タビスルムスメ

深町珠

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快速「なのはな」

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「な・の・は・な?」と、友里絵は
その、黄色いディーゼルカーのボディに書かれた英文字を読む。

「おお、読めるのかー。中卒女」と、由香。

「今は中卒じゃないよーだ。なんだ、高卒女」と、友里絵。


菜由は笑う。「ホントに仲いいね、ふたり。」
愛紗も「羨ましいな」


「幼馴染だし」と、由香。
「ね」と、友里絵。




快速「なのはな」は到着。
結構な人数が降りてくる。折り返し、指宿行きになる。

「温泉のお客さんかなぁ」と、友里絵。
「そうじゃない?」と、由香。
「たぶん・・・そうじゃない?日曜だし。」と、愛紗。


菜由は「指宿は結構遠いから、本州から来た人はそのまま飛行機で帰っちゃうね」


「なるほどぉ。じゃ、鹿児島の人かな、みんな。」と、友里絵。


「それか、福岡・大分あたり」と、菜由。




そんなに、大きな荷物を持っている人はいないから
せいぜい県内くらいなのかもしれない。

温泉だけなら、九州は近所にあるので
指宿まで来る必要もない、と言う訳。



「じゃ、あたしたちも乗ろ」と、友里絵。


まだ、発車までには時間が10分くらいあるけれど。


さっきのように、向かい合わせシートで4人。


発車を待っていると、若い人たちが結構な人数。
駅前のイベントで買ったのか、さまざまな小物とか、服とか、お菓子とか。
おもちゃ(笑)。
マンガの絵が付いた、トートバッグとか。

思い思い、楽しそうな笑顔。


おばあちゃんたちが、やっぱり楽しそうに。
こちらは、洋品とか、着物。それと食材。
そういうものを持って、乗ってくる。


「結構混んできたね」と、由香。


「すぐ空くよ。この人たちは鹿児島市内から近くの人だから」と、菜由。


「どうして解るの?」と、友里絵。



「指宿から先は、殆ど鹿児島市の方には通えないから。仕事するのは大変ね。」
と、菜由。


「なーるほど・・・・。じゃあ、あっちの人は地元で働いてるのか。学校はいいとして。」と
友里絵。



愛紗は「そうね、わたしも宮崎市の方へは殆ど行かないもの。」


と、愛紗は家のことを思い出して。ちょっと、忘れていた就職問題とかを
思い出した。




そのうちに、快速「なのはな」は、出発時刻が来て。

録音の音声、九州はどこでも同じ人の声で
「この列車は、指宿ゆきです」と、シンプルなアナウンス。


聞くと、なんとなく安心する愛紗だった。
愛紗の住んでいた、日南線沿線も、このアナウンスだったから。




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