
神流が言うと
珠子は「神流ちゃん、傍に居て。怖い。」と。
そういえば、この事を話せるのは神流くらいだ。
他の人には、まあ、話せない。
神流は「はい。それでは・・・お電話。」と
階下に下りる。
詩織に電話しようと思ったのだった。
家族に聞かれたくないから、外に出て
アーケードの反対側へ。
河原に出て。「あ、詩織ちゃん。神流です。」と
今日起こった事と、推論を話す。
詩織は黙って聞いていた。「そんな事・・・。でも、見たのでしょう?。」
神流は「はい。」と、朴訥に。
詩織は「その環境が、あの商店街のあちこちに起こるのかもしれないわ。
神隠しだと、信じられている現象の幾つかは、それかもしれない。
あ、神流ちゃん。あのね。お父さんの何か、サンプルがあれば・・・
細胞の。」
神流は、気づく。「まさか・・・。」
詩織は
珠子が、本当は産まれていない可能性を推論したのだった。
どこかの異なる空間から来たのであれば、そうなる。
生まれ変わりとして。
放射線被曝量が、現代人と異なる事も
遺伝子の複写プロセスが違う事も。
その、実証になるのだろう。
神流は思う。
そこまで、調べない方がいいのではないだろうか。
本人が苦しむだけ、なのではないか。
判ったとして、珠子には
何もしてやれないのだろう。おそらく。
「・・・・。」神流、悩む。
神流は、しかし
検証を得れば、あるいは回避方法が見つかるかもしれないとも
思う。
「わかりました。何か、細胞のサンプルを取ります。」
詩織は「うん。結果は、珠子に知らせないでも。
私達に出来る事をしよう。」
神流と同じ考えだった。「詩織ちゃん、私もそう思ってた。」
電話を切って、神流は珠乃家の方へ戻る。
珠子の父が、なぜか通りに出ていた。
神流を見て「珠子がご迷惑をお掛けしました。」と
きちんと筋を通すひと。職人である。
相手が年下であろうとも、世話になったのだから。
礼節を持っている、日本人。
神流は「いえ、私もいつもお世話になって。
今夜もお世話になるところ。」と、微笑むと
珠子の父は、少し和んだが不安な表情。
神流は「お父さん、何か..ご不安でもございますか?」
父は、しばらく沈黙し「すこし、お話していいでしょうか」と
珠乃家の奥座敷に、神流を招いた。
店から見ると奥になるこの座敷は、普段使われる事がないのか
新しい印象を受けた神流だった。
あまり、ここに入った記憶がない。
珠子の父は「妻の時と似ています。」
神流は、その言葉でなんとなく理解した。
「珠ちゃんのお母さんは....『神隠し』に遭った。」
父は頷く。「付近では良くある事なんだ。」
神流は思う。プロセスは複数だろう。
本当に、帝から逃れた人。
帝が浚った人。
そして、珠子のケース。
「なぜか、うちの家系は代々、そうなる。」と、珠子の父。
神流は、詩織の頼みを思い出す。
「お父さん、何か、あなたの細胞をサンプルにほしいのです。」と。
珠子の父は「それで、何かわかりますか?」
神流は「これは、詩織ちゃんの大学で調べてくれるのですが。
対策が出来るかもしれません。」と、本当の理由は述べなかった。
父が聞いたら衝撃を受けるかもしれないと思ったのだった。
本人よりも、それは。
ふつう、人は何かを愛でる。
脳にそういう構造が出来たのは、進化の過程で得たものであるから
生き延びる為の機能である。
父は、娘を愛でる事で
生きる理由が生まれる。その為に生きている。
神経内分泌で言うと、そのスイッチにオキシトシンと言うホルモンが使われる。
かなり前、脳内麻薬、なんて流行語になったものも
そのスイッチのひとつだ。
オキシトシンに因って得られる充足感のために働くのである。
愛。
故に、対象である娘が居なくなると
愛を感じられなくなる。
それゆえ、過剰に心配することもある。
神流は、それを気に掛けた。
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