タビスルムスメ

深町珠

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楽しいごはん

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友里絵は、食堂の真ん中にある
バイキングのテーブルのところで。

お皿を持って「パスタ、パスターっと。あ!局長さん!」

局長はにっこり、人差し指を口にあてて「しー。いまは、ただのおじさん」と、にっこり。
工の字の浴衣に、羽織。

「もう会えないかと思ったー。」と、友里絵はにこにこ。

局長は「うん。予定が変わってね。泊まるとこがなくて」

友里絵「あれから、どっかいったの?」

局長「ちょっと、見物。まあ、仕事半分」


友里絵「いいなー。仕事半分なんて」

局長「えへへ。」にこにこ「楽しいよ。あ、そうだ、お友達も一緒?」


友里絵「はい」

局長「じゃ、コントやってよ」


友里絵「はーい。」


局長「ふふ。ありがと。じゃね、僕ら宴会やってるから、向こうの「さくら」の間で」

友里絵「あとでいきまーす」


由香も、見つけて「あ、こんばんはー。」


局長は「ああ、相方さん」

由香「へへ。」と、ちょっとはにかみ。


愛紗と菜由も気づいて。友里絵と由香のそばに来て。

「ご挨拶が遅れました」

局長は小さな声で「ナイショで来てるから(^^)そういうのはなーし」

愛紗も菜由も「はい」(^^)。


局長は、ユーモラスにちょこちょこ歩いて行った。


友里絵「なんか、かわいいね」

由香「そだね。くまモンちゃんみたい」


菜由「熊本のひとかな」

愛紗「さあ」




ご飯食べながら、友里絵「パスタおいひー。」

由香「江戸っ子かいな」

友里絵「へへ。」


「あとで出来るね、ステージ」と、菜由。


友里絵「うん!」

愛紗「あがらない?」

由香「ぜーんぜん。いつもやってるし。学園祭でも受けたしね」

友里絵「そうそう。あの時だけ制服着てニセ学生になって。面白かったね」


菜由「ああ、辞めた後だったんだ」


友里絵「そうそう。一年で辞めたから」


愛紗「いいなぁ、自由で」



由香「友里絵のお父さん、いい人だから。」



愛紗「ほんとだ。」愛紗自身は、学校が嫌だとしても・・・言えないだろう。
言ったとしても、学校辞めるなんて許されなかっただろう。
結婚相手まで決めたがるような・・・それが普通だった家。


菜由が「そうだねー。ウチだったら
「学校いけ!」って言われたね。」
と、同じ事を言ったので
愛紗は共感。

「そうだよね」と、愛紗。


友里絵「そうかー。ま、ふつーじゃないのかな、あたしん家」

由香「そうじゃないと思うよー。九州とうちらの地方じゃ違うもの。環境」


愛紗「なるほど・・・・。」

確かに、大岡山あたりと
宮崎や鹿児島では、違う。

それは、有馬が言う「田舎ならバスの運転は出来る」と言う言葉に
も表れているように。

住んでいる人の気質が違うのだ。


どうして、友里絵ちゃんみたいないい子が
学校を嫌いになるんだろう?

と、思ったりもした。

同時に、それでも荒んだりせずに
かわいい友里絵ちゃんは
とってもステキだ。

そう思った。それで


「友里絵ちゃんって。でも、よくメゲなかったね」と、愛紗。


友里絵は「うーん。最初はね。ホントにダメ女だったんだよー。
夜遊びしたり、家に帰らなかったり。でも
バイト先でタマちゃんが「かわいい、かわいい」って
ふつうの女の子として可愛がってくれたから。
それで、なんとなく。立ち直れた。」




愛紗は「そうなんだー。」

友里絵の口調が移った(笑)。


由香「そうだよね、変わったよね。ケバいメイクも止めたし
金髪だった髪も、元に戻したし。
なにより、可愛くなったもの。
それで、あたしも
「由香とも遊んでくださいよー」って
タマちゃんに迫った」 

ははは、と
由香も笑う。



「遊んでくれた?」と、菜由。



友里絵「あたしたちも、遊んでたわけじゃないの。
時間が全然なかったもの。
あたしは昼間学校、朝夜バイト。
タマちゃんは朝コンビニ、昼から夜は郵便局。
休みの日は合わないし」

由香「だから、朝のバイトだけがふたりっきりの時間だった」


菜由「なんか、そういうのって却って楽しいかも」


友里絵「それはあったかもねー。バイト終わって、ちょっとの間
店の外でお話するくらい。
あたしはスクーター、タマちゃんは自転車で来てて。
なんか、高校生みたいね」


由香「高校生だったじゃん。学校行ってたら」

友里絵「そっか」と、にこにこ。




「それで、ふたりでお店を買い取って・・・って思ったんだ。
わかるなー。夢ね。」と、菜由。


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