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深町珠

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生きる

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神流は、発車する新幹線の廊下側のシートで
その加速を体感していた。
電磁気力によって、これほどの力が得られる。しかし
その電磁気力すら、まだ、よく判っていないのだ、現代の物理は。

そんな風に思うのは先入観である。そのような記憶が元になって
感じたもの=>言葉にしている。

感じたままに=>論理。と言うのは、勿論研究者なればこそである。
言葉に置き換えないでロジックを作るのだ。

イメージの中に物理モデルがあるのである。

誰でもそうで、例えば、お料理が好きなら

甘いものを食べて、甘すぎると思ったら対策は感覚的に判るが

好きでない人は、分量を計算したり、本を見たりする。
それに似ている。



珠子は、この瞬間、どう感じているのだろうと
神流は、窓際のシートの珠子を見た。

意外にあっさりとした感じなので「珠ちゃん、なに考えてますか」直裁に
聞くのが神流らしい。


珠子は、窓の外を眺めていたけれど
神流の方に向き直り「うん。なんだかホッとしたみたい。気持が。」


神流は「安心できましたか。」

珠子は「それもあるけど、今までずっと、お店の事考えてたでしょ。
なんだか、こういう事でもないとずっと。あのままだから。
本当は嫌だったんじゃないかと思うの。でも、妹みたいに『嫌だ』なんて
言えないもの。」

神流は「ふーむ。それじゃ珠ちゃんは悪い子だったと、本当は」と。
もちろん。そうできないから珠子は、どことなく緊張感のある表情を
している子だった。高校生の頃も。

こういう子は、悪いキッカケがあると、弱いものいじめをしたり。
そうでないと、勉強とかスポーツで勝つ事を憂さ晴らしにしたりする
ちょっとヘンな優等生やエリート選手になってしまったりする。


心は元々動物の時代からあったものだから
生理的に辛い時にはストレスを感じる。

珠子みたいに、無理して働けば当然ストレスになるから。
どこかで発散したいと心が思う訳だが

あのアーケードみたいに、家の外でもみんなが愛してくれていると
そこから出ない事には、「良い子」を演じ続ける他はないので

それがストレスになるのである。

古き良き日本の社会が、だんだん壊れていったのは
その「良い人たち」が、「自分達に都合の良い子」を
求めるようになったから、なのだが。

それで、和がなくなった。


そこまでいかないにせよ、珠乃家にいる限り
珠子は解放される事はなかっただろう。


そう思うと、珠子のお母さんも、解放されて
良かったのではないか、などと
神流は思った。

結局、珠子もこうした解放された訳、なのだが。


「ね、神流ちゃん。私達ふたりって、初めて?」

「・・・そういえばそうですね」と、神流は微笑む。

いつも、だいたい珠子は碧がそばに居た。
碧がお姉さんの役をやりたがっていた、と言うのもある。

「これから、どんな風になるんだろ、私達」と、珠子。

神流は「はい。私の部屋に泊まってもらいます。」と、直裁に。


珠子は笑って「そう。お世話になります。それもそうだけど。私は
何をして生きていけばいいのでしょうと。」

神流は「そこまでは考えていませんでした。とりあえず避難ですね。
その間に考えれば」とは言ったものの、対策はほとんど想像を超えている。
そういう時は物理モデルで思考すると好いのであるが。

26歳の珠子に訪れた死生観のような物であろうか。

普通、終末が近づくと誰でも考えるものらしいが
それまで何をして生きてきたのか、これからは?

などと。


元々、人間は「何かの為に」生きている訳ではなくて

「とりあえず生きてしまった」から、考える事が出来ると言うだけだ。

元々考えるのは、生きる為、生き延びる為の機能なのである。


従って、珠子の場合でも「とりあえず生きる」為に食料を得る手段を
考えればよいのだ。
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