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十五年後
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「もう、勘弁ならねぇ。出て行ってくれ!」
大声で怒鳴り出す山丸長屋の大屋である山丸勘助は長屋の前で大人二人に向かって怒り心頭に発する。
長屋の前にいる大人二人は、山丸長屋の住人で二輪忠平と弟の吉兵衛という兄弟がいた。
彼等の周りにいた長屋の住人達は『又あいつ等か』と思い、呆れて何も言わないが、「今度は何して叱られたんだ?」と、近所の者は興味本位で集ってきた。
今回、二輪兄弟が山丸に怒られていた理由は働いた金で博打、酒、芸者と遊び、手元の残っている金は一銭も残していなかったことだった。
二輪兄弟は正直に大家に伝えるが、山丸は先月と今月の家賃支払えない事を知ると、堕落している二輪兄弟に無償に腹を立て叱咤した。
山丸勘助の正面にいる男は、二輪忠平(吉兵衛の兄)である。目鼻立ちのいい彼は弟より長身で黒髪を束ねている。仕事用の小豆色の着物と羽織姿で現れた彼は山丸に睨まれていた。
一見、気弱で痩せている彼は一応剣術道場の門下生の一人で「八百うま」(茶屋)の店子として働いている。
今では、店主の茂三さんのお気に入りになっていて忠平の誠実さと真面目さが仕事では評判が良い。兄弟の中では忠平が生活の金を握っているのだ。
忠平も、今まで家賃を滞納したことが無いのが、自分の自慢だったが今月の理由は違う。
大家である山丸は、忠平の金銭感覚と節約さに信用していたが、有り金を使い切る考えには頭が痛い。
もう一人は弟の吉兵衛は、子供の頃に八百屋(青物屋)で奉公し、店子を辞めて気ままに過ごしていた彼に、幸運にも深川の同心である御国様から警護をしないかと誘われてから、吉兵衛は今も下引きをしている。
この兄弟に対しては、親心のように見ている山丸も二人の浪費には、ほとほと呆れ苛立ちは隠しきれなかった。
二輪吉兵衛は大家である山丸の怖い顔をものともせず、紺の着物姿でボサボサ頭だが前髪の長さが眼を隠し、長髪を一つに束ねて大あくびしながら普段と変わらず呑気に話しだした。
「山丸さん、落ちついて。昨日はなんてーか、仕事以外の別仕事を入れての額が普段の倍ぐらい金が入って舞い上がっちまった。芸子を呼んだり、世話になった者においしい飯を食べさせてあげたりと、別の店に行ったりと本当忙しかったな。俺」
「ほう、じゃ吉兵衛。俺はお前達の何だ?」
「大家さんでしょう。何でこんなことを聞くんですか?」
「大家として、長く世話している俺に声かけず、ついさっき知り合った奴にはご馳走とは筋が通ってねぇよな」
「山丸さん、俺達が声掛けてくれない事にひがんじゃ……」
二輪兄弟達は、大屋の事を山丸さんと呼んでいた。
「キチ。よさねぇか」
兄の忠平は、大家の山さんと吉兵衛の間を割りこみ弟の話を止めた。
山丸の額から、ピクピクと青筋が走っているのが、吉兵衛の兄忠平は気付いていた。
(キチの読みも当たっているがこれは、相当怒っているな……キチも余計な事を言わなければいいのに。まったく……)
忠平は、気を取り直して大家に話をした。
「俺達は、山丸さんの親切を忘れていたわけじぁない。ただ、羽目を外して騒いでいた時は、周りにあった事を全て忘れてしまう」
「羽根様の酒は、おいしかったな。兄貴……」
「ああ。そうだな」
二人の話を聞く山丸は、怒りのボルテージがさらに上がった。
(こいつら酒の味を覚えても、金の管理はガキ同然だ……たわけ者)
山丸は、ひきった顔で睨みながら二人に言った。
「……家賃の支払いも今日だということも忘れるぐらい昨日は、芸子と遊ぶ金があって、今は金が無いだと。馬鹿な奴だ…………今まで、お前達のみすぼらしい姿で最低額の家賃にしているのさ! お前ら兄弟に金が無くても、この辺に以外と土産物や目利きの品物が有るかもしれないな」
彼等の部屋に質の良い物があるかもしれないと思い山丸は、二輪兄弟の家に向かい歩き出す。
二輪兄弟も、山丸の後を追って歩いていた。
「山丸さん。俺の所には、高価な物は無いですよ」
「兄貴。山丸さんが気のすむようにしようじゃないか。探してもウチには高価な物は無いのだから」
山丸は、後ろにいた二人をチラッと見て思った。
忠平を信じていたのに、吉兵衛の悪い遊びに染まったな。
忠平の脳裏には手元に一銭も残っていなくて、遊びで大金使い込んだ馬鹿さ加減と後悔が付きまっていた。
今月は、大丈夫だと思っていたのに……羽根様から屋敷に呼ばれてから、楽しすぎて金の支払いする事を忘れるとは失態だった。
山丸は、二輪の家の戸を開けようとした時に忠平は言いだした。
「山丸さん、何度も言いますが俺達の部屋に入っても、高価な物など置いてません。本当です」
忠平は、説得するが大家は話を聞く耳もたずの様子で二人を見る。
大声で怒鳴り出す山丸長屋の大屋である山丸勘助は長屋の前で大人二人に向かって怒り心頭に発する。
長屋の前にいる大人二人は、山丸長屋の住人で二輪忠平と弟の吉兵衛という兄弟がいた。
彼等の周りにいた長屋の住人達は『又あいつ等か』と思い、呆れて何も言わないが、「今度は何して叱られたんだ?」と、近所の者は興味本位で集ってきた。
今回、二輪兄弟が山丸に怒られていた理由は働いた金で博打、酒、芸者と遊び、手元の残っている金は一銭も残していなかったことだった。
二輪兄弟は正直に大家に伝えるが、山丸は先月と今月の家賃支払えない事を知ると、堕落している二輪兄弟に無償に腹を立て叱咤した。
山丸勘助の正面にいる男は、二輪忠平(吉兵衛の兄)である。目鼻立ちのいい彼は弟より長身で黒髪を束ねている。仕事用の小豆色の着物と羽織姿で現れた彼は山丸に睨まれていた。
一見、気弱で痩せている彼は一応剣術道場の門下生の一人で「八百うま」(茶屋)の店子として働いている。
今では、店主の茂三さんのお気に入りになっていて忠平の誠実さと真面目さが仕事では評判が良い。兄弟の中では忠平が生活の金を握っているのだ。
忠平も、今まで家賃を滞納したことが無いのが、自分の自慢だったが今月の理由は違う。
大家である山丸は、忠平の金銭感覚と節約さに信用していたが、有り金を使い切る考えには頭が痛い。
もう一人は弟の吉兵衛は、子供の頃に八百屋(青物屋)で奉公し、店子を辞めて気ままに過ごしていた彼に、幸運にも深川の同心である御国様から警護をしないかと誘われてから、吉兵衛は今も下引きをしている。
この兄弟に対しては、親心のように見ている山丸も二人の浪費には、ほとほと呆れ苛立ちは隠しきれなかった。
二輪吉兵衛は大家である山丸の怖い顔をものともせず、紺の着物姿でボサボサ頭だが前髪の長さが眼を隠し、長髪を一つに束ねて大あくびしながら普段と変わらず呑気に話しだした。
「山丸さん、落ちついて。昨日はなんてーか、仕事以外の別仕事を入れての額が普段の倍ぐらい金が入って舞い上がっちまった。芸子を呼んだり、世話になった者においしい飯を食べさせてあげたりと、別の店に行ったりと本当忙しかったな。俺」
「ほう、じゃ吉兵衛。俺はお前達の何だ?」
「大家さんでしょう。何でこんなことを聞くんですか?」
「大家として、長く世話している俺に声かけず、ついさっき知り合った奴にはご馳走とは筋が通ってねぇよな」
「山丸さん、俺達が声掛けてくれない事にひがんじゃ……」
二輪兄弟達は、大屋の事を山丸さんと呼んでいた。
「キチ。よさねぇか」
兄の忠平は、大家の山さんと吉兵衛の間を割りこみ弟の話を止めた。
山丸の額から、ピクピクと青筋が走っているのが、吉兵衛の兄忠平は気付いていた。
(キチの読みも当たっているがこれは、相当怒っているな……キチも余計な事を言わなければいいのに。まったく……)
忠平は、気を取り直して大家に話をした。
「俺達は、山丸さんの親切を忘れていたわけじぁない。ただ、羽目を外して騒いでいた時は、周りにあった事を全て忘れてしまう」
「羽根様の酒は、おいしかったな。兄貴……」
「ああ。そうだな」
二人の話を聞く山丸は、怒りのボルテージがさらに上がった。
(こいつら酒の味を覚えても、金の管理はガキ同然だ……たわけ者)
山丸は、ひきった顔で睨みながら二人に言った。
「……家賃の支払いも今日だということも忘れるぐらい昨日は、芸子と遊ぶ金があって、今は金が無いだと。馬鹿な奴だ…………今まで、お前達のみすぼらしい姿で最低額の家賃にしているのさ! お前ら兄弟に金が無くても、この辺に以外と土産物や目利きの品物が有るかもしれないな」
彼等の部屋に質の良い物があるかもしれないと思い山丸は、二輪兄弟の家に向かい歩き出す。
二輪兄弟も、山丸の後を追って歩いていた。
「山丸さん。俺の所には、高価な物は無いですよ」
「兄貴。山丸さんが気のすむようにしようじゃないか。探してもウチには高価な物は無いのだから」
山丸は、後ろにいた二人をチラッと見て思った。
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今月は、大丈夫だと思っていたのに……羽根様から屋敷に呼ばれてから、楽しすぎて金の支払いする事を忘れるとは失態だった。
山丸は、二輪の家の戸を開けようとした時に忠平は言いだした。
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