arcadia

深町珠

文字の大きさ
53 / 93

一緒に

しおりを挟む
「ナーヴちゃんも入れるといいのにね。」珠子は何気なく言う。

神流は「そうですね。でも、あの子は機械ですから、暖めない方がいいです。」


珠子は、人間っぽいナーヴとお話していると
ロボットだと言う事を忘れてしまう。

それも、面白い事だ。

ナーヴが、とことこ。
廊下を歩いてきて。

細い猫足だけれでも、本物の猫ほどは
歩くのが静かではない。

それは、現代の科学でも致し方ないところである。
リニア・モータを駆動するにしても
筋肉の伸縮のようなゆっくりとした動きをさせるのは難しい。
インヴァータ、と言って
交流電力を断続する手法で制御しても
本物の猫のような無音歩行は困難だ。

歩行ロボットが上手く普及しない理由でもある。

それで、直流制御で行う試みがなされている。


「珠子さん、呼びましたか」と、ナーヴは長閑に。


珠子は「ううん、ごめんね。神流ちゃんとお話してたの。
ナーヴちゃんとお風呂入れたら楽しいね、って。」


ナーヴは「はい。機械の私でも表面を綺麗にするのはいい事ですね。
温まると良くないですけれど。」と。


珠子は喜ぶ。「じゃ、洗ってあげる!。」と
着てきた服を脱ぎ、下着姿になった。

「ナーヴちゃん、入ろ?」


神流も同じように。
下着姿になると、高校生の頃よりも
柔らかい感じの、大人っぽい雰囲気があって

珠子は「神流ちゃん、大人になったねー。恋人いるの?」なんて。

神流は「いえ、そういう事は・・・・これは経年変化です。代謝が下がるので
エネルギーが余るので、脂肪になります。
重力に沿って、下に下がるんですね。」と。理論的である。


珠子は「そーなんだ。私はてっきり・・・・。」と言いながら
下着を外した。

若鮎のような肢体を、神流は羨ましいと思ったが
それを言うと、珠子が自らの境遇を思い出して
辛くなるかと思い、避けた。

「珠ちゃんは、恋人いないのですか?」

珠子は「そんな暇ないしね。お店に一日居ると、新しい出会いもないし」と

ナーヴを呼んで、脱衣場からお風呂場へ。


「わあ、広いねぇ。旅館みたいだね。」と、珠子。
檜づくりのお風呂は、昔ふう。
黒湯が一杯にたたえられて。

床はタイルである。そのあたりも昭和ふうだけれども

木のすのこが敷いてあり、足が冷たくないように配慮されている。

壁は砂壁、しかし、シャワーヘッドがあるところだけ
新しい。

この家には若い女性が住んでいたのだろうか。
娘さんかもしれない。


「黒いお湯って懐かしいね。」と。
珠子の家のそばの銭湯も、そういえば黒湯だった。



後姿の珠子は、清々しく美しいと神流は感じる。


「帝でなくても、浚いたくなりますな」と、ひとりごと。

均整のとれた、美術品のようなシルエットであり
何か、神流とは違う生物のように思えてきた。


ナーヴは、ふたりの会話を聞いていて
「日本人の祖先は、4種類に大別されていて、今も混ざっていないのだそうです」と
データを述べた。



珠子は「そうなの?私はどちらから来たのかな。」と。

ナーヴは「それは判りませんけれど・・・北方からのタイプのようにも思えます」と。



珠子は「ね、ナーヴちゃん。洋服作ってあげようか。」と
ヘンな事を思いついた。


ナーヴは「いえ、このままで大丈夫です。」と




珠子は「そっかなぁ。お着替えできると楽しいよー。」と
天真爛漫なところは、ずっと変わらない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

〖完結〗終着駅のパッセージ

苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。 彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。 王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは夫と婚姻してから三年という長い時間を振り返る。 その間、夫が帰宅したのは数えるほどだった。 ※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

私が……王太子……のはずだったのに??

#Daki-Makura
ファンタジー
最愛と朝を迎えたら……城下が騒がしい……?? 一体……何が起きているのか……??

処理中です...