タビスルムスメ

深町珠

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夢見る天使さん

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でも・・・まゆまゆの空想する「未来のお婿さん」と言うか
ボーイ・フレンドも、よくイメージできない。

「なんでだろ?」と、思いながらも・・・。

列車は進む(^^)。

鹿児島本線、下り。
夕方の熊本駅を、急行「球磨川4号」は、走って行く・・・。
ダイヤ通りなら、6時過ぎには人吉に着くだろう。



「裕子さんは、人吉から折り返しですか?」

と、まゆまゆ。


裕子は「そう。これの折り返し」

殆どカラに近い、上りだが。

そういう乗務は、楽だ(^^)。


「運転に行くんですか?」

と、まゆまゆ。なんとなく。


裕子は「そう。だって、車掌よりいいよー。客扱いしなくていいし。
鉄道だから事故はまあないし」


と、平然と言う。



まゆまゆは「そうかな・・・」と思うけど
そうかもしれない、なんて思ったりもした。


お兄ちゃんみたいになれるかもしれない。
そんな思いも少しは、あったかも(^^)。









特急「ゆふDX」は、大分駅を定刻に発車。
5番線ホームには、先刻着いた赤い客車列車。
ディーゼル機関車が引いていて。

来るときに乗った、と友里絵が言って、喜んでいた。


愛紗にとっては懐かしい、客車列車だけど
神奈川ではまあ、見ることはない。

寝台特急は通るけど、普通列車で客車、と言うのは。

とても珍しかった。


すれ違うように6番線から。
右手には、留置線。沢山の電車や客車が一杯。

その中には、これから東京へ行くブルー・トレイン「富士」の付属編成もあった。
鹿児島からくる本編成7両の後ろに、この7両を連結するのだった。
☆のマークの個室寝台。

愛紗は「ああ、帰る時が近づいたんだな」と・・・・旅愁に駆られる。

不思議なもので、まだ2日もあるのに。

2泊三日の旅なら、これから始まるくらいのスケジュール。

帰る旅って、どうして淋しいんだろな。


そんなことを思いながら。スレートの機関庫の横を通り過ぎた。

DE10や、ED76が姿を見せている。
工事用のディーゼルカーが、黄色く塗られて留置されている。


右カーブを、ゆっくり揺れながら「ゆふDX」は、私鉄のような狭い線路脇を
すり抜けるように走っていく。


制限45!


と、運転士は二階の、見晴らしのよい運転台で、標識を指差し確認している。




友里絵が「さかまゆちゃんの妹もバレー部なんだって」と、パティに。

パティは「うん、知ってるよー。」と、にこにこ「国鉄に入ったらバレー部だな」


さかまゆちゃんは「奈緒美は来ないでしょう。国鉄向きじゃないもの」と。


ともちゃん「賢い子だもんね。大学行くんじゃない?」


友里絵「じゃ、大卒=>国鉄で、バレー部のエースふたり!」


菜由「アタック25!」

由香「それはクイズだよーん」


ハハハ、とみんな笑って。

愛紗が「ナンバー1でしょ」

友里絵が「**X攻撃!」

由香「**を付けるなって」

友里絵「ハハハ。」

菜由「それは、違う番組だってば」

さかまゆちゃん「いなずまサーブ!!!って、わたしも中学の時に
やりました。」

友里絵は「うん、上手かったもの、さっき」


ともちゃん「ホントにいなづまになるの?」


さかまゆちゃん「なんないなんない」と、首振って。


「ゆふDX」は、少しづつ市街地を離れて。

賀来、なんていう駅を通り過ぎる。

大きな博物館のような建物が見えて。


パティは、静かにおねむ・・・・。


友里絵は「あ、寝てる」


白い肌、ブロンドの髪、ふわふわ。
長いまつげ。
すっきりした、おはな。

きゅっとした唇。


思わず、唇を寄せたくなる。


由香は「天使みたい」


友里絵は笑いそうになっちゃうけど、天使さんが起きちゃうので・・・

「しー。」




菜由は「朝、早いからなぁ・・・。」










少し暗くなってきて・・・

「うー、さぶっ」と、恵は自室、タワーマンションの7階の部屋で
目が覚めた。

ひなたぼっこしてて、寝てしまったのだった(^^)。


♪これじゃ体にいいわけないよ♪(^^;とか歌いながら。


「なんか食うかな」と、冷蔵庫を見たり。



「・・・・・X。」


便所に駆け込んだ。


・・・・じょぼじょぼ、じょぼっ。(^^;


気楽である。


「ふー。やっぱいいね、ひとりは」


同棲、なんてメンドいものを
どうしてしたがるのか、理解不能な恵だった。


「結婚もそうだけどサ」


なりたくても、なれない車掌職。

なのだから、そんなメンドクサイものの為に
職を捨てる気にもなれなかった。


「それが本音・・・まあ、歳取って辛くなったら、働かないで食っていける
主婦もいいかもしれないけど・・・」

なんか、そんな日は来ないような気もしている。


それくらい、車掌の仕事は魅力があるのだ。

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